7月に七山で開催した友人の現役の盲導犬訓練士、水谷先生による「盲導犬を通して見えた犬との関わり方セミナー」にはたくさんの方にご参加いただきました。
日程が合わないなどでご参加できなかった方のために、ほんの少しですがセミナーの一部としてまとめをいたしましたのでこちらにご紹介します。
たくさんあるセミナーの内容の中でも、受講生のみなさんが「へー」とか「はー」となった部分を強調してお伝えいたします。
まとめこちらから。
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1 盲導犬の繁殖について
歴史的な流れの中で、20年くらい前から計画的な繁殖をするようになった。
現在では人工授精や凍結精液を活用して、世界各国の盲導犬事業を行う団体と協力しながらより可能性の高い繁殖を目指している。
2 品種改良により世代毎に、遺伝的により良い犬の繁殖を目指している。
大体7世代繁殖すると良い質が安定する。
3 遺伝と環境
今ではどちらも大切と言われている。
むしろ環境によって変化する要素の方が高い。
4 遺伝でできること
健康面では遺伝的な疾患となるものを排除する。
性格的なことも遺伝が影響はするが、環境によって変化する。
5 盲導犬の繁殖に求められることは?
落ち着き、作業に対する意欲、体の感受性、環境に対する健全な態度(社会性)
6 盲導犬の育成~パピーウォーカーに渡すまで
トイレトレーニング すぐに覚える
室内環境に様々な工夫を凝らし、立体空間で遊ばせるようにしている。
(特に頭上のものに注意を払えるような遊び道具も準備)
7 パピーウォーカー
2ケ月から1歳までの期間、定期的に講習会を行って指導している。
様々な環境に適応できるように犬と外出してもらっている。
8 盲導犬の育成と訓練
大体1年から2年くらいの訓練を行う。
基本訓練とハーネスをつけた誘導訓練。
基本訓練=服従訓練は2週間で完了するが、その後も毎日10分程度の服従訓練を行う
。服従訓練は盲導犬になってからも毎日盲導犬ユーザー(視覚障碍者が行っている。)
盲導犬になれるのは3割くらい。
盲導犬になれなかったキャリア犬(キャリアチェンジと呼ばれる)はパピーウォーカーの元に戻るか、一般の家庭に家庭犬として迎えられる。
9 盲導犬を視覚障碍者に渡すための共同訓練
期間は約1ケ月、一緒に宿泊施設に合宿して犬との関わり方を学ぶ。
大切なのは犬との正しい関係性。正しい扱い方(ほめることと叱ること)
10 まとめ
遺伝的に良いものを作り出しても、のちの環境や育て方によって大きく変わる。
犬は人が正しく接すれば、人の望む行動をとることができるようになる。
犬にはグレーはない、黒か白。はっきりと伝えること。
犬は群れを形成する動物。ルールを伝えることが犬のストレス軽減につながる。
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ここまでです。
以前このブログでセミナー受講の感想をご紹介しました。
「盲導犬を通して見えた犬との関わり方」セミナーを受講して(感想まとめ)
この感想の中にあるように、犬の性質に与える環境の影響、飼い主の接し方、犬は群れの動物であること、ルールを伝えること、白か黒という伝え方…などが、飼い主として犬と暮らす受講生の皆さんの心に響いたようですね。
盲導犬はあくまで、盲導犬としての適性を目指して繁殖から育成までをコーディネートされている種です。
みなさんと暮らす犬たちは、盲導犬ではなく家庭犬。
ところが、家庭犬として人と暮らす適性を目指して繁殖されていない状態で一般の家庭に販売されていることも多くなっています。
また、保護犬を家庭犬として引き受けた場合、時には今まで人と遠い距離を保ちながらゴミや置きエサで育てられた犬たちの子犬として産まれた犬である場合もあります。
むしろ盲導犬候補犬のパピーよりもずっと難しい犬たちをみなさんは育てられているのです。
だからこそ、大切なのは「環境」です。
生れてしまったものはもう遺伝的に変化させることはできません。
でも「環境」は飼い主によって変化させることが可能です。
みなさん技法を知りたがりますが、一番大切なのは「時間」と「空間」です。
どちらもなければ何もできません。
盲導犬の基本訓練(服従訓練)が1回10分程度、一日1回と言われて「わー」となりましたが、これは人と暮らしが普通に成り立っていることが前提の、誘導訓練に入るまえのウォーミングアップなのです。
リードを引っ張る、物音に吠える、飼い主に飛びつく、首輪を掴めない、飼い主にかみつく、クレートに入れない、などといった問題を抱えている犬が、10分の服従訓練だけで安定した行動をできるようになることはありません。
現在の日本では家庭犬の育成とは大変なことなのです。
プロフェッショナル家庭犬飼い主になるためにできることをまずはやっていきましょう。