年末年始と唐津市のオポハウススクールで過ごす時間が長くなりました。
山の暮らしから都会の暮らしへと移ったときにいつも感じることがあります。
山での生活で味覚の変化を感じる
久しぶりに福岡に戻ってほっと一息で癒されるのはずのコーヒーが本当に不味い。これは、福岡と七山(唐津市内の山)の二拠点生活の中で、山の滞在時間が長くなると毎度起きることです。
実は、ダンナくん(私の主人の愛称)もこうした話をしていないのに同じような経験をしていました。
「福岡に帰って紅茶を飲んだら不味いんよ…。
それで、開封した紅茶がダメだったんだと思って新しいのを開けて飲んだんよ…。
それでもやっぱり不味いんよ…。
で、水や!って気づいたんよ。」
という事ことがありました。
ただ、水が違うだけで美味しいか不味いかが分かれるなら水だけの問題なのですが、これがそれだけでもないのです。
水の違いだけでないのです。自分の舌が違いのわかる舌=味覚になっているのです。
博多で食べておいしいと思えるものが、七山では不味いと感じてしまうのです。
例えば、博多では食べられるインスタント食品が山では美味しいと感じられません。
山にいるときにはどんどん食事がシンプルになっていきます。
普段からごはんとお味噌汁とお豆腐で、と言ってるのもまんざら楽したいだけではないようです。
他の知覚よりもわかりやすい味覚の変化
山暮らしで変わっていく知覚についてですが、感覚的に一番はっきりと表れるのは「味覚」です。接触行動は大脳の辺縁系が関与する原始的行動なので、最初に変化するのが味覚なのかもしれません。
もしくは、私たち人間が味覚以外の知覚が動物に比べて能力がなさすぎるという理由もあるのかもしませんが、いずれにしても味覚の変化は七山滞在時でもはっきりとわかります。
人工的な味付けのものを美味しいと感じられなくなり、味覚のごまかしがきかなくなってきます。それで、どんどんシンプルなものを食べたくなります。
個人的にはもともとその傾向が強いのですが、さらに加速していきます。
実際に変化しているのは味覚だけでなく、他の知覚も鋭敏になっている気がします。
嗅覚や視覚、触覚も鋭敏化する
空気がきれいな山の中ではにおいに敏感になります。都市空間だったらつねにガスや食べ物や人工的な芳香剤のにおいがするため、臭いに鈍感にならなければ生きづらくなります。
ですが、山は土や草のにおいばかりですし空気の流れで常ににおいが流れていきます。
こんな透き通ったにおいの空間では、少しににおいにも敏感にならざるを得ません。
視覚も変化していきます。
常に視覚を遮られる状態で遠くが見えない都市空間と違い、遠くに動いているものもすぐに気づけるようになります。
さらに、ライトにさらされて鈍化してしまった視覚も、太陽の光や影に敏感になります。
肌の触覚にも変化があります。
ポリエステルなどの化学繊維に対して敏感に反応するようになります。拒絶感が強くなるのです。
鈍感な人間でもこれほど知覚に変化があるのですから、犬だったらもっと変化するはずです。
知覚が鋭敏化するというよりは、本来の状態に戻っているような気がします。
犬の知覚センサーが正常化するとどうなる
自然環境に暮らし始めると知覚が変化するということが犬に起きると、犬はどう感じるようになるでしょうか。ジャンクなドライフードを美味しいと思わなくなるか。
洗剤のにおいに違和感を感じるようになるとか。
犬に尋ねてみないとなんとも言えません。
しかし冷静に考えてみるば、知覚の正常化は脳の正常化です。
正常になる、機能性が高まるというのに悪いということはないはずです。
犬の鋭敏な感覚は都市空間では時として邪魔になることがあるかもしれませんが、それが犬という動物だということを知って受け入れるということの方が重要性が高いのです。
要するに、犬がまともになる空間にできるだけ一緒に出かけましょうねということです。
寒い冬の季節ですが、山の空気は夏よりもずっと透明です。
ぜひこの季節も犬と山にお出かけ下さい。