今年はずいぶんと長く夏の間に七山に滞在することになりました。
いろんな犬たちがトレッキングクラスや預かりクラスを利用して学びに来てくれたからです。
この長い七山夏休み合宿クラスも明日で一旦終了します。
暑い暑いといいながらも、エアコンをつけなくても過ごせるような環境です。
土の上や冷たい風のとおる樹木の下で、ずいぶんと長い時間を犬たちと共に過ごしました。
お預かり回数が増えていくたびに落ち着いて過ごせるようになった犬もいます。
お預かり回数が少ないために落ち着くのに数日を要する犬もいます。
預かり犬の出入りが増えて、関係性や空間も変わってしまいます。
難しいことはたくさんあるけれど、結局最後はこの七山の自然の環境に助けられながら、何か気分の良い時間を犬たちが感じてくれればと思っていました。
どんな経験や学習も、情緒が伴わなければ学びにならないのではないかと思うのですが、私の尊敬する神経学の先生の本にも同じようなことが書かれていました。
自分たちの経験学習の中には、楽しかったとか、心地よかったとか、気持ちよかったとか、ワクワクしたとか、何かの情緒が伴ってこそ自分にとって価値のあるものとして記憶されます。
人では学校の勉強や数学の数式を解くことですら、解ったときのワクワク感があるからこそ学ぶことが楽しいと感じられるはずなのです。
自然の中にはこうしたワクワクした学びがたくさんあるということは、犬の様子を見ていればわかることですが、それが犬のしつけと何の関連性があるのかと尋ねられることがあります。
すでにしつけが終わっている犬が、遊びの場所として自然を必要としているという前後関係があると思われているとしたらそれは違います。
犬にとって飼い主が学んでほしいこととは、「飼い主の言うことをきくお利口さんの犬になること」でしょう。
「飼い主の言うことをきく犬」であれば、犬を飼うことで人の生活が脅かされることもないし、安全であるからです。
お互いの安心できて豊かな生活のために、犬の生活環境を整えて犬にしつけをちゃんとする。犬に飼い主という群れがあることを教えてあげるためにです。
犬の立場からみれば、従う価値のある飼い主との暮らしであれば、犬は安心感を得て安定した生活を送れます。
ただ、人の言うことに従う犬になるためには、しなやかに発達した脳が必要になります。
その脳の発達は、囲われた室内やコンクリートの上だけではなかなか難しいのです。
拘束された狭い室内では犬の中にワクワクを生む素材がありません。
食べ物を見せれば犬はワクワクすると勘違いされているようですが、食べ物を使ってしつけをすることに偏りが生じると、犬は何かに執着することを覚えてしまうだけです。
オスワリ、フセは上手にできるでしょうが、空間の中で人や他の犬と自然と関わる社会性を身に着けることは食べ物で教えることができません。
合宿期間中にできるだけいろんな体験ができるようにと、オポ広場に柵を作ってみたり、草刈りしたり、トレッキングにつれていったり、工夫を凝らしました。
犬たちのワクワクの情緒とともに経験したことが学習となることを願いつつ。
この経験を活かして、次は飼い主さんとまた日常生活+アルファの楽しい生活を送っていってほしいです。
まだ預かり経験がなく、訪問レッスンを続けていらっしゃる皆さんも、ぜひいつかこのびっくりする山奥までお越しになって何かを体感してください。