前回のブログ記事で犬の「常同行動」について書きました。
このタイミングで犬が虫を追う行動についてのご質問があったので、あわせてこちらに説明します。
犬が虫を追う行動は、犬のハエ追い行動と同じ部類の行動です。
実際には虫やハエはいないのに、犬が虫を追っているような、ハエを追っているような行動をします。
対象のないものに対する真空行動が繰り返し起きる常同行動です。
飼い主さんから見ると不思議な行動なので見逃されている方も多いのですが、犬の行動観察に関心のある方や、犬の行動に興味を持っている方が気づかれることがあります。
室内でこのような行動をしているのですが…。
と動画を見せていただいたのですが、それは犬の虫追い行動・ハエ追い行動でした。
実際にはないものを追うこの行動のパターンは犬の神経症と結びつく可能性もあるため飼い主は、「犬が何かの病気にかかっているのでは」「犬の脳に何か障害があるかもしれない」という不安を抱かれる場合もあります。
しかし、犬の真空行動が出たからといって、必ずしも犬が障害や病気を抱えているわけではありませんので慎重に経過を見る必要があります。
犬の真空行動は転移行動や転位行動と同じように、犬が葛藤したときに出現する行動でもあります。
犬には葛藤で生じる行動がたくさんあります。
飼い主にとっては犬に葛藤などが生じるということ事態が信じられないかもしれません。
犬でいう葛藤とは犬の欲求が十分に満たされないことで起きる葛藤です。
というと、納得されるのではないでしょうか。
犬が必要とする欲求が十分に満たされていると自信を持って言えるでしょうか。
犬の欲求とは、犬が犬という動物としての習性を発揮することです。
例えば、犬には性的な欲求がありますが、これは不妊手術でその欲求をコントロールすることができます。
しかし、それ以外の犬の本能的は欲求はほとんど満たされていません。
そのために、犬は欲求不満に陥り、葛藤行動を生じるようになります。
その葛藤行動のひとつがハエ追い行動という常同行動なのです。
犬が神経症を抱えていると判断する前にまだできることがあります。
犬の欲求不満を解決するための策を考えてみることです。
ちなみに、山の学校で犬のお預かりクラスをしているときには、普段その犬が家庭内でしている常同行動を見ることはありません。
実際に虫を追っていることはあっても、いない虫を追うことはありません。
犬が病気であるかどうか、犬が障害を抱えているかどうかを決める前にやってほしいことは、犬を自然の環境の中でゆっくりと過ごさせることです。
環境を変えて犬の行動を観察すること。
これも飼い主が犬を知るためにできる大切なことです。