毎日の訪問レッスンで見る犬の行動は、単純なイタズラやいうことを聞かないといったレベルではない状況になっていることがあります。
数時間に及ぶ吠えが続く
数時間に及ぶ常同行動の繰り返し
パニックを起こしたように興奮するなど。
カウンセリングの時には、犬に何が起きているのかを分からずに混乱する飼い主の元で、犬はますます手の付けられない状態になっていることがあります。
こうした意味不明の行動を見た飼い主は、この犬は普通ではない、遺伝的に何かおかしいのではないかと考え、率直にそう尋ねられる場合もあります。
自分の犬が何か状態がおかしくなっていると感じられているのは、兆候としては良いことです。
異変を感じ取る、このことこそ犬を救う最大のきっかけだからです。
そしてこの問題を解決したいと思ったときに、同時に考えるのが「なぜこうなった」という理由についてです。
理由のひとつとして、遺伝的におかしいのではないかと考えることもまた普通の発想です。
遺伝的に行動に解決のできない支障があるとすれば、脳は発達を阻害する何かを抱えているということです。
そこから発展して、発達を阻害された=未発達の脳の状態で体験したことが、トラウマを生み出しPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥っていることがあることもまた否定はできません。
ところが犬の脳の研究はそこまで進んでいないことと、実際には脳の発達に影響を与えている要因となるものが、犬によってあまりにも異なるため(遺伝的要因、飼育環境要因)比較が難しいために、簡単にそう決めつけることもできません。
しかし、最近偶然読んだ本の中に、題目の一文を簡単に言ってくださった先生が見つかりました。
面白くて今も読み返している本は神田橋條治先生の発達障害に関する一般人向けの書籍です。
書籍の中には質疑応答風にありました。
「先生そういえば犬にもフラッシュバックがあるって書いていらっしゃましたよね?」
「犬もPTSDになるんですか?」
神田橋先生「なると思いますよ。」
と犬の下りは3行で終わってしまったのですが、まさか犬の話題が登場するとは思わずに読んでいたのでびっくりしました。
そして、神田橋先生のこの一言をいただいて、やっぱり犬もPTSDになるのかと自分の予測が裏付けられたようで楽になりました。
また発達した脳でもPTSDになりますが、犬の場合には未発達の影響がかなり重なり合っているということもよく見られるケースです。
ここで付け加えたいのは、あなたの犬がPTSDになっているかどうかは簡単に判断しないことです。
それにPTSDといってもレベルというものがあります。
同じような行動に条件付け行動というものもあります。
似ているようでかなり違いがあります。
さらに発達障害に関して神田橋先生は「発達障害は発達するもの」と考えられていることもあわせてお伝えしておきます。
私も同じように考えています。
犬の未発達、発達障害は、発達する可能性のあるものとしてトレーニングをしています。
発達を阻害している環境を整備しなおすことがトレーニングクラスの目的です。
みなさんが「いうことを聞かない犬」とおもっているその犬が実は発達障害でさらにPTSDになっているのかもしれないのです。
犬たちの発達を阻害しているのが飼い主さん自身だとしたらどうでしょうか。
実は多くのケースで、飼い主と家庭の飼育環境が犬の発達を阻害しています。
新たな病気を生み出す前に、ぜひ問題を感じたらすぐに専門家に相談してください。
繰り返しますが、犬に問題があると感じられることはとても良いことなのです。
不安に思わずに問題に気づいてよかったと思っていただき、前向きに対処していきましょう。
誰のためでもない、犬と飼い主さんの暮らしのためにです。