梅雨明けの感じのお天気が続いています。
復旧作業を進めつつ、あの日のことをご報告します。
7月10日、豪雨の日のこと
7月9日夜は梅雨らしい雨と雷が続きましたが、9日の時点で避難警報もなく今晩は荒れそうだなと感じられるくらいでした。
10日の朝方まで同じように強い雷でしたが七山では頭上で雷が響くのには慣れています。もっとひどい雷もあったはずです。
雨が強くなったのは明け方の4時前くらいだったでしょうか。
6時前になると雷も止み起きていくとダンナくんがリビングに座っていました。
いつもと違うダンナくんの行動に、何かあったとすぐに気づきテラス側をみると、大輪だった紫陽花がテラスの中央付近まで来ています。
裏の土砂が崩れたのだとすぐにわかりましたが、日が明けて外に出たあとでその惨状を知ることになります。
室内は停電しており復旧を待ちましたが時間がかかりそうだったため、犬たちを広場に連れていき活動していたところへ、普段は会うことのない裏側の地域の方が歩いて上がってきました。
ダンナくんが出てきて話を聴くと「ここから下に降りる道路が封鎖されている」と。
早速ダンナくんがオポハウスから下ることのできる7本くらいのすべての道路を確認に行きましたが、すべて木々や電柱が倒れて封鎖されており、八方ふさがりで孤立した状態となります。
役所や九州電力に連絡を入れて環境が整備されるのをひたすら待ち続けました。
電気が来ない、ポンプが使えないから水がない、災害用の備蓄の水は期限が切れて入れ替えようと思い廃棄したばかりで、状況は最悪です。
「発電機を買っておけばよかった」という嘆くダンナくん。
夕方なって、唐津市内にお住まいの生徒さんがバイクで水をもってきてくれるという連絡を受け一筋の光が見えました。水はダンナが通行できない道まで行って受け渡し的に受け取ってきました。
しかし、その30分後に生徒さんがバイクでうちまで上がって来られたのです。
このときは感動しました。道がひとつ開通したことを教えて下さり、早速荷物をまとめて博多に全員で移動しました。
下山のときに九電工さんのフォークリフトと大型トラックの軍団が何台も連なってすごい勢いで上がっていくのとすれ違いました。
使命感に燃えた勢いというのが感じられて、あとでダンナと「かっこよかったね。」と話したくらいです。
おかげ様で停電は3日目夜には解消しました。
土砂災害の直後
土砂崩れによる被害について
裏の水の道になっているところ、以前から危険な感じがして昨年からつつじを植え続けており、紫陽花もたくさん植えようと苗木を育てているところでしたが間に合いませんでした。
土砂の被害は七山全土にわたっており、みなさんが使われていた観音の滝につながる大きな道も何か所も土砂崩れが起きています。私が七山に来るようになって16年になりますが、この間にはなかった災害ですので今回の雨は十数年に一度のことだったのでしょう。
土砂崩れはうちだけでなくこの集落の家の裏はほとんど土砂にやられてしまい、みな撤去作業に追われています。
オポハウスの裏で崩れた土砂はゆっくりと滑り落ちるようにキッチン裏とテラスへとなだれ込みました。
テラスの半分くらいまで土砂は来ていました。
家は押しつぶされることはなく持ちこたえましたがダメージの状態はまだ確認できていません。
たくさんのお手伝いの力を得て、テラス側の土砂はほとんど撤収できました。
ですがこのままだと新たに控える土砂がまた落ちてくる可能性があるため、余談は許しません。ある程度この作業を続けながら最終的には重機を入れることになると思います。
お知り合いの業者さんもいらっしゃないのと、あちこちで家屋の倒壊もあり業者の方々の手配もままなりません。
わたしたちはしばらくこの状態をキープしながらヘルプを待つことにしました。
災害で起きている自分の変化
早く土砂を撤去しなければという気持ちで、七山にいるときは犬たちのお世話の合間の休憩タイムはすべて土砂撤去に回しています。
休めばいいのにと言われるのですが、気持ちが休まらないから休めないのです。
休むくらいなら1回でも2回でも土砂を運び出したいという気持ちの方が強いのです。
水が気になって夜中に起きて作業を始めたこともあります。
相当のアドレナリンが放出されているようで、疲れないので日々の仕事はいつもより進みます。
繰り返しの土砂をもって立ったり座ったりの作業で、太ももに筋肉がつき自然な筋トレ時間になっています。
犬たちは変わらずいつも通りに日常を過ごしています。
被災したあの日もどちらかというと泥水の方を好んで飲んでいるようでした。
飲み水がないという私たち人間を横目に「いつもより美味しい水がある」と泥水を飲む犬を見て、いかにヒトが自然から遠くなったのかを痛感します。
分蜂して増えたミツバチたちも普段と変わらぬ日常を送っています。
山の水が降りてきて湿原風になってきたオポ広場にはアメンボやゲンゴロウを発見して驚愕しました。
いつ、どこからやってきたのか。
ここに湿原ができたって誰が伝えたのか。
むしろ彼らの方に、これからここはどうなっていくのかを尋ねてみたい気がしました。
犬たちならここが「やばいところ」になってしまったら、滞在するのを嫌がる何かのシグナルを発すると信じることにしました。
自然とつながるセンサーを失ったヒトに大切なことを教えてくれる動物や昆虫たち。
昨晩はテラスにカブトムシが飛んできたのを発見しました。
カブトムシは尾歩山でもめったに見ることはありません。
山の変化に対して行動を起こす動物たちの動きを追うのが楽しい日々です。
グッドボーイハートに支えて下さるすべての皆さんへ
豪雨の翌日からたくさんの連絡や励ましのお言葉をいただきました。
作業のためにとジュースやお茶の差し入れをいっぱい頂いています。
土砂撤去作業の応援に駆けつけてくださり、労力のいる作業を黙々とお手伝いいただいた皆様のお力添えを得ることができました。
数人でもそろうと力は何倍にもなります。
皆さんのお力で思った以上に土砂撤去が進み、日常が戻りつつあります。
前向きに取り組んでいるとはいえ七山に学校を構えて以来、最もひどい災害を受けたわけです。へこまないわけはありません。
ただ後退や逃げるという選択肢が全くなく、復旧かつ前進という考えと行動にしかいきつかないというだけです。
私たちが生活できる場所は博多にもあります。
ビジネスだけのことを考えたら、福岡や唐津で家庭訪問のトレーニングクラスだけをしている方が圧倒的に利益はでます。
入ってきたお金のほとんどは七山のオポハウスやこの周辺の整備のために費やしてきました。
それでもここにこだわる理由は、この山のふもとの家でみなさんや犬たちと一緒に学び、癒されるという時間が何をおいても一番大切だからです。
災害ばかりでなく老朽化も受けて労力や経済力を問われるたびに、まだここを離れるわけにはいかないという答えしかかえって来ません。
みなさんが駆けつけて下さったその力がまた新たな道を開かせてくれる予感が当たったようです。
本日、重機を使わせてくださるボランティアの方とのつながりを得られました。
早速、役所の方といっしょに現場に来てくださってお話を聴きました。
役所の方には土砂災害を受けたことをすぐに報告したのですが、ここで災害が起きていることを把握はしていたが数回この集落を回ったけれどこの家を見つけることができなかったということでした。
こちらとしては、待ちの状態だったのですがタイミングもあったのかもしれません。
重機を使用できるボランティアメンバーさんたちは、今日の夕方に福岡空港に到着されたそうです。
少しずつ進みつつありますので、また報告します。
今後のこと
そんなこんなでお迎えするはずだった子山羊のお迎えが少し後になりました。
月末までにはお迎えに行く気持ちがいっぱいですが、子山羊のスペースを確保するまではヤギ部も待機です。
自然は恐ろしく怖いというよりも自然は力がすごいのだと感じた今回のこと。
無力さを味わいながら小さな存在であるわたしは謙虚であることを繰り返し学ぶ必要がありそうです。
その莫大な力を持つ自然の中で学ぶことはリスクはあるがそれ以上の価値のあることだと信じます。
ヒト、犬、そして日本ミツバチや山羊たちも。
学びの仲間は増えていきます。