子犬の家庭訪問のときに、初回のカウンセリングで説明する必要があるトレーニングが、トイレトレーニングについてです。そして、子犬のトイレの失敗について、ほとんどの方が「まだ犬が小さいから、トイレを失敗するのは当たり前」という誤解をされています。
人間の赤ちゃんのころにはオムツをしているし、オムツを外せるようになっても排泄の失敗はしばらく続くので、子犬のトイレも同じように思われているのかもしれません。子犬を母犬から離して人が飼うようになる年齢は、生後7週齢~8週齢が一般的です。子犬のこの年齢は、もう幼稚園生に入るくらいの年齢になっており、人でいうとオムツはとうに外れている年齢にあたります。
子犬がひとりで排泄行動ができるようになるのは、生後21日目からです。生後3週齢という早い時期なのはあまり知られていません。生後21日になると、子犬たちは巣穴から出てきます。この巣穴から出てくるときと、排泄を巣穴の外でするようになるときが同じなのです。巣穴から出て排泄をするようになった子犬は、巣穴を汚したりしません。外環境でこのまま成長する犬は、成長と共に排泄をする場所を変化させていきますが、そもそもトイレトレーニングとも、トイレの失敗とも無縁ということです。日本の一昔前の犬たちはみな外飼いでしたから、トイレトレーニングなどなかったということですね。
「トイレの失敗」という環境を作っているのは、犬を室内に閉じ込めたことでおきてしまうのです。犬は室内空間で排泄をする場所を失い、がまんできずにいたるところで排泄をするようになってしまいます。子犬だからトイレの失敗をするのではなく、必要な環境が整えられていないことで排泄の失敗をしてしまいます。
戸建てで庭のある環境でも、子犬の排泄場所として庭を提供できていない場合があります。ワクチン接種が完璧でないから外には出せないと思われていますが、そんなことはありません。ご自宅の庭には他の犬も入ってきません。子犬の時期から庭で排泄できるようになり安定している犬の方がストレスが少なくなり、免疫力にも影響を与えます。
集合住宅で庭がない場合にも、環境を整えてあげるとトイレの失敗をすることはありません。環境の中には人に対する社会化や、新しい家庭に移動するまでにどのように過ごしていたのかということも含まれます。せっかく子犬が生後21日で排泄行動を自律してできるようになっているにも関わらず、子犬が育った場所がその行動を可能にするものでなければ、家に連れてきた子犬はすぐに排泄の失敗をしてしまうでしょう。
とにかく、トイレの失敗は子犬の問題ではなく、環境の問題であることがわかれば、トイレトレーニングはほめたり叱ったりすることではないことも、わかっていただけると思います。
排泄の場所を室内に限定させたいという飼い主さんも増えています。外に出ないと排泄をしてくれないのは困るとか、預けたときに室内でしてくれたら助かるとか、その理由は犬側の都合ではなく、人側の都合によるもののようです。
室内で排泄をしたがらない犬と、室内でも排泄をする犬の気質は異なります。室内飼育される場合に、室内で排泄したがらない犬の方が性質が安定してきます。性質とは犬の性格のことです。性格は、遺伝的要素や、後天的に得られた経験や環境の影響などがあり、一概にひとつのことだけをとりあげて限定することはできません。それでも、犬の排泄行動が犬のテリトリーを決める行動であることなど、犬の機能性のしくみを知っていただくと、排泄行動と、日常行動の安定の関連性について理解していただけると思います。。
といっても、排泄を街中でされると臭いがきつい、家の周辺でされるのは迷惑だというご近所の言い分も十分にわかります。都市環境では、犬の生活密度が上がっていますので、こうしたペット公害に対しては、犬を飼っている側が気配りをして対応をすべき問題です。排尿のあとは水を流すことなどは当然のマナーであると思います。
犬の排泄行動が、犬にとってできる限りナチュラルな犬の習性にそったものとなるよう、飼い主さんとしてぜひ協力してあげてください。
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熊本被災ペット支援ネットワーク
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