内弁慶といえば、外では弱弱しかったりおとなしいのに家の中では強がりや威張っている人のことをいいますが、犬にも「内弁慶犬」というのがいます。
内弁慶な犬という表現はどなたにもわかりやすいようです。
外ではびくびくと他の犬をみると後ずさったり、怖がって吠えたりする犬。
外では飼い主の足元にじっとしていて「お利口さんね」といわれる犬。
そんな犬が、わが家の中ではやりたい放題であることが多々あります。
外でおとなしい内弁慶犬は、飼い主に飛びついたり、家具に手をかけたり、ソファにかってに座っていたり、外の物音に吠えたり、走り回ったりと家の中では好き勝手放題。
まさにわが物顔で、飼い主の家の中のものも飼い主そのものも、自分のもののごとく占領してしまいます。
内弁慶という表現はそもそもは人の性格を表す言葉なので、多少は擬人化しているような表現になりますが、飼い主さんに対する伝わりやすさから私も使うことがあります。
内弁慶犬の犬としての本来の性質は、臆病だけど自己主張は強いタイプ。
ただの臆病で引っ込んだままということではなく、臆病だけど前に出る性質を持っているということです。
臆病という言葉も人の性質を表現する言葉なのでしょうが、人を含む動物はそもそも臆病であることが普通なので、内弁慶犬は単なる臆病犬とは違います。
社会化が発達していない状態、置かれている環境に対して順応しにくい状態にあるという言い方の方が動物としてはきちんと伝わるでしょう。
人と距離をとって生きている野生動物は人や人社会に対して臆病であることは当たり前のことです。
ですが、それが人と暮らすことが当たり前になっている犬という動物にも感じられるとすれば、犬が暮らしている人社会に対する社会化の問題ということになります。
子犬期に特に重要な社会化という学習が遅れたり、社会化が進みにくい環境の中に犬が暮らしていると、犬の社会化が進まないという結果として犬の行動に臆病さがみられるようになります。
同時に、その社会化が未発達の状態は、彼らのフラストレーションとして室内で爆発することになります。それが室内での走り回り行動や無駄な吠えです。
社会化が進まないのは、環境が都市化しすぎているということは言うまでもありませんが、田舎ののどかな環境の中でも社会化に遅れがみられる犬もよくいます。
犬を室内に閉じ込めている時間が長すぎる。
犬をひとりにしている時間が長すぎる。
多頭飼育の場合でも犬と犬の関係性がうまくいっていない。
そして何よりも、犬は飼い主と安定した関係を築くことができない状態にあるということこそ、内弁慶犬誕生理由の上位としてあげるべきでしょう。
そんな内弁慶犬のことを先日生徒さんが「内弁慶犬、ダサい!」と切り捨ててくれました。
私は使うことのないワードですが、なるほどこういうのがダサいっていうのねと納得のお言葉でした。
ダサい内弁慶犬をそろそろ卒業しましょう。
飼い主との社会的関係作り、毎日の一歩、楽しみつつ確実に、よろしくお願いします。