ある日の夕方、ヤギのゼットがいつも出さない声を出しているのを聞いて、ダンナくんが様子を見にいきました。
ゼットは鼻から出血しており最初は何が起きたのか分からなかったのですが、どうやら蛇に噛まれたようです。
激しく鳴き体をゆする様子からして、ゼットに噛みついた蛇は毒を持っている蛇である可能性も高いです。
アールの方は平常なので伝染病ということはないかと思いましたが念のため家畜保健所に問い合わせて状態を説明しました。
獣医師の先生は、蛇である可能性が高いが心配だったら連れて来られたらどうかとのことでした。
自然界に存在する動物から攻撃に対してヤギたちもある程度の免疫は持っているはずですが、「見ていられない」というダンナくんが軽トラに乗せて家畜保健所に連れていき診療を受けて戻りました。
傷を見てもらったところやはり毒蛇、おそらくマムシであるだろうということになりました。
帰宅したゼットはよろよろと自力で歩きながら小屋の中に入っていきました。
それから次の日も次の日もまた次の日も、ほとんど動くことがありません。
2回ほど小屋から出たところで地面に伏せていて、帰るときには補助をしたり。
小屋に自分から戻った様子だが頭を奥に向けたままで、回転できない状態で倒れているなどでした。
それでも時間がたつとなんとか頭を小屋の表側に向けており、ゼットにできるのはそれだけで、もちろん草など食べることなどできません。
細い顔が真ん丸になってしまい、目を開けると瞳孔も開いているので黒目が丸くなっています。
「ゼット、大丈夫…」と頭を触っても動くこともありません。
事件があってから3日間全く動くことがなかったヤギのゼットを見守り続けました。
そして4日目の朝、ゼットが小屋から出て草を食べている風景を見ました。
脚はよろよろ、少し収まったかのように見える顔はまだ腫れています。
草を食べていますが上手く食べられないのか食べこぼしたりむしるのにも時間がかかっていました。
それでも淡々と草を食べ続けているゼットを見てホッとし、また偉いなと関心していました。
誰かにすがったり頼っても解決することのない自分の問題を自分だけで抱え、ひたすら耐えて3日間を過ごし、完全いに回復していないのに自力で草を食べ始める。
動物としては当たり前のことなのでしょうが、騒ぐことに慣れている人間のひとりとしては動物の強さを感じる出来事でした。
何としても生きようとする力がこれだけ発揮されるのは、常に自然の中にあっていろんな生き物と対立したり闘争しながら過ごしているから、生きているのが当たり前ではないからかもしれないと思えました。
人に家畜化された動物であるヤギ、でも私たちが与えているのは小屋と塩だけです。
ちなみに、ゼットといつも一緒にいる姉妹ヤギのアールのこと。
ゼットが瀕死の状態にあることでアールも少しダメージを受けるのではないかと観察を続けましたが、アールの方はいつもと変わりません。
ゼットがずっと小屋から出なくても寄り添うこともないし、ゼットに気遣う様子もありません。
山羊たちの間には共感はきっとあるのでしょうが、人のような感情移入がないようです。
この感情移入こそ人と犬の関係を難しくする人の性質ですから、ある程度にとどめておかなければいけません。
ご心配や応援のメッセージを寄せて下さりありがとうございました。
ゼットの完全回復まであと少しです。