犬と暮しているほとんどすべての人が、犬の魅力にはまって犬大好きになるのは素晴らしいことです。
ですが、その大好きな犬への愛情表現の仕方によっては、犬との関係がうまくいかないということがあります。
例えば、大好きな犬への愛情表現の一部をご紹介するとこんな感じです。
帰宅してすぐに「ただいまー」と犬を撫で繰り回し、抱っこする。
「大好き」と犬を抱き上げたり抱きしめたりする。
部屋の中ではずーっと犬を撫でていて、始終くっついた状態でいる。
こんなことが日常的になっている飼い主がたくさんいるのだと思います。
しかし、こうした犬との関わり方はあまりにも犬が自分に対して近くにいすぎることで、実際に犬という動物がどういう動物なのかを知ることすらできません。
そもそも、犬が自律した状態で生きているのであれば、人の膝の上に登ってきたり、ジャンプしてとびあがってきたり、飼い主の寝ている上に乗っかって寝たりはしません。
落ち着いている犬であれば、興奮して向かってくる飼い主を上手にいなすでしょうし、飼い主に寄りかかって寝たり、膝の上に上がろうとすることはありません。
犬を動物として客観的に観察していくためには、犬と飼い主の間に一定の距離が必要になります。
先日、犬語セミナーを受講したあとにある生徒さんがいい話をしてくれました。
あるお坊さんのお話では、尊いと思っている仏像は離れて向き合って手を合わせて拝むものであって、近づいてじろじろとみるようなものではないという話だったそうです。
尊敬の気持ちがあるなら、一定の距離を保って見つめるのだということが犬と人の関係だと同じだと思ったとその生徒さんは言われていました。
それは、本当にその通りだと思いました。
一定の距離を保つことが「犬を尊重すること」だと気付いている飼い主さん、さすがにグッドボーイハートで共に長く学ばれているだけあるとありがたく思いました。
犬と少し距離を保って生活をすることを誤解されている方がいます。誤解とは、犬を撫でまわしたり、抱っこしたり、体に乗っけたりしなければ犬を可愛がる行為がないと思われていることです。
これは大きな誤解であって、むしろ犬を大切に想い、尊重する気持ちがあるなら、むしろ多少の距離をとって犬が何をしようとしているのかを見守る(観察する)姿勢になるはずです。
犬と飼い主の距離が近くなりすぎるということは、犬は行動の範囲が狭いと思い始めているということです。
犬の飼い主に対する執着行動は、犬の生活環境、子犬期の過ごし方、飼い主の価値観で決まります。
犬が大好き、犬のことをもっと知りたい、犬と良い関係を築いていきたいと思うのであれば、少し犬と距離を置いてみましょう。
私ももちろん犬が大好きですが、犬を抱き上げたり抱きしめたり、わさわさと撫でたりはしません。
本当に大切な存在であるからこそ大切に見守っていきたい、犬はそんな存在です。