グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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おすすめの本:『神なるオオカミ』モンゴルの遊牧民とオオカミ

 今回のおすすめの本『神なるオオカミ』は上下2巻からなる超大作です。場所はモンゴル地区、時代は毛沢東主席が先導する文化革命時です。モンゴル平野に遊牧民が移動しながらテントをはって生活している中に、知的青年として送り込まれる著者の自伝的な小説です。

 著者はこの小説が実体験に基づいたものであることをやんわりと否定していますが、確かにこのモンゴルでオオカミと出会い、そのオオカミとの体験を記したかったという思いが強く伝わってきます。

 本書をお薦めしたい理由は、モンゴル遊牧民と野生動物であるオオカミとの深い関係性が、実生活の細かい描写によって表現されている歴史書としても読み応えのある本だということです。その細かい描写の中には、読む人によっては受け入れられないと思うものも含まれています。動物との関係をやさしいもの、和やかなもの、楽しいものだけと考えている方にはこの書籍は受け入れ難いかもしれません。反対にペットを飼っていない人や動物を感情をある程度抑えて見ることのできる人にとっては読み応えのある本です。

 モンゴル遊牧民はオオカミトーテムを崇め、死後は人の遺体を山に捨てることでオオカミ葬を通して天に昇れるという思想と習慣を持っています。その一方で生きているオオカミたちとはお互いに命を張って戦い会いながら、ここまで必要なのかと思わせるほどの攻撃もしかけていきます。そしてオオカミを飼うことを拒みながら、犬という動物をテントでは飼っているのです。その過程の中にも動物愛護の精神からは考えられないようなことが表現されています。しかしそれらを単純にかわいそうと否定するのではなく、なぜそうする必要があったのか、そのことで続いていくことは何か、人と動物の関係性はどうだったのかを自分に問いつづける機会にすることができます。

 物語の後半部分はモンゴルという地区がいかにして砂漠へ変わっていったのかという、かなりきつい状態に触れています。新しい価値観の押し寄せる波に流されるように移動を迫られる遊牧民たちとモンゴルの山から消えていくオオカミの姿はまさに歴史のひとつの時間でした。歴史の真実というのは訴える力が強いものだと感じます。

 この本はすでに絶版になっており中古品しかありませんが、地域の図書館に設置してある可能性の高い本です。実は通りすがりで立ち寄った本屋さんのめったに立ち寄らない文芸のコーナーになぜか引き寄せられてこの本を購入したのは、本が出版されたばかりのときでした。引き寄せられるように立ち止まって手にしたこの「神なるオオカミ」は、出会うべきして出会った本の一冊であると確信しています。

 今は少し抵抗があっても、いつかそのうち真実を知りたいと思われたときにぜひ手にしていただきたい本です。

神なるオオカミ上神なるオオカミ下


 

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<犬のしつけ方・動画>犬にリードをつける時のしつけ:オスワリかマテで落ち着かせることの大切さ

 飼い主が犬にリードをつけるときに犬の行動もつける側の飼い主の行動も百人百様のようです。
実はこうした作業にも、犬と人の関係を見ることができます。そして、そのひとつひとつの行動を見直すことは、「犬のしつけ」もしくは「犬のトレーニング」のひとつです。


●犬にリードをつけるときの行動を観察するとわかること

 まず犬にリードをつけるときの行動をよく観察してみます。自分の犬はどんな状態でいるでしょうか。

 じっと立っている(呼吸もゆっくり)、呼ぶとゆっくり飼い主に近づきオスワリする、呼ぶとゆっくりと飼い主に近づき立ったままリードをつけることができる。このような状態であれば、犬は飼い主がリードをつけるという行動に対して落ち着いているといえます。

 逆に、興奮して落ち着かない行動をする犬もいます。興奮してジャンプをくり返す、左右にも飛ぶ、飼い主にとびつく、飼い主に前脚をかける、飼い主が首輪をつかむと(リードをつけるため)甘咬みする、飼い主が首輪をつかむと前脚をかけてくる、うろうろしておちつかない、飼い主の膝にジャンプしてくる、飼い主に抱っこされるなどが落ち着かない行動の例です。


●リードをつけるときに興奮するのがなぜいけないのか

 まずどのような状況であれ犬の興奮行動については慎重に扱ってほしいことです。犬が飛んだり跳ねたり走り回ったりする興奮行動は、見ている人によっては楽しいと感じられることがあります。人よりも動きが早く躍動力も動物的であることが人を楽しませる理由にもなっているからです。反面、過度な興奮は犬のストレス値が上昇しているというシグナル(コミュニケーション)でもあるので、それを受け取って犬が落ち着くように環境を整える必要があります。そしてその落ち着かせのための環境整備は飼い主の責任です。

 犬がリードをつけるときに興奮したり多動になる理由はいくつかあります。ひとつは犬が「リード→散歩」という連想学習をすることです。つまり、犬はリードを見せると散歩に行くことを知り興奮するということです。この犬の興奮を「うちの犬は散歩が好き」と思っている人もいます。本当にそうでしょうか。
 事実については犬の散歩行動を細かく分析すればわかります。リードを見せると興奮する犬は、社会的に緊張状態にあり散歩を連想して興奮しているか、日常的な拘束時間が長すぎるため外に出る社会的行動に興奮しているなど他にもいろいろと興奮行動の理由を考えることができます。


●リードをつけるときに犬が甘咬みしたり腹部を見せるのも問題なのか

 リードをつけるときには首輪に一定時間手を触れる必要があります。首輪に手を触れていることで短い時間であれ犬は動きがとれなくなります。犬が首輪をつけることに対して協力的であれば、犬の方が少しの時間じっとしてくれています。ところが、飼い主がリードをつけるという行為に対する抵抗や、一定時間飼い主が自分の首輪をもって動きを止めることにストレスを感じる犬は、その手を払いのけようとして甘咬みします。甘咬みといっても軽くくわえたり、咬むまねのようなものから、結構強く歯をあててくる犬もいます。こうした犬の甘咬み行動を飼い主は「遊ぼうとしている」といって放置してしまいますが、これはとても危険なことです。こうした行動のひとつひとつが飼い主と犬の関係性をあらわしているからです。飼い主に甘咬みをする犬は、それが抵抗であれ甘えであれ、いつかは衝動的に牙を当てる可能性が十分にあるからです。

 リードをつけるときに犬が腹部を見せたりひっくりかえったりしてジタンダを踏む行動もひとつの興奮行動です。こうした犬のほとんどは、甘咬みをする犬達と同じように飼い主が犬の首輪を少しの時間持ち犬が静止をしているということができません。また、飼い主の膝にのってきたり、飼い主の股下に入り込んだり、体を摺り寄せたりする犬達は、飼い主に依存的な関係を要求しています。こうした関係性は動物にとってストレス値を上げる結果となるため、数年という長い時間を経て自分を攻撃するもしくは他者を攻撃するという攻撃行動や強いおびえ行動につながる可能性も十分にあります。


●落ち着かない行動を叱っても効果はない
※動画で確認する「リードをつけるときは犬も人も落ち着くということ」

 犬が落ち着きをなくして興奮していたり、依存的な行動をしているときに叱っても効果はありません。犬にリードをつけるという行為が必要なら、それについて犬が落ち着きを取り戻せるように練習していきます。そのステップには個体差があり、飼い主さんのできるところからというになりますが、食べ物があったらオスワリするという賄賂的なフードの利用はしないでください。日常生活が問題なく送れている犬ならどの犬も食べ物をちらつかせなくても座ることはできます。
 
 以下の動画は七山校に来ていた柴犬くんに協力してもらって撮影しました。
マテの合図をしなくても動かないのですが、わかりやすいようにあえて「オスワリ」と「マテ」の号令をつけています。
舌なめずりをしていますので落ち着かせ行動が働いています。飼い主さんが近くでビデオを構えていて何かいつもと違う感じは受け取っていたようです。

犬にリードをつけるという平凡なことですが、ご自分の日常と違いがあるのか以下の動画で確認してください。

動画「リードをつけるとき」


 犬のしつけは犬と人の関係性の構築が基本です。それにはごほうびと罰が自然と伴うこともありますが、フードを使ったごほうびトレーニングには落とし穴があります。食べ物は動物にとって強い強化の道具(行動を学習させやすい道具)です。使い方を間違えると、犬のおびえや攻撃性を高める事もありますのでぜひ注意してください。


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犬のためのカラス対策:カラスに向けた「カラス進入禁止」の紙は本当に効果があるのか?

都市圏ではカラスの数がずい分増えていますね。カアカアとなく声と大きく黒い体を福岡市内でもよくみかけます。
カラスは雑食性で小動物も捕食してしまうことがあります。小型犬に限らず犬にとっては怖いとか不快な存在になることがあります。

●犬のためのカラス対策を考える必要

犬のためのカラス対策とは、犬の過ごす庭やベランダにカラスが近づいてこないようにする対策を考え処置をするということです。冒頭に書いたとおり、カラスは犬を捕食してしまう可能性が十分あります。ネズミやヘビを持ったまま飛んでいるカラスの姿はなんども見かけました。子猫などが持ち去られているのをみたことがある人もいるかもしれません。最近では極小サイズといわれる3キロ未満の犬が増えています。こうした犬は簡単にカラスに持っていかれてしまいます。

カラスであれトンビであれ、大きな鳥が獲物をとるシーンを見たことがある人ならその速さにビックリすることでしょう。鳥の移動する速度は犬の歩く速度ですらミミズのようにしか感じられないほどの違いがあるのです。山歩き中に何かと間違えたのかトンビかタカのようなものが足元に突撃してきたことがありました。白い帽子をかぶっていたことで勘違いさせたようですが、その速さとV字で上がっていく素早さにビックリしてしばらく動くことができなかったくらいです。カラスが来るのことを事前に把握することはできません。ならばカラスが近づいて来ないように、環境を整えておくことが最善にできることです。

●カラス対策に効果があるものとは

庭やベランダを犬にとって安心できる場所とするために、カラスを近づけさせないようにする方法を考えてみます。カラス対策については多くの方が悩みを抱えているようです。ネットでもたくさんの情報提供があると同時に、あまり効果がなかったという感想もたくさんありました。畑ではよくカラスの人形を逆さにつるしてあるものを見かけます。最初は本物だと思ってビックリしたのですが、本当によくできた偽者のカラスが農業用に販売されているようです。ホームセンターでも販売していることがあります。逆さにつるすというところがポイントのようですが、確かに視力に頼る哺乳類であるカラスも警戒して近づけなくなるという一定の効果があるのでしょう。

ところがやっかいなことにカラスには学習能力があります。次第にその吊り下げられたカラスは偽者であることを学習してしまいます。一旦学習すると他のカラスも学習したカラスの行動に影響を受け、その後は効果がなくなってしまいます。他にもCDなどをつるすという対策もあります。キラキラと反射する光がカラスを警戒させるという仕組みです。しかしこれも同じようにいつかカラスが学習してしまい、防衛効果の期間切れが来てしまいます。

●以外だけど納得するカラス対策の方法

 先日、カラス対策に悩んでいるときにある生徒さんから面白い話を聞きました。その方は海洋学者の佐藤克文先生の文献を読む機会がありそこからカラス対策に佐藤先生が関わったというお話しを見つけられたそうです。佐藤克文先生はテレビなどにも出演する著名な学者なのでご存知の方も多いかもしれません。

 その佐藤先生が他の環境医学の専門からアドバイスを受けて実施したカラス対策というのは「カラス侵入禁止」という紙を貼り付けてみるということでした。本当に?と思えるこの方法ですが、実は動物の習性を見事に理解した方法で愉快なのでこちらに紹介させていただきます。

 佐藤先生がカラス対策の被害の相談を受けたのは岩手県大槌町にある東京大学の研究施設でした。東日本震災によって3階建ての建物の最上階まで侵食してしまい、窓や扉もなくなった建物をカラスが巣作りに利用しはじめたということです。津波によって周囲の住宅も全滅してしまい、巣作り場所として集中したのかもしれません。巣作りのために建物の部材をはがすなどの被害も出てきてしまったということで佐藤先生に相談があったとのことです。

 佐藤先生はカラスの専門家である宇都宮大学の「雑草と里山の化学教育センター」の竹田研究員(環境医学)に相談をもちかけたところ、「警告文を出してみてはどうか」というアドバイスをもらったということです。佐藤先生も最初は冗談だろうと思ったが試しに警告文をつるしてみたそうです。警告文のつるし紙には「カラス侵入禁止」と書いてあります。するとすぐにカラスは来なくなり、一時的かと思ったが効果が長続きしたとのすごい話でした。

 「カラス侵入禁止」の紙にカラスが応じたのはなぜでしょうか。実はこの用紙をとおりかかる施設職員や学生が不思議におもってみあげることで人が空を見る回数が増え、それに対してカラスが警戒して近づいて来なくなったというのです。


●野生動物とのせめぎあいと人の役割

 この用紙を見上げる人たちも最初は見上げるがそのうち見上げなくなってしまうはずです。カラスの被害の多い春時期に限定して張り紙をつるすことで「空を見上げる人たち」という本当にカラスを防御する刺激を作り出すことに効果をあげています。カラスの作り物もCDの反射の光も、カラスという動物の習性を考えた行動ではありますが、やはり最も効果があるのは、人が管理しているという姿だということにとても感銘を受けました。

 一般のご自宅でもこの張り紙は一定の効果を表すでしょうが、たくさんの人に見てもらう必要があるので住宅地では抵抗があるかもしれません。自宅の方向に顔を向けてほしくないという気持ちもあるし、犬への刺激にならないかという不安もありますね。とりあえずこの空を見る人を増やすという戦略で何か他のことを考えてもいいのかもしれません。

 全く別のことでしたがカラスの対策になったというひとつの例もこの人の効果ではないかと思えるものがありました。それはテラノザウルスの人形を庭に置くというものです。実物大なので8メートルくらいあります。パチンコ店の入り口などに置いてあるもので本当に人目を引きますね。庭においてあるとテラノザウルスの上部分が見えています。カラスはそのうちになれるでしょうが、通りすぎる人はテラノザウルスを見ることでしょう。近隣の騒ぎになるかもしれない危険性を覗けばこれはこれで効果があるやり方です。

 ところが人通りのない里山では通り過ぎる人もないため掲示物は効果がありません。人がウロウロとして空を見上げる機会を自分で作っていくしかありません。カラス対策に時間のかかる人も、ベランダや庭ではしょっちゅう空をみあげて警戒信号をおくって下さい。小さな犬の場合には特に大事に至るまえによろしくお願いします。


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犬語セミナーで学ぶ犬の世界:保護犬たちの抱える問題と社会背景

週末に七山校で犬語セミナーを開催しました。
今回は保護犬の成長過程のビデオを見ました。
毎回学びの多い時間ですが、保護施設からの譲渡犬については社会的な問題でもあり、一般飼い主さんにもこの問題をいっしょに考えていただく機会として貴重なセミナーになりました。

●犬語セミナーで学べること
 犬語セミナーは犬の動画を見ながらディスカッションを中止に進めるセミナーです。犬の動画にはいろいろな状況のものの中から、比較的分かりやすいものを選んでいます。犬と犬が過ごしてるビデオや犬と人が過ごしてるビデオはよく題材として取り上げています。

 ビデオの動画を見ながら犬の行動を観察するという作業を参加者に行ってもらいます。観察の仕方や記録の取り方についてはいっしょに学びながら進めますので、回数の多い方ほど観察力がついてきているようです。観察を事実に近づけていく際にはできるだけ「感情を伴わず」にみる力が必要です。犬の専門家にも求められる力ですが、感情的な目線では犬の行動を正しくよみとることができません。感情をいれてみてしまうと、見えるはずのものが見えなくなってしまうからです。人の情報処理能力というのはとても不思議なもので、自分にとって受け入れのできる情報しか受け取れないという情報収集の限界があるのでしょう。ビデオを見て犬の行動を知るなんて簡単と思われるこの作業が、犬語セミナーの中で最初の難関です。

 その後、その観察内容を行動別に分析していきます。行動学では行動を犬の状態の種類に応じて分別します。分別という作業は、どのような仕事にも取り入れられています。みなさんも仕事中になんらかの形で分別をしているでしょう。パソコンのフォルダもこのひとつです。情報を種類別に分別していますね。分別は内容を整理して分かりやすくするための最初の手順なのです。
 動物行動学には共通の行動の分別がありますが、全く勉強をしたことがなければこれらの分別はわかりにくいものになるかもしれません。たとえば、まちがった分別は「よろこんでいる」「遊んでいる」「わたしのことが好き」などです。これらは分別とはいいません。特に感情的な評価はまずゼロにして考えていきます。これも行動学になじみのない方にはつまらないと思われるかもしれません。このことが犬を理解することにつながっていくのです。行動の理解は犬の状態と性質の理解へとつながります。


●保護犬にかかわる問題について
 今回ビデオで使用許可を得た生徒さんの犬は今年保護施設から保護された保護犬くんです。生後6ヶ月ころに飼い主として譲渡を受けたあとすぐにレッスンクラスに入られています。保護犬に限らず、生後6ヶ月までの成長期に犬がどのような環境で飼育(生活)していたのかは、犬の性格形成、行動形成に大きく影響しています。三つ子の魂百までは犬の世界でも同じなのです。
 どのような保護施設であれ施設という形式ととる限り、犬達は一定数を収容という方法で管理されています。家庭での飼育状態とはちがいます。保護施設に限らず、訓練所や訓練施設などでも同じように多数の犬を収容管理しています。行政では保管という言葉を使います。あまり好ましい言葉ではないですが、施設の目的をきちんと伝えるためにはこの言葉が一番分かりやすいでしょう。

 収容管理施設での時間は動物にストレスを与えることはいうまでもありません。施設管理者はできるかぎりこのストレスが軽減されるようにそれぞれの努力をしています。ただ保護施設の場合には、その施設の建物があまりにも地域によって偏りがという現状があります。多額の資金を集めて立派な保護施設を管理運営しているところもあれば、狭い敷地の中で犬舎ももたずに集めたケイジやクレートをつかって多数の動物を収容している施設もあります。施設のハード的なつくりと管理方法は犬のストレスに直結していて、子犬たちは当然周囲の成犬たちのストレスの状態に影響を受けて成長していきます。

 同じ問題は行政の施設だけでなく、保護ボランティアにも発展しています。多数の犬猫を保護しているボランティアの家庭や団体では、もはや家庭犬のレベルを超えて犬を収容状態で飼育しているケースはみなさんの周囲にも見られることでしょう。保護犬の状態は悪化しなかなか譲渡に結び付けられなくなったり、おびえの強い犬を一般家庭に譲渡すれば、生涯にわたってその犬がおびえのつよいストレス状態で過ごさなければならなくなる問題も生じてしまいます。こうした難しい行動への対応や回復にふさわしい環境を整えるのは専門家でも難しいことがあります。知識や経験はもちろんのこと時間や空間が必要なため、忙しいという理由が最も実行できない理由になってしまうからです。


●保護施設などの犬を管理する施設を評価すること

 保護施設など資金のかかるハード面を作り上げていくためには、多くの方の理解と協力が必要です。しかし、現に今ある保護施設や収容管理状態の団体でも、犬のストレスレベルが高いと感じられる施設は存在しています。ひとりひとりが正しく見る目を持って、きちんと評価をできることによって犬にとって安心で犬の成長にも機能的な施設が残ったり、また新しく建設されることにもなるでしょう。
 そのために、保護犬を評価すると同時に、保護施設そのものを細かく評価する必要があります。評価というと上から目線的だと感じられるかもしれませんが、これはそうした意味ではありません。評価というのは自らが正しくその状態について把握するという意味での評価であって、悪か良ではないのです。評価を通して改善すべき点も見えてきます。
 だれでもできる簡単な評価基準がふたつだけあげられますので参考にしてください。以下の2点です。

1 臭い
2 騒音(動物の声)

保護施設や犬を保護されている場所でこれらの二つについて違和感を覚えたら、犬のストレスレベルは高いというお知らせです。臭いにおいは犬のストレスレベルを表現するという理由と、犬の声は同じように犬のストレスレベルを表現しているからです。犬は吠える動物だと思われていますが、きちんと整備されて管理されている施設では犬の鳴き声は一切聞こえません。それは犬を抑制させているからではなく犬達が安心して過ごしているからです。犬をただかわいいといって通り過ぎず、犬が適切に保護され管理されているかどうかを知ってそこに支援の目や手を向けてください。


 そしてまたこの二つの評価はご家庭でも同じことです。庭が臭い、部屋の中が臭い、犬が吠えている、という状態であれば、犬は同じように高いストレス状態にあります。簡単なことですが見過ごしがちなことです。犬が気づいてほしいことをまず気づき実践すること、それが犬を尊重したい自分にできる最善のことではないかと思っています。






dav

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山歩きに見る犬の行動:行動観察から得られる犬の性質と特徴について

お山のクラス「わんげるミーティング」を開催しました。5月も末だというのに、湿度も低く風通しもよく絶好のコンディションのゆったりの一日となりました。


●山歩きにみる犬の歩行の特徴

 山を歩いている姿を見るとその犬についていろんなことがわかります。まず体のことです。体の小さな犬たちは自分のできる器量にあわせて歩く場所を決めていかければいけません。飼い主が踏みあげる高さの段差も、犬にとっては飛びあがりが難しいことがあります。飼い主便りにならず、端の方の自分の歩ける場所を見つけていくことを最初はあまりできないことが多いです。しかし回数を重ねていくと犬も学び始めます。自分にとってよりよい環境を見つけようとすると、飼い主の歩く方向には進みますがより自分の歩きやすい位置を決めていきます。
 バランス感覚の育っていない犬は飛びあがりが多くなります。一定の場所に立っていることができないからです。山はどの地点をとっても坂です。坂といってもアスファルトのような坂ではなく、4つの脚を置く場所の高さが全て違います。左右が横並びならないこともあります。そうしたところで歩いては止まり歩いては止まりができる犬は慎重でバランスをとることを重要としていることがわかります。反対にジャンプして上ったり下りたり、走ったり(走るのもジャンプです)、左右にウロウロとしたりするのはバランスをとることが苦手だからです。不安定な場所にいることで犬は体にストレスを感じます。それを落ち着かせることができる自律タイプの犬と、興奮してしまう自律が不安定な犬では行動の安定感がまるで違います。

●歩く位置に見る犬の特徴

 犬は飼い主の前を歩きたがる場合には、いつも飼い主から見てもらい管理されていることが日常になっている場合です。散歩でも家でも、飼い主はいつも犬を見ています。飼い主よりも後ろを歩かせようとすると抵抗をすることがあります。飼い主が自分を見ていないと落ち着かなくなるからです。こうした犬ほど飼い主よりも後ろを歩かせるように練習する必要があります。歩く位置はその関係性の現われです。不安定な犬は飼い主の後ろ、つまり飼い主に従って歩くということです。この位置関係を受け入れさせるだけで、犬は飼い主に服従しているという関係を作ることになります。多くの小型犬はこの飼い主との服従関係をつくっていくのが得意ではないようです。すぐに飼い主の膝の上に乗ってきたり居場所を主張したり、ときには鼻をならして赤ちゃん行動をしたりする犬が多いですね。赤ちゃんは社会での役割を与えられないので、服従関係は結べません。犬の中でいう服従関係とは役割分担という意味です。言い換えれば飼い主と対等に社会に属しているということが前提の関係性です。


dav

●未熟な犬の行動の危険性について

 それでも楽しそうに走っていくからいいじゃないかと思われる方もいるかもしれません。実際にそうしていらっしゃる方もいるでしょう。これは事故につながります。未熟な犬は何か事が起きたときに衝動的に走り出してたり吠えたり、パニックを起こしたりしてしまうからです。ガサガサという音がしたらそちらに走り出してしまうかもしれません。
 また、未熟な犬は環境を把握することが得意ではありません。周囲の全体を捉え前進すべきか立ち止まるべきか引き返すべきかを判断する前に、目の前の茂みにヘビがいることに気づくのか鼻先をつっこんで怪我をしてしまうことの方が多いからです。
 ということは未熟な犬は世界が小さくなるということです。何も変わることのない柵の中に入れられて遊んでいるように見えながらただ興奮している犬達の姿を見ると、犬は人間から提供されたもの以外を楽しむ自由はもうないのだろうかと感じることもあります。
 環境を把握して行動ができるという自律性は動物の精神を安定させるベースのようなものです。実際に自分に当てはめて考えてみても、環境を把握しこれから起きることを予測できることが自分にとっての最大の安全確保になっています。予測といっても将来のことを予測するような力はだれにもありません。それでも動物は一歩先のことを知りながら時間と空間を進んでいるのではないかと思うのです。その一歩を踏み出すべきか止まるべきか、判断を誤るなら出きるものの後ろをついたほうが懸命だということです。

●下刈り中にみる犬の行動
 今回のクラスでは歩く距離を調整したあと庭で下刈りをいっしょにしてもらいました。下刈りとは山を育てるための作業で、小さな木々の間に生えてくる草や萱や木々を刈り取っていく作業です。
 人々が庭で下刈りをしているときの犬の行動もそれぞれに違います。飼い主の近くをずっとついてきて草の臭いを嗅いでいる犬、飼い主の近くに居場所を獲得して飼い主の作業を待っている犬、飼い主の方をみて鼻をならしたりする犬、それぞれに飼い主との関係性と犬の性質を表現しています。
 山歩きのときと状況は似ているのですが、移動という行動を伴っていません。作業をしている飼い主は土の方を見ているわけですから犬の方は見ていません。飼い主に依存している犬は(大半の犬は依存していますが)、いつもと違う状況に不安な状態に陥ります。犬によってはテラスにおいてあるクレートの中に入って出てこなくなったり、車の下にもぐったりすることもあります。飼い主が見ていないと行動が不安定になるため最小のテリトリーに戻ってしまうためです。
 こうした犬の行動を見ることで飼い主さんが気づくこともたくさんあります。なぜ犬はテラスに帰ってしまうのだろう、なぜ犬はこちらを見て鼻を鳴らしているなろう、なぜ犬は落ち着きなく動くものを常に追っているのだろう、そんな疑問が生じることが大切です。
 犬のトレーニングやしつけというと、何か犬に問題がないと関心をもたれないことがまだまだあります。犬に問題を感じたらすぐに対応をしてほしいとは思いますが、もし犬に問題を感じていなくても、犬の行動に少しでも「なんでだろう?」を見出せたら、それはもう犬のことを学ぶチャンスです。もう何十年も仕事をしている自分でも、犬に対するなんでだろう?はいつも存在します。そしてその疑問についてまず仮説をたててじっくりと時間をかけて納得するまで追い続けていくことを楽しいと思っています。犬の行動でいうところの追跡作業ということでしょうが、よほど関心がなければこれほどの追跡はないでしょうから、自分ながら本当にはまってしまったという他ありません。

●おまけ

 下刈りは庭のほんの一部でしたがそれでもすっきりとして風通しがよくなりました。里山の境界線なので藪にしてしまうようなことがあったら境界線を預かる身として面目がありません。お手伝いには心から感謝しています。お昼タイムはいつもは自宅で作らないものということで、博多駅周辺ではよくみかけるパンケーキにしました。しかも玄米粉でつくったパンケーキに豆乳ベースの生クリームをのせたものです。
 七山は水が本当においしいので安いコーヒー豆でもゴハンでもなんでも本当においしいです。水はすべての基本ですね。パンケーキを食べながら日本の山は水の宝庫、海外の人たちが山を買い取ってしまわないように山を守っていく必要があるねという話をしました。山を守るためには里山に住むしかありません。そして山の手入れを汗水たらしてして、山のおいしい水をいただきます。山があれば動物たちが住めるし、空気がきれいになるし、健康な土がたくさん育ちます。そして命もまたそこから生まれます。


dav

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おすすめのアイテム「ウォータードッグガーデンのサインプレート」

 犬のマークのステッカーが張ってある車をよく見かけます。生徒さん達の車にもそれぞれの犬種のステッカーを張ってあるのを見かけます。ミックスとか雑種というステッカーがあったり、ドッグという犬マークのステッカーもあります。ところが不思議に感じることがあります。車にはステッカーを貼るのに反対に庭や玄関にはステッカーを貼ることが少なくなったような気がするのです。


●「犬がいます」のサインプレートを見かけたことはありますか?
 その方の家に犬がいるかどうかのサインを見分ける方法は行政登録したときにいただくステッカーでした。あの「犬」と書いてあるものです。毎年狂犬病予防の注射を接種したときにいただくので何枚を貼ってあるご家庭もありますね。

犬丸ステッカー
このステッカーは「うちにいる犬は登録と狂犬病予防接種を済ませていますよ。」という目印として貼られていました。

 しかし、本来の犬がいることを知らせるサインプレートはまた別の目的を持っています。

●「犬がいます」のサインプレートの役割とは

 犬がいることを知らせるサインプレートですが、サインプレートを貼るメリットとは何でしょうか。

サインプレート猛犬注意
 そのサインプレートの効果を知りたいなら、実際に自分が訪問するほうの立場になって考えてみるといいでしょう。玄関で「猛犬注意」のサインプレートを見たら、一旦心構えをできますね。この家には犬がいるんだなと前もって知っておけば、インターホンを鳴らしたあとに犬が吠えてもビックリすることがありません。
 サインプレートがないことで来客や宅配便の方をビックリさせてしまったこともあるかもしれません。すべての人が犬がOKなわけではありません。最近の犬たちは室内から走り出てきますので、犬が苦手な人だったら小さな犬でもビックリします。その上、小さな犬の方が吠えたり唸ったりするのは激しいこともあります。
 相手にはっきりと知らせたいなら、文字版の小さなサインプレートは見逃しがちです。玄関というよりは、門のところくらいにはっきりとわかるように犬がいることを知らせるプレートを貼り付けておくことは来客に対するマナーになります。さらに、来客が犬がいることを知っていてくれるほうが、犬を驚かせることもなく犬達にも安心感を与えます。

●泥棒よけサインプレート

 犬がいることを知らせるサインプレートの中には、威嚇する怖い犬の顔を描いたものもあります。泥棒よけのサインプレートです。


サインプレート猛犬注意2
こうしたサインプレートは少し人を脅かすようなプレートではありますが、吠える犬がいる家には泥棒も入ることを躊躇するでしょう。中には「GUARD DOG 防衛犬(番犬)」とか、「POLICE DOG (警察犬)」と書かれたプレートもあります。実際ある程度の効果はあるでしょう。

 泥棒よけの必要がなければ、単に犬がいるということを視覚的にアピールできるサインプレートをかけることはお勧めしたいことです。特に庭に犬が出ることがあるなら、玄関でなくても庭の柵越しにプレートを掲げて、犬がいるから注意して通ってねと伝えることもできるでしょう。
サインプレートは犬にとって安心できる環境を整えるために役立つこともあるのです。


●ウォータードッグガーデンのサインプレート

 「犬がいます」のサインプレートにはいろんなものがあります。ホームセンターや100円ショップでは古風な「猛犬注意」の文字版プレートが販売されています。しかし、やっぱり家の玄関のことだし、ちょっとおしゃれなサインプレートが飾りたいなら、こちらのサインプレートをおすすめします。

 吉祥寺のセンスあるお店「ウォータードッグガーデン」のサインプレートです。

グッドボーイハート七山校の入り口に貼ってあります。
「このプレートってどこで販売しているんですか?」となんどか尋ねられたことがありました。
下の写真の中の右上のオレンジのプレートと、ひとつ奥に見える「BE CAREFUL」と書かれたオレンジ色のサインプレートです。

dav
ここに飾って10年立ちますが、自然の遠慮ない雨風にさらされてきました。その結果このくらいの劣化なら十分活躍してくれていると思います。素材はステンレスのようです。英語文字の意味はわからなくても、犬がいるということがわかればいいのかなと思います。プレートのサイズが大きくて分かりやすい!という理由で購入しましたが、大きいけどブサイクではありません。センスあるプレートと堂々と貼り付けておけるのもメリットですね。


通販ショップはこちらです。


WATER DOG GARDEN ウォータードッグガーデン通販ショップ


通販専門のお店ではないので手間のかかる購入方法ですが、品数が少なくいつも在庫切れなのでもし在庫があったら幸運です。

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老犬とともに暮らしながら子犬を迎えるときに注意したいこと

 多頭飼育をされるご家庭が増えてきたようです。どのような状況でも、新しく子犬を迎えるということにはいろいろな配慮が必要です。中でも特に注意してあげたいのは、一緒に暮らしている犬が10歳を超える年齢に達する老犬になっているときです。
 10歳といえばまだまだ若く老犬と呼ぶには早すぎますが、若年寄くらいの年齢には達しています。先住犬が10歳を超えてから子犬を迎えるときには、いろんなことを細かく配慮してあげたいものです。


●子犬中心の生活にならないように
 どの年齢でも先住犬がいるときには、子犬中心の生活にならないように配慮してあげる必要があります。子犬は人との生活をはじめたばかりです。排泄に行く時間を細かく定めてトイレトレーニングを行ったり、クレートに一時的に休憩させるクレートトレーニングの時間があったり、庭で過ごす時間など生活のタイムスケジュールと、生活空間の使い方に慣れるために、しばらくはつきっきりでのお世話が必要になります。
 この子犬の生活の世話によって飼い主の動きが多くなってしまうため、つい子犬中心の生活になってしまうことがあります。今まで先住犬と過ごしていた時間を変えずに子犬のお世話も増やしてしまうと、とても時間がないと感じられるかもしれません。つい先住犬が老犬であれば、リビングでゆっくり昼寝やひなたぼっこ、飼い主さんとゆっくりと過ごす夜の時間だったひとときの間にも、子犬のお世話で飼い主が動いてしまうたびに老犬も落ち着かなくなってしまうかもしれません。それまでの犬と飼い主の関係性によって反応はさまざまですが、もし老犬が落ち着かない様子になるときには家族が交代で子犬のお世話に当たるなどの配慮が必要です。もし家族がおらずひとりで2頭の犬の世話をする必要があるなら、犬たちのお世話にかかる時間をたくさんとれるように仕事や他の用事を少し減らして時間調整をする必要性もあります。
 老犬の中には子犬の世話をするたびに鼻を鳴らしたり後追いをするような状態になることも考えられます。かといって老犬を必要以上になでたり触ったりしてなだめようとするとそれも逆効果になります。子犬に必要な時間については、老犬には「ちょっと待ってね。」ときちんと区別をつけてあげることで、老犬も次第に落ち着きを取り戻します。


●老犬が子犬を受け入れないのはよくあること
 子犬はお母さん犬から離されたばかりです。当然ですが、お母さん犬の代わりになってくれる存在を捜しています。そのため、成犬を見ると寄っていって自分の世話を受け入れさせるような行動をします。舌をペロペロと出して成犬の口元をなめたり、ついて回ったり、腹部を見せたりします。現在の成犬の多くは子犬をなかなか受け入れませんので、無視をしたり相手にしません。子犬から逃げる成犬もいます。
 成犬に受け入れを拒否されてしまうと、子犬はますます興奮してきます。とびあがったり、相手をされないと飛びついたり、手をかけたり、甘噛みをしたりします。成犬はとてもうっとうしくなり、吠えたり唸ったり軽く牙を当てることもあるかもしれません。子犬の方は世話を拒否されて居場所を獲得できず、部屋の中を走り回るなどの興奮した行動をしてしまうことがあります。
 成犬が吠えたり唸ったりするのを子犬に対する教育だと勘違いされていることがありますが、よく観察とその多くは拒否行動になっています。子犬の要求や興奮を抑える行動とは多少違いがありますので慎重に観察してください。
 こうした成犬、特に老犬が子犬を受け入れない行動をするとガッカリされることがあります。しかし、これは仕方のないことです。特に老犬については子犬の面倒を見ることを期待してはいけません。子犬にこのことを理解させることは難しいことですが、子犬が興奮しすぎて老犬に激しくアクションするのはのちのお互いの関係性を難しくしてしまいます。子犬の面倒を見るのは人であることを時間をかけて教える必要があります。


●生活のスペースをゆっくりと子犬に提供していくこと
 子犬をゆっくりと老犬の生活の中に入れていくためには、スペースをゆっくりと子犬に提供してくことです。老犬が子犬を受け入れしない限り、老犬のテリトリーの中に子犬が入ることを老犬は不快に感じます。ストレスの行動を出したり、隅っこにいったり鼻をならしたりすることもあるかもしれません。
 子犬を室内に慣らすときには子犬の本拠地であるクレートを老犬のメインスペースとは別の部屋に設置します。その上で、子犬の遊び場も子犬のクレート近くにつくるようにして老犬のくつろぎスペースを邪魔しないように配慮します。一日のうちの少しの時間を老犬といっしょに過ごすようにスペースの区切りを解放します。しかし、部屋のつくりなどで老犬の居場所に排泄をするようなことがあれば、その時間配分も工夫してあげる必要があります。自分の居場所を子犬の排泄で汚されるのは老犬にとってとても強いストレスになることを理解してあげましょう。
 大型犬であれば早い時期に庭で排泄ができるようになります。管理の方法ひとつですぐに子犬は庭に排泄場所を獲得するでしょう。老犬はこれだけでもひとつのストレスをクリアできます。また子犬はひとりで休めるようにクレートトレーニングを休息や睡眠、留守番のときに活用して練習を行います。子犬が人のそばでないと落ち着けないようになってしまうと、老犬はますます子犬との関係が難しくなってしまいます。

 こうした子犬の管理を続けながら時間をかけて老犬の生活に子犬が入ってこれるように配慮してあげてほしいのです。特にずっとひとりで過ごしてきた老犬にとって子犬の登場は大きな壁です。年をとるほどに環境を変えたくないと感じるのは、人でも同じことではないでしょうか。孫はとてもかわいいけど、お世話をするのはときどきでいいと感じられることもあるでしょう。老犬にとってエネルギーの高い子犬は、時に疲れる存在にもなるのです。老犬のペースを維持しながら子犬を家族として迎え入れ、お互いに時間をかけて関係をつくっていくことと、子犬をきちんと物理的にも管理をすることは、老犬の家庭に子犬を迎えるときにぜひ気をつけてあげてほしいことです。


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猟師さんから聞いた猟犬の実情:「日本の猟犬」の復活を考える

 鹿肉ジャーキーヤクトの猟師さんとの話で、今回また猟犬の話で盛り上がりました。そしてついに今回すごい話を聞いたので、みなさんと共有して日本の動物について考える機会とします。


●猟犬と聞いてどんな犬をイメージしますか

 猟犬といってもいろんな種類の犬が猟に使われています。日本の鹿猟や猪猟をしている猟犬と聞いたとき、どのような形や色の犬をイメージしますか?

ハウンド系の耳が垂れていて白っぽくてぶちがある犬、茶色の犬とか、ビーグル系の同じく耳が垂れていて白っぽい下地に茶色や黒のブチのあるこんな洋犬を想像するでしょうか?

hound
ハウンド犬


それとも、毛の色が虎柄で耳の立っている日本の甲斐犬や四国犬を想像しますか?


甲斐

四国犬

ラブラドルリトリバーなどのリトリーブ犬を想像される方もいるかもしれませんね。

ラブラドールリトリバー

●国内の鹿(シカ)・猪(イノシシ)猟に伴われる犬たちについて

 現在、国内の鹿猟や猪猟に伴われている犬の種類は、大きくふたつのグループに分かれています。そのふたつは洋犬グループ、和犬グループです。

 洋犬グループの方は前述したハウンド系やポインター系、セッター系の犬たちです。すべての使役犬にいえることですが、犬は使役の目的にあわせた能力によって分けられていました。そのため、ハウンド系といっても形も色もさまざまですが、よく見かける形として耳が垂れていて、尾が少し曲がりながらもまっすぐとあがり、色は白地にブチや、茶色で鼻部分が黒いような形態を持つ犬たちが多いようです。

 実際に、山をウロウロとしている猟犬を見かけたり、車のケイジに乗せられて移動中の猟犬もよく見かけられます。佐賀地域では3月の猟期の終わり時期になるとこれらの猟犬が山に捨てられることがあるので、自治体の保健所には猟犬風の犬が収容されているという事実もあります。

 ところが猟の歴史をよく調べてみると、こうした洋犬の猟犬たちは西洋式猟の普及のときに猟銃や猟の道具といっしょに販売され普及を広めていったようです。猟という仕事はそもそも山奥深くに住む日本の「マタギ」といわれる人たちの仕事であったところから、西洋文化の侵入によってそれまでマタギではなかった人たちが仕事として猟を始めるようになったのかもしれません。

 これらの西洋式猟とは別なスタイルで日本古来の猟を支えていたのが和犬の猟犬たちです。和犬の猟犬も必ずしも純血種ではありません。地域によってサイズが違いますが、毛色が茶色ベースで立ち耳に立尾、犬によっては巻き尾の犬の写真も残っています。四国犬、柴犬、秋田犬、北海道犬、甲斐犬などの雑種や全くの雑種も猟としての能力があれば猟犬として猟に伴われていたようです。


●猟犬でも違う猟のスタイル

 こうした猟犬の種類の違いはただ形や色が違うだけではありません。猟の仕方そのものに違いがあります。今までに鹿猟や猪猟の話を聞いたときに、いつも不思議に思っていたことがありました。たとえば、ポインターやビーグル風の洋犬たちは、猟のときにワンワンと吠えながらとても興奮して走り出していくらしいのです。こうした光景については猟師に話を聞いたこともあるし動画で見たこともあります。ですが、これはとても不思議な行動に思えたのです。なぜなら、ワンワン吠えて追い立てれば獲物となる鹿や猪を興奮させてしまい、追いかける側に危険が及ぶ恐れもあるからです。西洋の犬だけがこうした行動を取るのだと思っていたのですが、その後に和犬の猟犬も獲物を見ると走り出しワンワンと吠えて追い立てるという話を聞いたときには、やはり猟犬とはそんなものなのだろうかととても複雑な気持ちになりました。

 ところが今回ヤクトの猟師さんから「とても猟が上手い猟犬」の話しを聞きました。つまり、獲物を見ても走り出したりしないということだったのです。これを聞いて本当にうれしかったです。やっぱりそうだ、そんな猟犬がまだ日本にいたのだと知った瞬間でした。実際に鉄砲をかついで犬のサポートで猟をしている猟師さんの話なのでワクワクしました。

 ヤクトさんが一緒に猟をした猟犬は、犬は獲物を見つけても走り出したりしない、ゆっくりと静かな足取りで獲物を後をつけていく、けれど後ろからついてくる猟師を置いていかないように距離をはかりながら追跡を続けるとのことです。そして尾根の方向に向かって獲物を押し上げるように追跡する、その後、位置をかえて上に待っているとガサガサと足音が聞こえてくるので獲物が来たとわかりゆっくりと構えることができるということでした。ガサガサという音については「犬がそんなに足音を立てないので獲物だとわかりやすい」といわれたのです。その犬って茶色で日本犬風だけど鼻先が少しすっとしているニホンオオカミみたいな犬じゃないでしょうかと尋ねるとその通りだといわれていました。GPSがいりませんよねと尋ねると、こうした犬にはGPSは使っていないということです。猟師から離れないので必要ないのです。

 以前、ヤクトさんから別の猟犬の話しを聞いたときは、犬たちはワンワンと吠えながら興奮して獲物を追うため、獲物はすごい勢いで走ってきてそれに対して犬たちもすごい勢いで走ってくるということでしたが、この犬たちは西洋の猟犬たちでした。西洋の犬と和犬で違うということでもないと思います。和犬の中にも吠えながら獲物を興奮して追いかけていく犬の話も聞いたことがあります。この違いは、人側が犬の猟をどう捕らえるのかという問題であると思います。

●猟という仕事をする犬の立場にたって

 使役をする場合、人の合図や人がつくった道具に頼るように仕事をする犬と、自らの犬の習性に基づいてナチュラルな形態で仕事をする犬がいます。前者の犬は人の指示のとおり動くことを要求され、後者の犬は自律して行動しながら人と協力する質を求められます。
 獲物を見てワンワンと吠えながら追い立てていく猟スタイルはどちらかというとスポーツドッグの印象が強いですね。西洋の貴族たちがたくさんの犬を伴って猟に出かける絵画をよく見かけることがありますが、あれはひとつの狩りというスポーツの姿です。先日このブログで紹介したDVD「狩人と犬」の中にも主人公が猟に出かけるシーンがあります。1頭の犬を伴って猟に出るのですが新米犬のやや不安定な行動で獲物に気づかれてしまいます。この猟でもやはり少ない犬を気配を消してというスタイルでした。

 気配を消して獲物を追跡してじっくりと追い詰めていくスタイルはまさにオオカミそのものです。野山に暮らす野犬であれば、同じようなスタイルで獲物を仕留めていくでしょう。人はそのイヌ科動物の習性にのっとった狩りのスタイルを尊重し、これに人の方が同伴する形での猟の姿というのは美しいものだと感じます。そしてなにより犬と人にとっては安全であり、捉えられる獲物にも不要なストレスを与えない行為です。逆に、犬たちを興奮させて獲物を追いかけさせるタイプの猟では、犬も人も危険にさらされます。

 こうした猟のスタイルで猟犬を育てると人によって動物の行動を操作しようとする力が強く働きます。その力は繁殖にも及びます。犬の興奮度を繁殖に頼ろうとする傾向が出てしまいます。異常に興奮して攻撃性の高い犬を選択繁殖するわけですから、一歩間違えばとても危険な犬を繁殖してしまうことになります。こうした危険性の高い猟犬は、山近くで動いているものを見ると攻撃をしかけるので、里山での犬や住人とのトラブルにも発展してしまう恐れも十分あります。現にこうしたトラブルは発生しています。

 使役犬については、人の作用を少なくして犬が本来もっている習性に基づく範囲内にとどめるのが動物の福祉に見合った態度であり、犬を尊重する姿勢ではないかと思うのです。とにかく今回は、日本古来の猟犬の姿がまだ残っていることを現場の猟師さんの体験談として聞くことができたので、それだけでも小さな光だと感じとてもうれしくなりました。



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鹿肉ジャーキーのヤクトさんの試作品ができました:骨を与えるときに注意してほしいこと

大分の竹田市でつくっている鹿肉ジャーキー「やまごち」を販売しているヤクトさんから、試作中の商品をいただいたのでご紹介します。


●骨シリーズ

ときどき譲ってほしいといわれることがあるからということで準備されている骨シリーズが2個でした。

ひとつめは肩の部分です。
手の平くらいのサイズです。全部食べられそうにみえるのですが、実はしゃもじのようになっている形の周りが軟骨になっているだけで、中心部はしゃぶるくらいです。全部食べてしまう犬はいないらしいです。

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次は脚の骨です。
中心に骨の髄がはいっているので、ここが大好物なんですよね。
でも骨自体はとても硬いです。サイズは手の平くらいの長さです。

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●内臓シリーズ

ひとつめは肺です。
空気がはいっているのでパフパフしていますね。
とても人気があるとのことでした。

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こんどは心臓です。やはり色が濃い、血液成分が多いということです。

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●鹿の角

角の片方で30センチくらいの長さがあります。
犬が少しずつ食べることもあります。捕る時期によって中が空洞になっているとのことでした。
とてもきれいですね。このサイズで2500円くらいになるそうです。

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 いただいた命は全部役立てたいいうヤクトさんの商品作りは、少しずつ新しい商品に変わっていくようです。骨はサイズによって多少金額が違うそうです。内臓関係は試作段階ですが、犬たちの食べ具合によっては商品化も近そうです。試作品はグッドボーイハートで犬たちに食べてもらっています。


●骨を与えるときの注意点

 ここからは硬い骨類を与えるときに注意してほしいことです。まず骨を与えるときは十分に注意して与えてください。骨を与えることによる事故やトラブルはたくさん発生しているからです。注意して与えてくださいという文言はどんな骨商品にも記載されています。ところが、何を注意していいのかわからないので与えるのはなかなか難しいでしょう。犬は動物だから食べないものは食べない、食べるものは食べるだろうと犬に判断させるとトラブルになってしまいます。

 そのトラブルはこんな理由から起きます。
1 犬は遺伝的に顎の強さが変化しており、すべての犬が顎が上部なわけではない。

2 犬はストレスがかかるとかじる行動が多発し、硬い骨でも無理をして噛むため歯を欠損する恐れがある。

3 かじる行動は少しずつ起こるためわかりにくいが、年齢をたってみると歯が磨耗してなくなっていることがある。

4 途中で取り上げるつもりの骨の一部を飲み込んでしまい喉につからせる危険性がある。

トラブルとしてはこんなことがあります。
 特にストレスが強い犬はかじる行動が強いため、どうしても骨をかじらせたくなります。そうしないと家具をかじったり、自分の手足をなめたり、吠えたりするストレス行動が出るからです。とはいえ、骨をかじる行動がストレスの回避行動であれば、犬は必要以上に、また自分の能力を超えて骨をかじるためトラブルが発生する可能性は高くなってしまいます。

 犬はかじることで満足感を得やすいので骨を与えたいという気持ちになってしまいますが、犬が少しでもストレスがかかっていると感じられる状態のときは、大きな骨を与えるのは控えてください。また遺伝的にストップ(鼻先までの長さ)が短い純血種、マズルの細すぎる純血種、歯のかみ合わせの悪い純血種の犬たちには硬い骨は危険性が高いので、選ぶときには慎重にお願いします。


 硬い骨が食べられない犬にも、いろんな部位のジャーキーは与えられます。安心して与えられるものをオヤツやフードのトッピングとして使ってください。ヤクトさんの商品はまた新しい展開があるようです。今からとても楽しみです。

サンプルもたくさんいただきました。
お友達の犬たちにプレゼントしたい方にもお渡ししていますので「サンプル下さい!」とお声かけください。

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アナグマと犬が遭遇したら:山の中で野生動物を見たときの犬の反応でわかること

 お天気続きでつい山に脚が向いてしまいます。梅雨時期になるとさすがにトレッキングも難しくなるので、暖かなこの季節はトレッキングクラスでステップアップをはかる短いチャンスでもあるのです。

●アナグマとの遭遇

 そんな気持ちよいトレッキングクラスのときに、珍しくアナグマと遭遇しました。
トレッキングクラスでよく出会う野生動物といえば、鳥とかヘビとか、うさぎくらいまでは比較的多いのですが、四つ足の哺乳動物にはめったに出くわすことはありません。見晴らしの良いトレッキングコースでは人の声や犬の動く気配も伝わりやすいため、警戒心が高い四つ足の哺乳動物の方も接近しないように気をつけているのでしょう。

 出会う可能性のある四つ足の哺乳動物の具体的な動物名は、タヌキ、キツネ、イタチ、アナグマといったところです。このうち、タヌキとキツネがイヌ科動物で、イタチとアナグマがイタチ科動物です。それでこの2つのグループは大きく違います。
 イヌ科動物は警戒心が高いためなかなか姿を現しません。それと比較するとイタチとアナグマは活動が活発なのかよく目にします。野生動物を見る機会がない人でもペットのフェレットは見たことがあるかもしれませんが、フェレットはヨーロッパのイタチ科動物で家畜化されたペットです。イタチはフェレットによく似ています。アナグマはフェレットというよりはタヌキの方に少しにている形をしています。

 このアナグマですが、このあたりの福岡、佐賀周辺の山々では日中でもわりと見かけることがあります。七山のグッドボーイハートの裏側にはよく昆虫の幼虫をとりにきているようで、穴を掘っては何か食べているのを見かけることもあります。地面に落ちたサクランボを食べているのも見たことがあります。梅雨前になったら野イチゴを食べにくるので日中の接触率はぐんとあがります。


●アナグマは怖い動物なのか

 アナグマを凶暴と思われているようですが、人間ほど凶暴ではありません。どんな動物も恐怖を感じて逃げることができないとなると、その行動は逃走行動から闘争行動へと変化してしまいます。アナグマを追いかけたり追い詰めてしまい、アナグマが逃げることができないという判断を下すとその瞬間に攻撃に転じることがあるでしょう。攻撃といっても最初は唸ったり牙を見せたり口を開けたりする威嚇行動です。威嚇行動は犬と同じように、「そっちが攻撃するならこっちだって戦うぞ」という戦いの意志を表現するもので、動物の表情をよく見れるようになれば、ここまでは怖くありません。威嚇行動は相手に分かりやすく伝えるために表現方法がオーバーになっています。歌舞伎のようなものですね。特に相手が異種間の場合や距離がある場合には、はっきりと伝えて相手を遠ざけるためにその表現方法はわかりやすいものになります。人から見るとそれが「こわい」という印象を受けるのかもしれません。


●アナグマに遭遇したときどうするの

 動物たちだったらアナグマに遭遇したときにどのようにすればいいのかといったことを考えて練習したりはしませんね。若い年齢の動物は衝動に負けてしまい動物に向かって走り出し大ケガをすることがあるかもしれません。ただ、きちんとした社会的関係を持つグループに所属していれば、衝動に負けて少し走り出しても途中で停止することができます。それは、走りすぎることでグループ=群れを離れすぎてしまうというゴムのようなストッパーがかかっているからです。群れから離れることは自分を最も危険にさらすことでもあるし、群れそのものを危険にさらしてしまうことでもあります。社会的な力というのは、自己利益だけでなく、自己にとって有益なという理由であっても群れの利益になるように、一定の行動のルールができあがっています。
 こうした行動は、考えて行われてないというのが不思議なところです。走り出したら飼い主さんに怒られるとかそんなことを犬は一切考えていません。社会性が未熟な時期には野生動物との遭遇には十分に注意をする必要があります。お互いのテリトリーを侵さず、脅かさず、安全と安心を保っていられるようにするための距離感を身につけることは、動物としてとても大切で利益のあることです。実は犬がこの社会的距離感を一番学習してるのは、対人間に対してなのです。人との関係や距離が近すぎると、一定の距離を他者ととりながら関係性をつくることはとても苦手です。特定の人には甘え、他の人には遠ざかるという傾向がどうしても強くなってしまいまうようです。

 動物との距離感は野生動物との距離にも現れるのです。いろんな体験から犬を知り、自分を知り、そして世界を知ることができます。山の環境はやはりすごいなと感じる一日でした。


dav

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