先月末に犬語セミナーを開催いたしました。
犬語セミナーとは、犬の動画を見て犬のコミュニケーションを学ぶセミナーです。
動画として使用しているのは、ほとんどが預かりやクラスのときに撮影したものです。
グループトレッキング後に開催している対面の練習クラスで撮影した動画は特に人気があるようで、参加した生徒さんたちは食い入るように見られていました。
犬の動画を見て学べることは、まず犬のコミュニケーションの仕組みです。
犬のコミュニケーションはシグナルという規則正しい信号によってなりたっています。
尾を立てる、横に振る、巻くとか、
耳を立てる、下げる、倒すとか、
横に動く、かがむ、前進するとか、
吠える、唸る、牙をあてるなどもです。
ひとつひとつのシグナルを動画を見ながら読み取ります。
そのシグナルは一度に複数出されることもあるし、犬の状態に応じて時間とともに変化していきます。
そうなるとシグナルの数も多くなり動きも複雑さを増していきます。
犬が一貫して変わらない姿勢を貫けば、シグナルは非常にわかりやすいのですが、
犬の気持ちや方向性があっちへいったりこっちへいったりと不安定になると、行動も複雑化していきます。
犬の気持ちに寄り添うように犬のコミュニケーションを読み解く作業はとても楽しいもので、犬の気持ちがわかったと思うときには笑いが出たり、ため息が出たり、飼い主さんも一喜一憂します。
犬と犬が関わる動画が中心になりますので、個々の犬の持つ社会性(社会的なコミュニケーションの力)についても知ることになります。
その犬の個性となることもありますし、成長とともに変化していく行動もあります。
例えば犬と犬の対面練習の動画を一年前のものと見比べてみると、犬の行動が大きく変化していることがあります。
犬が成長とともに社会性を変化させたことを知ることもできるのです。
同時に、犬の社会性やコミュニケーション力に飼い主としてどのような影響を与えているのかを考える機会を持つことになります。
犬と犬のコミュニケーションを見るときに、それがすべて「犬の個性」だとすることはできません。
犬の社会性は犬の年齢とともに変化することは当然のことですが、同時に犬の環境によって大きな影響を受けています。
何より最も影響を与えているのは、犬に日々接している飼い主です。
犬と犬の関係性なのに、なぜ飼い主が影響をしているのかがわからないという方もいらっしゃるかもしれません。
犬の社会性の基礎は、飼い主との社会的関係だからです。
犬と飼い主の社会的関係とは、犬と飼い主はひとつの群れ(家族)として暮らしていることで関係性を持っているということです。
これは犬の動物としての習性ですが、種が違う動物であっても同じテリトリーを守りつつ生活している同居動物を犬は群れと見なします。
この協力関係を結べることが犬の素晴らしいところでもあり、やや面倒なところでもあるのです。
犬語セミナーは最終的には「では、自分が犬に与えている影響とは何か。」について考えるためのセミナーです。
グッドボーイハートの生徒さんたちは根強く学ぶ方々なので、この難しい質問について真摯に向き合い全力で取り組まれています。
あくまでも、自分を苦しめるためではなく、自分と犬が楽しく暮らすためにです。
犬を抱きしめたり撫でたりすることは、犬との暮らしの上で表面的な喜びでしかありません。
本当に喜びとなるのは、共感の世界に入ることではないでしょうか。
共感を抱くには、他者の存在を認識し、他者が必要とするものを感知しなくてはならない。
フランス・ドゥ・ヴァール著書「道徳性の起源」より