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<犬のJ>Jのテリトリー構築の過程と時間について

今年の2月4日に一歳八ケ月で家庭犬として迎えた犬のJ(正式名称はJade)の記録です。

今回はJのテリトリーの構築がどのように進んできたのかについてです。

新しい環境での生活がはじまった犬にとってテリトリーの構築は絶対にするべきことです。犬は無意識のうちに生活圏を構築していきます。

動物にとって生活圏(生活のテリトリー)を獲得するということは、メンタルマップを作り替える作業にもなります。

どの動物にとっても何よりも大切な行動は「巣に戻ること」です。

私はアルコールを飲めないので経験はないのですが、知人がアルコールを浴びるほど飲んでしまって、どうやって家に戻ったのか記憶がないけれど帰宅していた、という話を度々聞いたことたがあります。人間にとっても「巣に戻ること」は命に係わる重要な行動なため、脳が危険を察知したときほど「巣に戻る=帰巣本能」が発揮されるのでしょう。

動物にとって最も大切な帰巣本能も、巣を中心としたマップがなければ使えません。

では、どのようにして巣を構築していくのでしょうか。

Jは成犬になってから家庭が新しくなるという環境の変化に直面しています。

成犬の巣の構築も子犬と同じ手順です。巣ですべきこと、寝ること、食べることを行い、安全に身を隠す場所となるのが動物にとっての巣穴です。Jは室内犬ですから、室内にはJの居場所を作り生活を管理します。食べる場所、寝る場所、休む場所の習慣があれば、これはすぐにスタートできます。

自分のベッドで休憩するJ。後ろはJのリビング用のハウス。



次に大切なのは、巣穴から出て排泄をする場所です。

Jは子犬期から訓練施設に至るまでの期間、一定の音を出して排泄を促す習慣を身に着けていました。Jの場合には「ワン、ツー」です。

ワンツーの合図と排泄行動とはまた別の内容になります。ワンツーの合図が必要となるのは、むしろ生活管理上で環境の変化が生じた時のためであって日常生活に必要なわけではありません。

排泄の合図の教え方は必要性についてはまた別に記載することにします。

到着した翌日のJ、係留して写真撮影をしています。向かって右手が最初の排泄場。



ここに暮らすJにとって必要なのは、排尿、排便をする場=テリトリーの構築です。

犬は自分の脚で行ける安全なテリトリーの最大に遠いところで排尿をします。排便の多くはグループ(家族)で出る習慣のある日常的な移動の最大に遠いテリトリーになります。普通は散歩コースになりますので、散歩途中で立ち寄る公園が排便場所となるのはテリトリーがちゃんとできているということです。

Jの場合には一般家庭とは少し異なります。というのも敷地が莫大に広く、家族で移動する場もすべて自分たちの敷地の中になるからです。ですから、一般的なケースとは少し違うと考えて下さい。それでもJのテリトリー構築に排尿、排便場所は欠かせません。Jはどのように排泄のテリトリーを作るのかを観察しました。

Jがオポハウスに到着してリードなしで自分で排泄にいけるようになるまでの期間を一ケ月間と予測していていました。ところが、実際にJがリードを付けずに排尿、排便を済ませて戻って来るようになったのはもっと短期間、10日間くらいでした。

最初は排泄場になりそうなところへリードを付けて同行する行為を繰り返しました。排泄の出る時間は朝、昼、夕です。特に朝の排泄行動は長く巣に帰った後の行動なのでとても重要です。そのうち補助リードを付けたままリードを持っていなくても最初に決めた排泄場に自らいくようになりました。

そしてこの期間に排泄とは別に私とともにリードをつけて庭を散策する活動を毎日続けました。ところが想定外の困難は、ちょうどJが到着した2月4日から大雪となりテリトリーの構築が難しい空間となったことです。私の移動もいつものようにいかず臭いも変化してしまいます。これが一週間近く続いたことで日々の散策活動のスタートは決して順調とは言えませんでした。

ところがJは、リードを付けずに自ら排泄場に行って家まで戻って来るようになりました。雪がなければもっと短期間で排泄テリトリーを構築できたかもしれません。この期間の短さは、Jのメンタルマップ獲得の速さでもあり、また新しい巣への順応性の高さを示しています。後者の方は新しい人という家族(つまり私とダンナ)への関係構築の速さでもあります。

上の写真はまだ重機があり、Jにはロングリードを付けています。

重機は庭の工事のために置かれていたもので、この時期はまだ工事が完全に終わっておらず庭の利用も難しかったのです。工事が2月終わりに終了すると活動が活発なりました。エントランス広場(自宅のテラス前の広場)をフリーで活動するようになりました。


写真は3月1日のもの、J広場の最期の角の柵が右側に見えています。エントランスの庭の上でこの上にのぼるとテラスからは姿が見えなくなります。これ以上登るときには許可なく進まないようにさせていましたが、このときすでにリードはつけていません。

この境界線がJにとってのエントランスの境界線となりました。


写真は庭の前の工事によって張られたグラスシート(草の生えるシート)です。このグラスシートを含む一体がエントランス広場になります。

ヤギたちのお世話に同行するJと世話をするダンナくん。3月4日



ヤギ小屋へ行くときにはフリーでついてくるようになりました。写真はちょうど自宅に来て一ケ月がたったころです。この日はダンナくんがヤギのお世話をしています。Jが到着して最初の一週間はダンナくんがオポハウス不在で私が一人で世話をしていましたので、私意外の人間とテリトリーを歩く行動が身に付いたころの様子です。

山羊たちとの接触についてはまた別に記載します。

庭の散策コースで犬のJ



上の写真はJ広場からヤギ小屋に向かう少し峠になっているところです。ひとつの分岐点になっています。私がこのあたりに座って休憩することもあるからです。

ヤギ小屋でヤギのお世話をしてぐるっと回って自宅に戻るコースが朝のコースで、左回りだったり右回りだったりします。周り方も少し手前を回るときと山の中腹を回るのに分けましたが、次第に休憩中に山の中腹あたりまでJだけで行くようになりました。

歩いている場所まではヨシとしているのですが、呼ぶまでに少し時間を長くしたときにはちょっと先まで行っているようです。

排泄に関しては、朝一の排便を終えたあとも何か特別なものを察知すると山でも排便をしているのを見ることがあります。まだ回数は少なくいつも同じ場所というわけでもないので観察を続けたいと思います。

こうしてテリトリーを構築してきたJですが、予想を超えて早くしかも広くテリトリーを持ち始めていること、同時に予想を超えて同行する人との距離をとる(離れていく)ということが分かりました。人との距離感については、生活圏を出るときには結束するのをルールとしていますが、生活圏の中では呼び戻しができること、移動時は戻ることの二つができればヨシとしています。

散策時の人との距離感をJがどの程度と捉えているのかについては次回記載します。

フリーで活動できるようになるまでの一ケ月間も、お預かりの犬たちが連日いる状態だったのでそれがどの程度の影響を与えたのは不明ですが、不安定な環境にも関わらずマップと関係を構築していくJの能力を知ることができ、また達成できたことについても安堵しています。

下の写真はリビングのマイベッドで休むJです。夕方まで外で活動してハウスで夕飯を食べた後から私が寝室で寝るまでの間、このベッドでずっと休んでいます。活動量はしっかりとあり豊かな環境のおかげで、夜に騒いだりうろうろしたり要求することもありません。

ベッドで寝る犬のJ