引き続き、笹林と戦っています。
草刈バサミ、チェーンソー、エンジン草刈機、電動草刈機、バールとありとあらゆる文明の利器?を使って山の学校の笹林を刈り続けています。
笹林と向き合い奮闘していると必ずやってくるのが山羊のゼットです。いつも気づくと足元に来ているので、どうやって笹を払っているのにゼットが気が付くのだろうと不思議でなりません。
ゼットは、草刈鋏を持って笹を刈っている私にまとわりつきながら笹や笹にまきついた大好物のカズラを食べています。笹を刈っている私の足の上に自分の脚をのせたり、私の体に自分の体を接触させたりするのは偶然ではないように思えます。
擬人的に見れば、自分の食べ物だからとったらダメという感じの攻撃なのかと思うのですが、止めさせたいなら体当たりするとか頭突きをするとかもっと有効な攻撃の術を彼女は知っています。
止めさせているのではないと思う理由のひとつは、笹林を刈り終えて休憩に入るときにはいっしょにその場を離れてテラスまでついてきます。テラス近くで別の方向へ向きを変え姉妹山羊のアールのいる場所に戻っていきます。
なかなか山羊の頭になって考えることができないのですが、共感性という能力からすると草をとるという作業を一緒にするというところにはまっているのではないかとうことです。
ゼットが私と共感する時間を大切にしてくれているとすれば、本当にうれしくありがたいことです。実際にひとりで笹林と戦っている時間はとても孤独です。草刈とは違いやってもやっても1メートル進むのがやっとなので、敵が巨大すぎで気持ちが折れてしまいそうなのです。そんなときに、ゼットという仲間がいることで精神的に支えられています。
小さな子山羊を迎えたのは昨年の7月でした。山羊たちがここにきて1年が過ぎて、笹をきれいに食べてくれるアールとゼットにとても助けられています。他にも犬たちの相手をしてくれたり、ゲストのおもてなしをしたり、私の笹刈のサポートまでしてくれてありがたいことばかりです。
そして、楽しいことは他にもあります。
先日、生徒さんが柚子の苗を持ってきてくださいました。草刈作業を手伝って下さったときに誤って柚子の小さな苗を切ってしまったのでお詫びに、ということでした。
誤って切るのは誰にもある間違いですが、ご厚意なのでありがたく受け取りました。
この柚子の苗を植えようと準備をしていたとき、カサカサという音に振り返るとすぐうしろにゼットが立っていました。柚子の苗の柔らかい葉を狙っているのです。苗を植えるために穴を掘っていると早速ゼットが柚子の葉を採ろうと急接近しました。「ゼット、これダメよ」とゼットを払いのけると、いつもの小さなベーといって後ろに下がりました。
山羊たちにやられないようにと網の枠も準備して挑んだ苗木を植える作業、穴を掘ったあとにしゃがみ込み苗を穴の中にいれて苗の根をほぐしていました。そのときです。
私の背中にどーんとふたつの脚が乗りました。ゼットです。
ゼット痛いよ、と叫んでも私の背中に乗ったままです。近くにいたお手伝いのトシちゃんがゼットを払って助けてくれました。
20キロ近くあるうえに山羊の蹄が背中にあったので痛かったのですが、それ以上に「なぜそれをする?」という疑問が湧いてきました。
ゼットが食べようとした柚子の苗を守って私が植えた。そのときにゼットが私の背中に脚を乗せた。どうみてもこれはひとつの攻撃です。
動物と過ごす楽しみは、たくさんの生まれてくる「何故」です。
山羊を飼っている知人も近くにいないし、山羊のことを全く知らずに迎えたので、いろんなことに「何故」が生まれるのですが、特にゼットの場合には謎だらけです。
いろんなコミュニケーションを見てきたので、ゼットは相当コミュ力が高いものと思われます。そんな動物と暮らす楽しい何故があるから、やっかいな笹林との闘いも続けられるのかもしれません。
そういえば、最近になってヒゲが生えてきたゼット、女子なのにヒゲが生えるなんてますますゼットくんと言われるようになりそうです。ちなみにアールには生えていません。話題を提供してくれるゼット、いつもありがとう。