コラム.02
私は家庭犬インストラクターである前に、一頭の犬の飼い主でもあります。
オポという名のオスのラブラドル・リトリバー犬と一緒に生活しています。
「ワン?」。はいはい地獄耳だね。今日は君が主役だよ、オポ。
オポの「お客さん、いらっしゃい!」の大歓迎に来る人は圧倒されるようです。
何しろ30キロの巨体。宅配のお兄ちゃんも最初はそのサイズにびっくりして、
硬直して立ち尽くしていました。
先日の来客中のことです。
オポには「ちょっと待ってね」といって離れたのですが、
電話で私が席を立つと彼はすかさず骨ガムをくわえてお客の顔に押し付けています。
犬好きの彼女もとまどった顔。
「オポがこのガムで…私の顔をゴンゴンとたたこうと…するんですけど…」。
真実をお話しましょう。
オポはガムという道具を用いて、彼女への友好的な働きかけをしたのです。
要するに「僕と遊ぼ!」と。
犬のコミュニケーションは吠えたり、
うなったりする声やボディランゲージを使うものを中心に、
とても多様で細かいシグナルを持ちます。においや視線なども信号です。
また、オポの骨ガムのように、経験から習得した他者への働きかけも使われています。
コミュニケーションは話の通じる相手がいて成立します。
『犬語』を話す犬たちはヒト社会で暮らしながら
「話が通じないなぁ…」と、こぼしているかもしれません。
あなたの犬はどうですか?
都市環境に住むと、よく犬の無駄吠えが問題になります。
でも、平常心が保たれ、安心している犬は狂ったように鳴き続けはしません。
そういう犬は何かしら身体や心の問題を抱えているのです。
「無駄吠え犬」とレッテルを張らず、彼ら犬の言葉を聞いてみましょう。
ところで、犬の気持ちを翻訳するおもちゃが発売されていますね。
でも、子どもの気持ちを知るために機械を使う親はいませんよね。
一万年も前から人と暮らしている犬たちはどう思っているのかな。