犬と散歩中に「さわってもいいですか?」と聞かれることがあります。
丁寧な声かけではありますが、申し訳ないけど自分だったら断ります。
一番の理由は、犬の側にたったときに、触られたくないだろうと察するからです。
散歩中にリードがついていて犬の方は自由に行動することはできません。
相手が近づいて来る事を許可してしまえば、犬には逃げ場はありません。
触りたい人に犬を提供することは、犬が社会に受け入れられるために必要なことのように思われています。
私もそのように思って、犬に受け入れさせていたり、トレーニングの練習としてガマンさせていたこともあります。
それも、あくまで人の立場にたった場合のことで、少しいやなことだけど上手に受け入れさせた方が上手くいくのではないかと思っていたからです。
ですが、今では考え方を改めました。犬の習性に反するようなコミュニケーションを飼い主が許可することは、犬との関係性において不信感になるだけです。犬は動物として理解されるべきだと感じるようになったからです。
犬を触らせたくない理由の二つ目は、犬が絶対に吠えたり噛みついたりしないという補償はないからです。吠える、噛みつくの二つは、犬がテリトリーやスペースを侵されたと感じたときに出る社会的コミュニケーションです。
「犬の体に触れる=犬のスペースに入る」という行動は、犬に多少のストレスを与えます。それが、相手のちょっとした行動や、周囲の他の刺激の追加によって、吠える、噛みつく行動へ発展しないという保障はどこにもありません。
自分が子供のときには、親からこのように教育されていました。
「知らない犬、人の家の犬には、絶対にさわってはいけません。」
「犬が近くにいるときに急に走ってはいけません。」
「犬が食べ物を食べているときに、近づいたり手を出してはいけません。」
犬を見ると「あ!犬だ」と駆け寄ろうとした犬好きの子供だったからこそ、母親も厳しく言ってきかせたのかもしれません。
犬とふれたい、犬と遊びたい子供の私は、母親が犬とどのように接しているのかを見ることが日課となりました。信頼を得ると犬の方から自分に近づいてくれるようになり、少しずつ距離感が縮まっていった記憶があります。
今では、犬を見かけると「触ってもいいですか?」と尋ねてから触るというのが礼儀になっているようです。子供達もそのような教育を学校の授業で受けているようです。実際、小さな子供さんの方が「触ってもいいですか?」と尋ねて近づいてきます。
犬は人が触っても噛みついたりしないやさしい動物であることを子供に教えるための教育なのかもしれませんが、違和感を覚えます。
人と人に置き換えれば、「触る」という行動は特別であることがわかります。
かわいい赤ちゃんを見たとしても「触ってもいいですか?」と尋ねるのは、とても礼儀のない態度です。「かわいい赤ちゃんですね。」といって、微笑みかけるくらいでしょう。
犬の場合には初対面で目を合わせることはしません。対象が他人であれば、まず臭いをとるというだけ、それであいさつは終わりです。
心がふれあう経験や体験、共に生活という長い時間をかけて関係を築いてきたからこそ、そこに「ふれる」という接触を通して得られるつながりがあるのだと思います。
特に、幼少期、もしくは興奮しやすい犬の場合には「触ってもいいですか?」を遠ざけることをお勧めします。
対応としてはこんな返事でどうでしょうか?
「すみません。今トレーニング中なので失礼します。」
「すみません。うちの犬は噛みつくかもしれませんので遠慮してください。」
「すみません。うちの犬は触られるのが苦手です。」
触ってもいいですか?ときちんと尋ねられているのですから、こちらもきちんと断る姿勢は準備したいものです。
そして、少しずつでも「実は犬は触られたがっていない」ということと、ふれあいの本当の意味をみなさんに理解していただけるように、これからも、このことについて話す機会を増やしていきます。
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