グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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お散歩デビュー:散歩を始める前に必要なことをしよう

子犬が生後3ヶ月を迎えるころに散歩の練習を開始します。散歩行動を簡単に述べると「リードをつけて家の周りを飼い主といっしょに歩く行動」です。
散歩という生活習慣が始まることで、犬は一気に新しい環境へと足を踏み出すことになります。

散歩に出る前にやらなければいけないことがいくつかあります。

まずは自分の自宅周辺の環境をよく把握しておきましょう。子犬が最初にテリトリーを出て移動する練習をするときにはできるだけ静かで、人や犬が多すぎず、適当は広さがあり、車通りとははなれている場所が必要です。
福岡市内の住宅地になると、なかなか適切な場所がないのが現状です。
近くに公園はあるけど、夏場は来る人や犬が集中してしまう。
家のすぐ前が車通りでそこを歩かないと静かな場所へはいけない。
家のすぐ前にすごく吠える犬がいる。
自宅内の環境を整備することはできても、自宅周辺とはいえ環境整備をすることのできない環境については、どのように克服することができるのか、トレーニングの中では大変難しい問題です。

犬や環境によって必要な対応は個体差によって異なります。ここではあくまで一例として紹介します。
自宅周辺の環境が騒音、人や犬の多さで難しい場合には、リードに十分なれるまでは静かな環境まで車で移動して練習を開始するということも可能です。これは一時的な対応です。

散歩というのはテリトリーをつくっていき、家の周辺をパトロールする行動です。
自宅から自分の足で歩いて出なければ散歩とはいえず、テリトリーができない状態で自宅の庭や室内で過ごすことになるため犬は不安定な状態になります。

室内飼育の犬は、散歩に出る前に十分に庭で過ごす時間をつくってください。
子犬を生後7週齢~8週齢で迎えた場合にもすぐに庭で過ごす時間をつくります。
ブログ記事「子犬と庭遊び」に紹介しました。

散歩に使うリードもいろいろな種類があります。環境に応じて練習の手順が変わってきますので、練習に必要な長さ犬につける首輪や胴輪についても犬の状態に応じて選びます。スクールやインストラクターからの指導内容でも、自分の犬に適した方法かどうかは不明です。マネは危険なので気をつけてくださいね。

犬がリラックスして散歩を楽しめているのは次のような状態です。
犬が周囲の環境を調べながらリードをゆるめた状態で、飼い主の歩く速度とあわせながら歩きます。
広場などではさらにリードを少し長めにした状態で散策することを楽しめるようになれば、散歩の時間は犬の生活にとってリラックスした楽しい時間となるでしょう。

成後1歳くらいまでは、散歩中にリードのひっぱりや立ち止まりがなくても環境適応できていないことがあります。
メッセージとしては、散歩から帰宅後や室内で急に走り回る、家具をかじる、カーペットをかじる、人へのとびつき、尾を追うなどの行動が現れます。
リードのひっぱりがなくてもこうした行動が出ているときにはすぐに専門家に相談してください。

散歩のときに犬がストレスを表現している行動は過去のブログ記事の中のお散歩中に出やすい問題となる行動として紹介しましたので参考にしてください。ブログ記事「お散歩チェック

子犬が散歩を始めてから最初の1ヶ月は犬の「社会化期」にあたり、犬が環境に適応する力をつけるための重要な時期です。
この時期の経験が成長後の犬に影響を与える重要さを考えすぎてしまい、犬にたくさんの経験を積ませようと、たくさんの人や犬に会わせたり、いろんな場所に連れていくことは、社会性の発達に対して逆効果です。また、犬に苦手な経験や嫌な経験をさせたくないという気持ちから引きこもりがちにならないように注意する必要もあります。

散歩は外への刺激に対する反応だけではありません。
散歩はテリトリーを作っていく行動となり、成長するとテリトリーを調べる行動へと変化していきます。この変化には3年くらいかかります。犬が成犬となる、人でいうと成人を迎えるのは3歳前後だからです。

この間の散歩は、飼い主という群れの先輩と行く社会経験ということです。飼い主と犬の関係が犬の行動に影響を与える理由はここにあります。飼い主が犬を尊重できない接し方をすると犬と飼い主の関係性は群れ関係にはなりません。犬の社会的な生活にも影響を与えます。

犬に厳しくして欲しいと伝えているわけではありません。
犬を尊重して接していただければいいのです。

散歩に出始める生後3ヶ月の子犬は幼稚園生くらいです。
自分の意志ももちはじめ、克服する力も、冒険する力もあります。
子犬の社会体験は見ていると楽しいものですね。でもあっという間に過ぎてしまいます。
しばらくは忙しい生活をストップして、子犬育てに没頭してください。

専門家の話しを聴いたことがない方は、子犬の時期のプライベートの勉強はぜひおすすめします。
生徒さんから「子犬のために準備したものの中で、一番やってよかったと思ったのが子犬のしつけだった」という話しをききました。子犬のしつけというのは、飼い主の勉強のことです。
学びは知識の詰め込み出なく、見方考え方を広げること。
子犬の散歩体験からも犬の行動がたくさん学べます。

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犬語セミナー<犬と犬の距離の縮め方>

今日は犬語セミナークラスを開催しました。
ビデオを見ながら、犬の行動を観察し、その行動から読み取ることができる犬の情報や成長を確認したり、考えたりするセミナー形式の講座です。

今回は犬と犬の初回対面から同じ組合せで3回目までを続けてみることで、犬の行動の変化や関係性の変化について勉強しました。

一頭の犬は生後6ヶ月で他の犬に対する緊張が高く、散歩中も興奮しやすい状態です。もう一頭の犬は8歳で他の犬に対して積極的ではありませんが、関心を示しながら安定性を求めるタイプの犬です。強く優位を示すことができないため、幼年期から青年期にあがる時期の不安定な犬にも脅威を与えることはありません。この2頭は性質的に共通点があることが対象を選んだ理由で、性別はオスとメスという組合せにしました。それにも理由はあります。

生後6ヶ月といっても、その成長の段階は固体差が大きいものです。ペット化やそれに伴う人為的な繁殖が進む中で、大型犬であっても「幼児性」を強く残してしまう傾向があり、犬の発達は時間のかかるものになっています。くわえて飼い主さんの接触により犬への世話が多すぎる傾向があると、飼い主への依存性が高まり他の犬への緊張度や恐怖行動が増加します。

この生後6ヶ月の犬が他の犬に関心を示す発達段階であり、他犬への攻撃行動が現れていない状態であれば、接触によって関心を安定に変えていく可能性は十分にあります。

今日題材にしたビデオの中で確認できたのは「犬と犬の距離の縮め方」です。

片方が社会的な経験値が低く、他者に対して消極的な態度しか見せるとができないけど社会的な関係に関心をもつ者であった場合で、もう一方も他者に対して消極的な態度で対応するが、グループでの安定性を求める姿勢を身に付けていたとします。

犬に関心のある犬は、他犬に対して距離を縮めようと行動しますが、相手がそれに対して何かの反応を見せると距離をとろうとします。相手が一定の距離から近づいてこなければ、消極的な成犬はそれ以上のコンタクトをとろうとはしません。
これに対し、関心のある犬は少しずつ距離を縮めていきます。緊張に伴うストッパーが少しずつ外れていきます。緊張の一線を越えると、次は相手に対して自分に関心を引くような行動が引き出されてきます。

こうした行動をみていると、犬が何か目的をもって「こうやったら相手がこうなるだろう」などとと予測して行動しているかのように見えますが、実際にはそれほどの策を講じた行動ではありません。非常の単純な社会的行動という枠組みの中で、群化行動と安定という基盤の上で引き出されている行動です。

ビデオをみていただけないためここで伝えるのは大変難しいですが、犬と犬の距離の縮め方にはいろんな形があり、特に社会的に緊張を伴いやすい犬は非常に時間をかけることがわかります。

逆に犬と犬の距離感を急いで縮めようとする状況や環境は、多くの犬には不利に働きます。犬同士が出会ってすぐに走り回り行動を始めたり、追いかけっこと見られるような追まわし行動は、犬同志が距離を十分に取れないことから発しています。

人の価値観からすると「犬と犬は出会ったらすぐにお友達」と誤解してしまうかもしれません。ですが、犬は大変社会性の高い動物であることを思い出してください。その社会性や社会的なシステムを維持している機能性は、人に近いものがあります。

走り回り行動をせずとも社会的な関係性がつくられていることを、犬語セミナーを通して学ぶ日となりました。
「犬が走っている=喜んでいる」「犬が動いている=楽しい」という思い込みを一度すてて客観的に犬をみると、また犬の新しい世界が見えてきます。


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ネイチャーカンパニー

知人から懐かしいCDを貸りました。。クジラの鳴き声を収録した自然音です。
CDを聴いたとき「これ昔もっていたけどなあ」と懐かしく思い、またその声が私の元にもどってきてくれたような気がして、偶然の再会にうれしくなりました。
なくしてしまったそのCDを購入したのはもう30年も前の話です。

福岡市の中心街「天神」のオープン当時は珍しかった多目的商業ビルの中に、お気に入りのショップがありました。「Nature Company(ネイチャーカンパニー)」というショップで、名前のとおり自然にまつわるいろんなグッズを集めた夢のような店でした。本社はアメリカであったと思います。

商品には、自然の素材で作られたアクセサリー、動物や植物を描いたTシャツ、当時は珍しかった原石をもちいたいろんなもの、自然素材のものをベースにしたウインドチャイム、自然素材の楽器、自然素材でつくった雑貨、そして自然音を録音したCD、写真集、書籍など、どれも自然を連想させる、自然とのつながりを思い出させてくれる素敵なものばかりでした。

ネイチャーカンパニーにいると時間の過ぎるのを忘れてしまい、その空間に没頭したものです。当時の私はまだ20代、自由になるお金もわずかしかありません。あれもこれもは買えないため、触ったり見たりして時間がたつのも忘れ、自然を自分の近くに感じようとしていたのでしょう。それにしても、あのお店にいたときのワクワクした感じはなんだったのかと、今でも不思議です。

最近ある本を読んでいて、これかな?と感じたことがありました。
その本の著者によると「人間の発達は、人間の機能性の発達ではなく道具の発達である」ということ。そして、その道具が自然の素材で作られたものから、自然を分解して作られたものに変化したことから、人間そのものが変わったのだということです。大変興味深い内容で、今でもその本をくり返し読んでいます。

自然ものを丸ごと、自然の力を感じる道具として利用してきた人間ということろに関心を持ちます。ネイチャーカンパニーはそのような「自然そのもの」を選択して販売していた店だったのではないかと、記憶をたどりながら思いました。

店で購入したもので今手元に残っているのは、オオカミの遠吠えのCD、イルカのTシャツ、地球のシンギングボールのアクセサリーの3点です。わずかに手にいれたものが、惚れこんだオオカミとイルカのものであったのには動物への恋の歴史を感じます。

ネイチャーカンパニーは国内のすべての店舗が撤退をし、アメリカでも店舗が残っているのかどうかわかりません。アメリカにはこうしたネイチャーズショップが多くあるようですが、自然を失ってこそその重要さが身にしみてくるともいえます。

私たちの身近には、自然をまるごと使った道具もまだ残っています。日本の古き道具は、自然の力を感じられるものがたくさんあります。そんな道具を使うことも、自然とのつながりをつなぐきっかけにはなるのかもしれません。そして、そんな些細なことが、犬という動物を犬として見ることのできる力につながっているのではないかと思います。

ネイチャーカンパニー。
今はショップではなく、リアルな空間として日々ありがたく感じています。



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犬に避暑地は必要か?

この季節、標高500メートルのグッドボーイハート七山から福岡の博多に戻ってくると、その違いにいつも驚きます。

気温が違うのは当然のことながら、辛いのがは、風がないことです。山から吹き降ろす風を感じることができれば、この暑さも乗り切れそうな気がするのですが、湿度が高く風を通す空間ではなくなってしまった都市環境では、室内に閉じこもりがちになりますね。

犬が人よりも暑さに弱いことを、飼い主のみなさんは承知されていると思います。
小型犬は大型犬に比べると暑さには強い方ですが、人のように夏を乗り切るということはできません。気温だけでなく湿度の問題や、暑さに対応する体のつくりが異なるからです。

人は夏になると海や山といったアウトドアを楽しむために出かけることも多くなります。犬と一緒に出かけるときには、人とは違う配慮をしてあげてください。たとえば、犬の夏の海遊びは、早朝以外はおすすめしません。海での熱中症の事故も多いです。興奮する遊びは短時間で終了させるなどの配慮は必要ですね。

山に出かけたときも、短時間のアウトドアキャンプではせっかくの自然環境の中で犬は自然にふれることができません。都市での限られた空間の生活をアウトドアに持ち込んだだけの形となります。涼しい場所で過ごせるメリットはありますが、せっかくの自然にふれる機会をもう少しグレードアップして、避暑地でのんびりというふうに過ごせないかなと思うのです。

暑さで閉じ込められる環境にグッタリしたり、イライラする様子の犬を見ていると、犬にも避暑地は必要なのではないかと真剣に考えてしまいます。避暑地というと豪華で高額な印象を受けられるかもしれませんが、夏休みに帰生する田舎のおばあちゃん家というイメージではどうでしょうか。豪華な別荘地は隣接して立ち並んでいるため、そこでも犬同志が衝突してうまく過ごせないという問題も起きてしまいます。

田舎のおばあちゃん家は隣の家とも離れていて、空間もたくさんあって、なぜかそういう自然環境には時間もたくさんあります。映画の「トトロ」のような風景ですね。こうした日本の里山は、人が住まなくなってきていることから空き家も増えています。こんなところでも住んでみようかなという方がいれば、住む人を応援しながら犬の避暑地として使わせてもらうというのも一案ではないでしょうか。
これはただの空想かもしれませんが、里山も復活して犬たちにも避暑地が獲得できる、そして人と犬が自然環境のなかで新しい関係作りをはじめるきっかけとなる、単なる空想だとしても素敵ではありませんか。

そういえば今の自分の仕事も空想から始まりました。
子供のころ犬と遊ぶことが大好きではじまった「いつか犬の訓練士になりたい」という空想です。
今は犬の訓練士を経て、犬を理解するためのいろんなことを伝える新たな仕事へと発展しました。
空想の中にはなかったけど、現実はもっとワクワクする展開です。

犬の避暑地と里山で過ごす人と犬。
きっと実現しますように。

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風景の中の犬

今日は月下虫音に出演します。※ブログ記事「ラジオ番組に出演します」

犬のことをラジオを通して伝えることができる機会は、グッドボーイハートのクラス開催とは違う意味で貴重です。犬と暮らしていない人、犬があまり得意でない人に犬のことを聴いていただく機会になるからです。

月下虫音の中で大田こぞうさんはいろんな生き物の話しをします。その中には、見たこともない珍しい昆虫、動物、鳥などの話しもありますが、比較的興味がわくのは、今までに自分が見たり接したことのある生き物についてです。都会育ちなのであまり多くの生き物に接してこなかったのですが、それでもたまに田舎でみたメダカやカエルなど、生き物を見たり接した子供時代の記憶は強いものです。

犬という動物は特別な動物ではありません。現在成人しているくらいの年齢の方が子どものころには、家にいたとか、家にはいなくてもどこかで見かけることのあった動物です。犬はどこにでもいる、どこででも見ることのできる風景の中に存在してました。これは過去形ではなく、現在でも見ることのできるということろですが、その風景は若干変化してきたのです。

ここ数十年、都市環境で犬が飼われるようになってから、風景の中の犬が変化し始めてきました。マンションで飼育が許可されているサイズの犬は小型の純血種です。マルチーズ、チワワやミニチュアダックスといった犬種から始まり、トイプードル、フレンチブルドッグ、豆柴など、小型化された犬が都市環境でみる風景の中の犬に変わってきたのです。

みなさんの田舎でみかけた庭犬の雑種犬と、都市を歩いているトイプードルは同じ犬です。
人為的な繁殖と淘汰によって、そのサイズや形は大きく変化しました。

風景の中の動物が変化してきたのは、人が犬を飼う目的が変わってきたからです。それがどのように変わってきたのかが、人の環境による犬という動物への価値観を示しています。

ところが犬のほうは、雑種犬であれトイプードルであれ、犬としての行動の特性は大きく変わっているわけではありません。ただ、形は断尾により行動がわかりにくくなっているだけです。行動が変わったように思えるのは、犬という動物の変化ではなく環境によるものなのです。

今日はラジオを通して、大田さんとまた深く楽しい犬の話しができることを楽しみにしています。みなさんぜひ76.1を聴いてください。


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小さなワンコのお山デビュー

梅雨があけた三連休。プライベートトレッキングクラスに参加した小さなワンコは、犬生初のお山体験です。

犬がはじめて自然の中で行動するのを見るのは、飼い主さんにとってはドキドキする体験でしょう。先生である私にとっても同じです。都市環境で自然とはほど遠い環境で生活している犬が、全くことなる環境でいつとは違う状況を提供されるのです。トレッキングクラスは犬のある一面を知る時間になります。

今回お山デビューとなった小さな犬は、事情があって保護され現在のご家族と共に新しい生活をはじめ、飼い主さんと関係作りをすすめているところです。人為的に繁殖された小型犬種で、同じ犬種によくある飼い主さんに頼りがちな傾向があります。クラスの前に、飼い主さんにルールを説明すると共に、トレッキングクラス中の犬の行動予測についてはなしました。

新しいことを体験させるときは、「犬はどのような行動をすると思いますか?」という質問をします。動物の行動を予測することは、起きるかもしれないことに対して心やものの準備を促すために必要です。そして、飼い主が犬のことをどのように見ているのかを、飼い主自身が考える機会になります。

「うーん。どうだろう。あまり自分から離れないような気もするし…。」飼い主さんの答えの中には、不安と期待が混在しています。でもこれでいいのです。不安も期待もどちらも大切なのです。不安は抑制の要素として働き、期待は促進の行為として働いてくれます。

トレッキングに参加した小さな犬は、クンクンと草の臭いを入念にかぎながら右に左にと歩きます。そのうち草を食べ始め、地面になにか臭いのするものをみつけると寝転がって臭いをすりつける行動をみせました。こうした行動にも犬の性格が現れます。
少し離れても飼い主を振り返り、声をかけると戻ってきます。室内や普段の散歩で見るときはお母さんにベッタリの様子なのに、今日はいつもとは違う表情や動きになります。普段は使わない脳の回路が働いていることがわかります。

自由に行動することは、犬にとってすぐにプラスに働くわけではありません。常に管理下にある動物は、自由になることにまずストレスを感じます。ストレス行動も少し見られました。こうしたストレス行動は、日常的にも生じています。その行動の一部が自由行動に移った際に出てくるのです。その行動にガッカリする必要はありません。行動は一度に全てが変わってしまうわけではありません。行動が増えたり減ったりする。特に環境を変えたときに、一時的にストレス行動が増えることはトレーニングではよく起きることです。

愛玩犬として繁殖された純血種の小さな犬にも、犬らしい行動がたくさんみられることがうれしく思います。犬が犬らしくできる時間と空間と、飼い主との関係が、少しの時間から始まって、ゆっくりと継続していくことができるようになれば、今までにない犬と人のつながりについて実感されると信じているからです。

クラスの終了後の飼い主さんの感想は「犬が思ったよりしっかりと歩いていた」
そして「自分がスッキリしました」。犬も同じ感覚だったでしょう。共感性が高まる時間をくり返し体験して新しい関係を築かれること、楽しんでください。

さくちゃん





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動物取扱責任者として<犬の習性を考慮する>

動物に関わる事業を行う団体は、第一種動物取扱業として登録が義務図けられています。
動物取扱業とは、様々な形で動物に関わることを業とする活動団体のことで、各企業や自営業者などが登録しています。各事業所ごとにその責任者であるものを動物取扱責任者といいます。なじみのない名称でしょうが、たとえばペットショップや動物病院、ドッグスクール、トリミングショップなどにもお店ごとに1名の動物取扱責任者がいるのです。

動物取扱業には登録をする必要のある団体もあります。非営利目的で活動をする動物に関する団体、たとえばボランティア団体などで、複数の犬や猫などの動物を一時預かりしている施設を所有する団体などは登録が必要です。

動物取扱業にはさまざまな責任が課されていますが、その中には環境省の定める「動物の愛護及び管理関する法律」を遵守しながら活動を行うとともに、飼い主に対しても同じくその理解と実践を求める指導を行うことも含まれています。

犬や猫などの動物と暮らしている方でも、この法律についてはあまり馴染みがないかもしれません。
動物に対する姿勢や接し方は、共に生きるものとして生活の中で自然と身に付いたものであり、動物に対する思いやりは誰もが持つことのできる気持ちだと思うのが自然なのかもしれません。

現実問題としては犬や猫などのペット化された動物は急増する中で、ブームとして簡単に飼われたり捨てられたりするなどの問題が表面化したことやペットに対する人の価値観の変化によって、以前は動物の管理に関する法律であったものを、動物の愛護という姿勢を加えることでその法律の内容が時代の流れと共に変化してきたということです。動物行政はこの法律がベースなので、動物と暮らす人には知っていただきたい法律です。詳しい内容は環境省のホームページで見ることができます。

その基本原則には以下のような文面があります。
「人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。 」

大変難しく深いテーマだと思います。
「人と動物の共生」という形がどのようなものであるのかは、地域や個人の価値観によって多様化しています。「人と動物の共生」については、今は考える段階でしかないと思います。そしてそれをだれもが考える権利を持っていることも事実です。

二つ目の「その習性を考慮して適正に取り扱う」については、実践することが可能です。この実践には「その動物の習性」を正しく理解する必要があります。習性とは、同じ種にみられる行動の特性のことです。

この習性は犬の飼育環境の変化に応じて変わりつつあります。そのため種のもつ行動特性が崩れてきたのではないかと感じることすらあります。種は長い歴史の中で、環境に応じてその行動の特性を変化させてきました。たとえば、文明化された社会に住む人と原野に住む先住民族では、その行動と能力には大きな違いがあります。わたしたちの身近な環境を例にあげると、都市環境に住む犬と、自然の里山で生きる犬とでは違いが出てくるのは当然のことです。

環境を変えると犬の行動にも変化がみられます。人が変化させた環境から影響を受けた犬の行動を、すべて犬の自然な習性とすることについては疑問を持ちます。

「犬の習性とは」「犬の習性を引き出す環境とは」について理解しそれを伝えることも、動物取扱業の大切な仕事のひとつであり、今後も真摯に取り組みたいと思います。


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※ブログをいつも読んでくださりありがとうございます。
今週から日曜日、月曜日をブログ休刊日にさせていただきます。
次回は火曜日更新です。

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<犬のこと>犬の狼爪

犬の爪の話しです。
犬の指は前が5本、後が4本です。まれに後に5本の指があります。
地面に直接つかない親指にあたる部分があり、これを狼爪(ろうそう)といいます。イヌ科動物には狼爪があります。

狼爪は他の爪に比べて伸びやすいため、やっかいに思われることもあるようです。
子犬のときに狼爪を指ごと切除してしまうことがあります。特に小型の愛玩犬種では多くの犬に行われています。飼い主の家に来たときからないので、飼い主が気づいていないこともあります。前脚の指が4本しかなかったら、子犬のときに切除されたものです。よくわかりませんが、ダッコしたときに爪をひっかけてしまうとか、室内で指を怪我するかもしれないという理由かもしれません。

成犬になってからも切除手術を行うこともあるようです。理由は「ひっかけることがあるし役に立たないから」というものです。

後肢の狼爪はあまり機能していません。これが出るのは特定の純犬種の中におきたり、雑種でもその純血種が入っているのではないかと思われる種類の犬であるため、遺伝的な問題で生じたようです。後肢の狼爪には骨がない場合が多く、ぶら下がっているようになっていてさわっても力が入りません。

では、すべての犬にある前肢の狼爪はどうでしょうか。動物の体の中には、役に立たないものがあるのかもしれません。役に立たないと聞いて、本当にそうだと思いますか?実際に使っているのを見たことがあるという方もいるのではないでしょうか。

狼爪は犬にとって必要な指と爪なのです。
どのような時に使われているかというと、斜面を歩くとき、ジャンプするとき、立ち上がるときに使用しています。斜面のようなところを歩く機会がある犬は、狼爪を切る必要はなく、使用によって削れていきます。生活環境の中に勾配のある場所があり、それらを下りたり登ったりすることがあれば、同じように消耗してくるので狼爪を切る必要はありません。

狼爪に限らず、犬が日常的に過ごしている場所が、犬という動物の習性に適した場所で、また習性にあった行動を行っている以上は、人による「つめきり」は必要ないのです。
爪は移動や行動によって削れたり折れたりします。狼爪は比較的のびやすいのですが、これも立ち上がりなどの動作のときの使用によって、一定部分が延びると折れるようになっています。

狼爪が伸びきってしまういわゆる巻爪になってしまうのは、狼爪を使えるような場所を歩く機会がないからです。アスファルトの道路や整備された公園などでは狼爪を使う機会がないため、爪が伸びすぎてしまいます。

犬の爪は土の中に入り込む鉤型をしています。スコップのような形ですね。そのためアスファルトのような硬い地面では爪が地面に入らないため、削れてまっすぐになります。
これは本来のイヌ科動物の爪の形ではありません。爪が地面に入らないとすべるようになり歩きにくくなってしまうからです。人工的な環境が犬に与えている影響のひとつです。

狼爪を使えるような場所を歩くことが犬の健康につながります。
パッドも鍛えられ、脚の筋肉もついてくるし背骨もしっかりとしてきます。
若い犬なら、つめきりをする前に「歩く」という行為について何か工夫をしてみることをおすすめします。

老犬になったら、できるだけ犬が自分の脚で歩く時間が続くことを願いますが、寝たきりになってしまったら爪の処理は必要になります。

狼爪を切除することは犬にとって不利益なことです。
犬が狼爪を使う機会を、ぜひ大切にしてあげてください。



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犬が暑さを乗り切るコツ

毎年この時期になると思うことが「今年の夏は暑くなるのだろうか」ということです。
一般的に犬は暑さが得意でないため、夏に体調を崩すことも多く、暑さ予報にに敏感になってしまうのです。

一般的な犬というと、超小型の犬を外したほぼ全ての犬が暑さは得意ではありません。
大型犬や西洋の北部で繁殖されていたような純血種はもちろんのこと、日本の純血種である秋田犬や柴犬なども毛の量が大変多く、本州より南のこれらの犬にとっては夏は辛い季節です。
小型犬は暑さに強いように思われていますが、そのようなことはありません。トイプードル、チワワ、ミニチュアダックス、キャバリアなど、小型の純血種はたくさんいますが、どの犬も暑さには弱いです。
毛質の問題だけでなく、汗腺がほとんどないことがその理由です。

超小型のチワワになると暑い日も活動するため暑さへの反応は少ないようにみえますが、これらの犬たちも暑さは得意でないと思われることがあります。これは後で説明します。

犬が体温調節のためにすることは、ハアハアと口から蒸気を吐き出すことです。これが人が出す大量の汗に相当します。そのために水を余分に飲む必要があります。この作業は心臓のポンプを使いますので体力を消耗します。

涼しい場所で体を冷すということもします。外飼いの犬たちは家の軒下に穴を掘ってその中に体をうずめます。土が冷たく体温を下げてくれます。いくつもの穴を準備して、日替わりでその穴にはいっている犬もいます。コンクリートで穴が掘れないときも、床下は大変涼しいので、床下にもぐっていく犬もいます。それでも、周囲の環境の悪化は外飼いの犬たちにとって厳しいものへと変化しているようです。

子供のころに扇風機で過ごせた博多の夏が、エアコンがないと過ごせないようになりました。地球規模の変動もあるのでしょうが、都市環境が進みアスファルトの土地にたくさんのエアコンの室外機からの暖気によって都市環境の夏は酷暑になりました。それは中心地から進んでいますが、確実に外飼いをされている犬たちの地域にも影響を与えています。

水のあるところに伏せてしまう犬もいます。一旦は体が冷えて気持ちがいいのでしょうが、ハリのない毛質(飾り毛)の犬の場合にはすぐに毛が乾かず、人でいう濡れた洋服をきた状態になってしまうため、立ち上がったときにタオルなどで腹部を拭いてあげてください。

室内飼いの場合にはエアコンで乗り切られることでしょう。犬はエアコンはあまり得意ではありません。エアコンに当たると体がだるく感じられないでしょうか?エアコンの入っている室内では長袖を着る方が多いのも同じ理由からです。地肌が寒さを感知すると、少しでも熱を外に出したいという動物の体の機能に反するため、熱が体内に閉じ込められてしまい体がだるくなるのです。一定時間エアコンをいれても、外の気温が低い時間には窓をあけて風をとおしたり、エアコンを使わなくてもいいような場所に一定時間を過ごすなどと工夫をしてみてください。

山間部や田舎に住む友達がいたら、夏の数日でも掃除などを手伝いながらそこで過ごさせてもらうとか、週末ごとに通うとか、それでも犬の体調には良い影響を与えてくれると思います。これはある意味犬の別荘のようなものですが、贅沢という意味ではなく健康のためには必要なことではないかと真剣に思っています。

ハアハアと体温を下げる行為ですが、実はこの行為があまり出ない犬もいます。暑いのが得意なのではなくて、体力がないため行動が起きないのです。そのため秋頃になると体調と崩してしまいます。中にはハアハアいわないから大丈夫と散歩出てしまい、散歩中に熱中症で卒倒したという例を聞きました。こうした行動はわかりにいくく、なかなか気づいてあげることができないのですが、全体の表情や状態を日頃から細かく観察していれば、普通ではないその変化には気づきやすくなります。

熱中症につながるのは犬を興奮させることです。海や川での興奮遊びも涼しいからといって油断できません。興奮しやすい犬は短い時間だけ、休憩を十分にとって過ごしてください。人と同じように犬も夏の事故は多いので、怖がると何もできないと不安になるかもしれませんが、ゆっくりと時間を使うことがポイントです。
犬たちとよいひと夏を、夏はもうすぐそこですね。

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回想「オポのこと:人との関わり」

犬のパートナーだったオポが亡くなって、今日で7ヶ月たちました。
今でもお参りに来てくださる方います。そんなオポを知る方々を思い出話しをするたびに、オポがいろんな人や犬と関わりを持ちながら生きてきたことや、その中でオポから教えられたことも同時に思い出していきます。

グッドボーイハートの一員として、家庭訪問のトレーニングに付き添って手伝いをしてくれたり、デイケアクラスの先生をしたり、お散歩会のリーダーをしたり、みんなでキャンプにいったときのお世話など、その仕事は大変なもので、オポに頼りすぎてしまったことを今でも飼い主として深く反省しています。

オポのことを本当に心に留めてくださった人は、イベントような人や犬がたくさん集まる会の中のオポよりも、オポと一対一でお付き合いしてくださった方々なのだという事を実感しています。グッドボーイハートでは全体のリーダーとしてはたらくため、オポを表面的に見られた場合には「厳しい、こわい、迫力がある」といわれることもありました。ところが実際のオポは、お茶目でゆるやかで寛大なゆったりした犬です。(飼い主の惚れた欲目もありますね。)

特徴的であったことは、人であれ犬であれ、一対一できちんと向き合うことのできる犬であったことです。それは人からオヤツをもらえることとは異なる関係の作り方です。生徒さんとして迎えた人と犬には積極的にあいさつをし、要求はせず、よく観察し、相手が自分にコミュニケーションを求めたときは必要であれば応じるという態度でした。ですが、相手が自分を試すようなことをしたり、からかうようなことや上の空でいるような態度のときには、コミュニケーションに応じないという行動をみせることもありました。特に七山に移ってオポに行動の自由が獲得されてからは、その選択はハッキリしたものでした。

とはいえ、クラス終了後にして私が忙しくしているときに、話しかけられそうな生徒さんに自らコンタクトをとって誘導し、指定の場所に連れていくということもやっていました。「先生、オポさんがきゅうりのストックのところへ案内するんですけど…」と困惑されて飼い主の私が呼ばれることなどは、七山校では日常の風景だったように思えます。

オポにはグッドボーイハートのモデル犬にはなってほしくありませんでした。オポをアイドルにしたいとも思わなかった。オポがグッドボーイハートの活動の中で行うことに対しては、飼い主の私のしている仕事を知りできることをしているのだと感じ、パートナーとしてリスペクトし、有難く受け取っていたものです。その中でオポ自身は一頭の犬としてひとりひとりと関係を作っていたのだと知り、それはオポが選択したことであり、彼の生きる道の中での必然の出会いだったのだと思っています。

一方で犬たちは、オポの墓参りをしたりオポを思い出すこともありません。それでもオポがグッドボーイハートで出会ったどの犬とも、やはり一対一で向き合うことこそ大切なことなのだとういことを教えてくれました。そのことが互いに心がふれあうという体験であって、その体験は思い出すことがなくてもそれぞれの命の中にエネルギーを与えてくれたものだと信じています。

たくさんの心に足跡を残したオポ。

その力強い生き方に敬意を表し、後に続きたいと思います。

オポのお墓20160710


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