あなたの犬は「欲求」が「要求」になっていませんか?
お気に入りのラジオ番組「テレフォン人生相談」をこの日も車で聴いていました。内容は子育てに関するものだったと思いますがあまりはっきりと覚えていません。
ただ頭の中に入ってきたこの言葉。
未熟な動物は欲求が要求に代わってしまう…
同じような内容のことを言われたので犬に直結しました。
犬の「欲求」が「要求」になる具体的なパターン
犬には人とベースは同じ欲求というのがあります。
心理学者マズローの有名な欲求のピラミッドの絵図からいうと
人ではトップにくる自己実現以下は同じです。
※自己実現については野生のイヌ科の動物は到達していますがペットの犬については環境が伴っていないと感じます。
犬の基本的な欲求の中で特に犬が人に依存しているものは「食欲」です。
生きるために必要な「食べ物」を完全に人に依存しています。
食べ物を人が与えるという行為で犬と人の基本的な関係性が始まっていますからここはとても大切なところです。
犬の側からすると、食べ物を人に依存しているからこそ人との服従関係も作りやすい反面、中途半端な状態では家畜化(人が飼う動物)にとどまってしまうこともあります。
そうなりたくはない、人と犬は友達なのだ、人と犬は家族なのだ、少なくとも犬は家畜ではなくペットなのだと願うからこそ犬に自由を与えると同時に教育も与え、人の社会の中で社会生活が送れるようにと頑張るのではないでしょうか。
ところがこの頑張りがバランスを崩してしまい犬は人に完全依存という状態となり、未熟性を残したまま体だけが大人になってしまうことがあります。
こうなると犬は未熟な(幼稚な)動物として人から食べ物をもらい続けます。
そしてこのようになるのです。
お腹が空いた→
食べ物を食べたい「食欲という欲求」→
食べ物をよこせ「要求」
要求はエスカレートしていきます。
このゴハンやだ。
ゴハンの途中で攻撃。
ゴハン飽きたオヤツがいい。
こんなゴハン食えるか。
などなど…。
まるで未熟な若者が引きこもって自室に食事を運んで来させるようなそんな状態になっていきます。
犬の行動にみる「食欲」が「餌をよこせ=要求」に変わるとき
犬のごはん前の行動に注目すると、ごはんに対する「欲求」が「要求」に変わっているかどうかがわかります。
食事前の犬の行動として「鼻を鳴らす」という行動があります。
鼻を鳴らす=くーん、きゅんきゅん、くんくん
こんな感じの音です。
この鼻ならしは社会的なコミュニケーションのシグナルで、ゴハン以外にも自分が不安定であることを周囲に伝える行動として見られます。
あまり大きな音ではないので離れていると聞こえないこともあります。
本当に周囲にいる動物たちに聞こえる程度の音で抑制の入った音です。
これとはもっと強い音があります。
吠える = キャンキャン、ギャンギャン、ワンワン、わおーん、キュンキュン
こうなると鼻ならしとは言えません。
鼻ならしから吠えるに変わる音で、声を向ける対象もはっきりとしているため鼻先をそちらに向けて音を出します。
興奮が上がって来ているため、立ち上がりが見られます。
前脚を何かにかけたり、例えばサークルやケイジやクレートの戸口にかけたりします。
立ち上がりから飛びつきになります。ジャンプする、飛び上がる、後ろ脚で立ち上がる。
テンションが上がって来て要求が高まっていくのが分かります。
「欲求」を表現する行動と「要求」を表現する行動・その行く先の違い
この食べ物に関する「欲求」と「要求」の違いがこの先どのように変わってくるのか想像してみましょう。
「欲求」は満たされなければ収まっていきます。
正しくは収めていくといったらいいのでしょうか。
自分に当てはめてみます。
お腹が空いた→でも今食べることができない→少しガマンする→お腹空いてた気持ちが落ち着いてくる
それで結局食べられる状態になったら再び食欲は上がるのですが、今は食べることができないと受け取ることで体はいったんリセットするようです。
つまりは自分で欲求をコントロールして収めたということになります。
ではすでに「欲求」が「要求」に変わってしまったらどうでしょうか。
「要求」というのは何かの見返り、つまりは交渉の道具であったり脅しへとつながります。
次第というよりは即効でつながっていきます。
だからでしょうが子犬に食べ物を与える立場の親犬は、当然のことながら子犬の要求には応じません。
要求は無視か却下かしっぺ返しを食らうかのどれかです。
ところがこれが人となると要求はすぐに通ることを学習してしまいます。
キャンキャンと子犬がなくと「お腹空いたのね~」と飼い主が餌を持ってきます。
ワンワンと飛び上がってなくと「可哀そうにすぐにゴハンあげるよ~」といって食べ物を与えます。
犬は毎日同じものを同じ時間にもらっていたとしても、必ずゴハンの前に吠える、鼻を強くならす行為を繰り返します。
必要以上に与えてはいない、規則正しく与えている、だから犬が自分に食べ物のを要求したりなどするはずがないと飼い主は思っているでしょう。
「要求」ではなく「おねだり」といったらしているかもしれないと思うでしょうか。
言葉のちょっとした違いですが同じことです。
要求は犬の未熟性の現れです。
成熟した犬であれば、どんなにお腹が空いていても声や音を出して食べ物をねだるということはありません。
食事をもらう場所にいって伏せたり待ったりして飼い主が食事を与え忘れないようにとメッセージを送るくらいです。
しかしこれは要求には当たりません。
犬が未熟でいることは動物を怖がる人にとってメリットが高いように思えますがそうではありません。
未熟性は攻撃性や興奮性を高めます。
噛みついたりパニックを起こしたり騒いだりする犬になって扱いにくくなるだけなのです。
同時に犬の立場にたってみれば、落ち着いた日々が遠のき自尊心も生まれません。
あなたの犬が尊厳を持って生きていけるようにサポートしたいのであれば、犬の自律を支援しましょう。
それが犬の社会化トレーニングです。