犬の社会化学習とは
犬の社会化学習は、犬が生きるために絶対に必要な学習です。犬の社会化を簡単に説明すると「犬が人との暮らしの中で安心な気持ちでリラックスして生活できるようになるようにするための学習」ということです。
社会性のある犬とは、日常的な生活の中では特に不安を抱えることもなく、安定した生活を送っています。
社会生活が安定した社会性が高まった犬は、吠えたり、咬みついたり、興奮したり、マーキング(トイレのにおいつけをしたりすることはありません。
ところが、社会性が育たずに不安を抱えやすいような精神状態になってしまった犬は、日常的に、吠える、咬みつく、マーキングする、興奮してとびついたり走り回る、などの行動をしています。
不安を抱えやすくなってしまった犬は、社会化がうまくいかなかったということです。
犬の社会化は与えればいい、は大間違いの理由
この犬の社会化学習ですが、実は大変間違えられていることがありますので警告します。それは、犬の社会化とは経験不足によって起きるのだと思い込まれていることです。
経験をさせないと学習が進まないというのは当然のことです。
ですから、ペットショップに長い間おかれることになり、生後6ケ月の犬を購入すれば、当然のことながらその生後6ケ月の犬は何も社会化学習をせずに成長してしまったことになります。
これはこれで問題ではあるのですが、逆の問題も発生します。
生後2ケ月の子犬を自宅に迎えて、犬に社会化学習をさせなければいけないという情報だけを飼い主が持っていたとします。
・来たときから抱っこで人になれさせようとする
・来客を呼んで子犬を触ってもらってなれさせようとする
・公園に抱っこして連れていき、他人に抱っこしてもらって慣れさせようとする
・公園に連れていっていろんな犬にあわせようとする
・犬の幼稚園に入れて他の犬と過ごさせるようにする
・先住犬と室内で走り回らせている
・ドッグランに連れていっていろんな犬にあわせる
・音に馴れさせようとしてテレビを見せるようにしている
ここに挙げたすべての行動は、犬の社会化が失敗してしまう原因になります。
犬の幼稚園についてはプロのいる現場ではありますが、ただ犬に合わせれば犬は犬に対して社会化するのかというとそうではないのです。
人に置き換えてもわかるのですが、みなさんはみんな幼稚園に入るはずなのですが、幼稚園に行けば、人と上手に関われるようになったかというとそうではありません。
幼稚園に行っても人とのコミュニケーションが苦手の人はたくさんいます。
幼稚園でどのような経験をしてきたかということが重要であるということです。
この「社会化の与えすぎの失敗」ですが、私も育成という意味では同じような間違いをしたことがあります。
それは、犬ではなく植物の例になります。
植物を育てた経験のないわたしは、種を植えて、芽が出てきたとしても、何かを与えなければいけないのではないかという不安に駆られるのです。
水を与えなければいけないのではないか、肥料を与えなければいけないのではないか、太陽にあてなければいけないのではないか、と何かを与えることはとりあえず良しとしてしいます。
ところが、植物は与えすぎるとうまく育ちません。
植物が安心して育つ環境というものがあって、この植物にはこのような環境が適しているというものがあるのですから、それを人工的にどのように準備する必要があります。
つまり、犬の社会化も同じなのです。
犬になんでも与えれば犬はそれに慣れて安心すると思ったら大間違いです。
犬が安心だと思っていないのに自分の前に他の人が近づいてきて体を触ろうとしたら、興奮してとびつくようになり社会化(安心)を得ることはできないのです。
子犬の社会化を成功させるための方法とは
私の植物育ての失敗例にあるとおり、子犬のうまく社会化させるためには、子犬が安心できる環境を整えるというところから始めなければいけません。それは、いきなり外に連れていって他人に会わせることでもないし、犬の幼稚園に通うことでもありません。
子犬といっても犬という動物なのです。
犬という動物が本来ならどのような環境で安心して生活をしているのか、犬の習性やコミュニケーションをよく学び、人工的にその環境を整えていくこと、これが子犬の社会化のスタートです。
日本では犬の室内飼育や集合住宅での飼育も当たり前になりつつあります。
しかし、あまりにも早い速度で犬の飼育環境が変化してしまい、犬の遺伝的な変化はそれに追いついていません。
良い意味で、どの犬もやはり自然の中の動物、犬なのだなと感じることが多々あります。
犬を犬だと理解して、私たちの暮らしの中で安心できる生活をしていけるようにするために、子犬を迎えた方は早目に良い社会化トレーニングをスタートさせてください。
また、社会化に失敗して成長してしまった犬たちも、できるだけ早い年齢で「社会化学習のやり直し」をされることをおすすめします。
飼い主のためでもあり、なによりも犬のために必要な学習なのです。