博多駅の近くの公園の横に横断歩道があります。
公園から出てきた様子の雑種のわんちゃんと男性の飼い主さんが
横断歩道に差しかかるところでした。
飼い主さんはなぜか両手にいくつかのものをかかえていて、
犬のリードは地面についたままで引きずっている状態でした。
そのまま公園から出てきたのか、荷物を持ち帰るときにリードを
地面に落としてしまったのか、直前の状態はわかりませんでした。
ただ、瞬間的に「危なくないかな?」と思って注目してしまいました。
老犬風の犬でかなりゆっくりと歩いていたので、少し余裕をもって見守りました。
ちょうどその時、横断歩道の直前まで車が走ってきました。
飼い主さんは犬のリードを足で踏みました。
リードを踏まれた犬はビックリして振り返り、まん丸の目で飼い主を見ています。
そのとき、飼い主さんが「マテ」と大きな声を出しました。
それをまた、まん丸の目でじっと見ていました。
その様子を見ながら「えっと、そうよね。言いたいことわかるよ。」
と老犬の立場になって考えてしまいました。
犬の動きからすると、犬はまさにそのときに止まろうとしていました。
なのに、リードを急に踏まれて後ろから押されたような感じになってしまい
ビックリして振り向いたら「マテ」と号令をする飼い主が立っています。
こういうわかりにくいパターンってよくあるよね、と納得もしてみます。
考えを思いめぐらせながら通り過ぎた後、用事を終わって引き返してくると
その犬と飼い主さんとすれ違う感じになりました。
犬は少し離れていた私の方にまっすぐに近づいてきて、ズボンの匂いを少し嗅ぎ
まっすぐに例のまんまるの目で私を見上げてじっとしています。
犬のしたいようにさせてながらも不思議そうな飼い主さんに
「犬の匂いがついていたからかな。」と私。
「犬を飼っているんですか?」
「いえ、犬の仕事をしているもんですから。」
「ああ、だから寄って行ったんですね。」
といわれました。
年齢を尋ねると15歳とのことでした。
なんだかいろいろあったのよ、といいたげでしたが
「この犬は子供達に人気があって…」と飼い主さん節が始まると
それをさえぎるかのように、向きを変えてまた自分のペースで歩き出しました。
15歳ともなると犬も精神的に達観している感じがしてしまいます。
子犬の頃はこちらが育てているつもりでも、
いつの間にか育てられる方に変わっているような気もします。
なんだか素敵なホッとする出会いでした。