動物は常に身を守る行動をとる習性があります。
犬も犬独自の方法で自分の身を守っています。
この「身を守る方法」を忘れてしまったため、もしくは思い出せなくなってしまったためパニックを起こす犬がたくさんいます。
パニック行動にはワンワンと興奮して吠え続ける行為や走り回る行為があります。
来客のときやその合図となるインターホンの音に反応して興奮してしまうのも犬のパニック行動のひとつです。
パニック行動は目の前の問題を解決する行動ではなく、ただ脳が混乱を生じて興奮した行動をするだけになります。
他にも吠えながらくるくると回るとか、連続してジャンプするといったものもあります。
ひどくなると周囲にあるものに噛みつくか突撃していくといった攻撃的な行動に発展することもあります。
パニック行動は問題を全く解決せずにその動物を消耗させて、時には危険な状態に陥らせたり事故を起こしたり、脳内の病気に発展してしまうこともあります。
ではどのようにすればいいのかなのですが、多くのケースで犬がパニック行動を起こす周囲の状態は、実際にはパニックになる必要のないことばかりなのです。
先にあげた来客もそうです。
宅配便が来たからといって、お客さんが家に来たからといってそれが何なのでしょうか?
人にとっては日常的な社会生活の一部でしかありません。
散歩中に他の犬とすれ違うとか、人に話しかけられることでどうしてそんなに騒がなければいけないのでしょうか?
説明していくとすごく長くなってしまいますが、簡単にいいます。
犬は本来なら危険なことから身を守るたくさんの術をもっているうえに、安心できる事柄には社会化という過程を通して順応していく力を持っているという事実がベースなのです。
ところがこの「ベース」は生まれたときから身についているわけではないのです。
犬の習性としては持っているものの、それがうまく引き出されないと犬は自分の身を守ることができません。
できなくなった大変多くの理由が、飼い主が犬を守り続けたから、逆に飼い主が犬を危険にさらし続けたからということです。
危険にさらすなど自分は絶対にしていないと思われるかもしれませんが、抱き上げて拘束すること自体は犬にとっては危険な状態におかれるということなのです。
他にも赤ちゃんとして接し成長の機会を得られなかったことなどもまた、犬を危険にさらす行為につながっています。
実は犬が吠えたり騒いだりする走り回ったりして手に負えなくなるパニック行動をつくってしまったのは、犬の様々な成長過程での経験なのです。
成長過程の経験とは、繁殖の過程、子犬期の生活環境と育て方、その後の成長過程と育て方などを含みます。
いつも思うのですが、この犬が子犬のころからもっと別の環境で全く違う育てられ方をしていたらこうなっただろうかということです。
犬の飼い主なら一度は考えてみて欲しいことですが、この犬が他の人と暮らしていたら今と同じような行動をするようになっただろうと考えればどうでしょうか。
そう考えると飼い主として犬を育てるということの難しさとやりがいは計り知れないものだとわかります。
そのやりがいの中に、犬の習性を理解してそれを引き出すのが飼い主としての役割でありやりがいだと感じていただければと思うのです。
犬の本来の習性をうまく引き出してあげ、その犬がより犬らしく生きていく機会を提供できるのはまた飼い主でしかないのです。
そうすることで犬が安心して暮らしていける、つまり犬が幸せになるのですからこんなに楽しいことはありません。