前回のブログ記事で、犬が自分の異変に気付いても容易には行動できないということを書きましたが、今日はこの記事に対する追伸です。
犬がくるくる回る行動は前庭疾患かそれとも興奮行動なのかを見極める。
まず、犬が自分の中の異変、たとえば自分の体がいつもと違うという異変に対して素直に反応する動物だということは犬を飼った経験のある方なら理解できます。
今日も子犬ちゃんの訪問レッスンに行ったところ、朝からクレートに入ったままで出てこないと飼い主さんが言われました。
私が入室するとすぐにクレートから出てきていつもとおりのご挨拶をしましたが、いつもよりは少し控え目です。
朝ごはんを全く食べずに、クレートの中に引きこもっていたらしいのです。
状況を伺うと、どうやら昨晩いつもより多目にガムをもらったようで、その分量からするとかなりおなかに負担がかかったのでしょう。
おなかの調子がいつもと違うと感じた子犬は、クレートである巣穴に引きこもり自分をケアする行動を選択したのです。
犬が少し具合が悪いときに巣穴であるクレートなどに入って丸くなる行動をみたことがあることもあるでしょう。
これは、犬が自分の異変に対して自分にとって必要な行動を選択したということですし、同時にその選択肢が環境の中にあったということでもあるのです。
もし、子犬が朝ごはんを食べないことに心配した飼い主が、すぐに病院へ連れて行ったり自分の膝に抱っこし続けたりしてしまえば、子犬には自分の選択肢はなくなってしまいます。
犬は人に飼われることで、自分の周辺の環境を整えることができなくなってしまいましたが、それでも自分にとって必要な行動をなんとか選択しようとしているのです。
自分の調子を整えるために必要な基本的なものは、ゆっくりと休める居場所、静かな空間、安心して隠れていられる場所、きれいな空気、そして犬なら土も欲しいですね。
オポもときどき庭の土の上に腹部を下にしてじっとしていることがありました。
そうすることが今のオポにとって必要なことなのだろうと、いつもそれを見守るようにしていました。
簡単には使えませんが、なんだか癒しを求めているような感じがしていたからです。
どんな個体も完璧ではありません。
どんな人も犬も、それぞれに弱点となる心や体を持っています。
バランスを崩したらそれをいかに早く回復させるかということが大切なのかと思います。
そのために必要な場所や時間を犬が自分で得られるのか、もし得られないとしたら犬は葛藤状態に陥ってしまうでしょう。
葛藤とはどちらへ進んだらいいのか分からないという状態のことです。
行き場を失ったエネルギーが攻撃性や常同行動を引き起こすこともあります。
犬を取り巻く社会は、人の社会が複雑になった以上に複雑化しています。
犬が異変に気付いて自律的にする行動を尊重しながら、改めて犬の選択肢が増える環境を整えていけば、以前よりは犬が生きていく環境が豊になったといえるでしょう。
一度にたくさんはできません。
まず何か一つずつからスタートです。