コラム.14
「粒あん」は7ヶ月のチワワ。
名前のとおり小粒ではじけるように元気なわんちゃんです。
飼い主さんは大の犬好きで、犬のテレビ番組は見逃さないそうです。
「フリスビードッグのドキュメンタリー番組を見たんです。
感激して泣いちゃいました。かたやうちのコはのほほーんとしてて…」。
なるほど、テレビや本の中にはスーパードッグがいっぱいですからねえ。
確かに、さっそうと仕事をしたり、飼い主と何かに打ち込んでいる犬たちは
とても「いい顔」をしています。
もともと、いろんな仕事用に人が改良を重ねてきた生き物ですから、
彼らはその性質にあった仕事をすることに喜びを感じることができるのです。
でも、みんながオリンピックに出られないように、犬もたいていはフツーの犬です。
そのフツーの粒あんは、コンテストで金メダルを
飼い主にプレゼントすることは期待薄でしょう。
けれど、粒あんはどんな特技をもった犬にも代えられないほど大切な存在なのです。
お留守番をし、帰りを喜んで迎え、会話をして休みには一緒にお出かけし、
ときにはおちゃめな芸で喜ばせてくれます。
犬と暮らすワケは人それぞれでしょうが、
多くの人は喜びや楽しみを分かち合うためだろうと私は考えますが…。
では、なぜ犬にしつけをするのか?
これは犬に特技を教えるためではないのです。
犬が人間社会の中で、不安なく安心して飼い主と暮らすためなんです。
トレーニングというと、犬に一方的に教えるような印象がありますが
飼い主が犬を理解し、犬から学ぶことで、
犬から理解されるすべを身につけることでもあるのです。
粒あんをきちんと育て世話をすることで、
粒あんとの毎日が楽しい笑顔の日々であれば、
それが粒あんから飼い主さんへのかけがえのない虹色メダルの贈り物なのです。
そして、お母さんと粒ちゃんのストーリーを作っていくんですよ。
まだ、始まったばかりの犬との生活は、これから15年以上も続くんですから!
犬にトリック(芸)を教えたり犬とゲームをしたりするのは、エネルギー発散の手段やコミュニケーションのひとつにすぎません。犬と飼い主の関係作りは犬と人が互いに理解しあうことから始まります。