先日ブログに受講生の声を寄せて下さった生徒さんと話しているときに重要な話題に触れられました。
その話題とは「感想文には入りきれなかったけれど、一番悩んだのは子犬のはるをいつ外に出すのかということでした…。」ということでした。
子犬をいつ外に出すのかという悩み
多くの方がそうであるように、子犬のワクチン接種が完璧に終了してしまうまで待つと、ワクチンプログラムにもよりますが、長い犬になると生後5ケ月まで屋外には出せないということになります。ところが、室内で生活している子犬をいつから屋外で活動させるのかは、子犬の脳の発達つまり子犬の社会化に直結しています。
子犬の脳の発達のしくみや社会化のしくみについて考えるとき、子犬の脳を良い状態に整える刺激のない室内では、子犬の適切な社会化が実現しないことは考えればわかることです。
ワクチンが終わるまで外に出せないという考え方は10年前に比べるとずいぶんと弱くなってきました。
なぜなら子犬に対するワクチン接種が始まった当初は、3回のワクチン接種が終了して1週間が終わるまで絶対に外には出してはいけないという指導が起きた結果、犬の社会化形成が遅れてしまい吠えたりかみついたりする犬が増えてしまったからです。
この問題が表に出始めた結果が間違った「抱っこ散歩の推奨」につながってしまったというまた違う問題を発生させました。
しかし、一方でワクチンの回数が2回となった病院もあり、以前よりは少し早めに子犬が外に出るチャンスを得られましたが、それでも子犬の社会の機会としては遅すぎます。
感染症を恐れて子犬を室内に閉じ込めた結果、子犬の脳の発達や精神の発達になんの影響も及ぼさないというなら、好きなだけ室内に閉じ込めても問題ありません。
子犬を出す時期を問題にするのは、子犬の性格形成、脳形成において決定的な影響を与えることだからこそアドバイスする側の私としては引くに引けないところなのです。
ということで、はるちゃんの飼い主さんと「子犬を外に出す時期」について私が早く出すようにといい、飼い主さんが迷うという時期がありました。
結果としてはるちゃんの飼い主さんははるちゃんを自分の計画よりも相当早い時期に適切な場所で過ごさせ始めたのです。
結果として、はるちゃんの社会化形成は進み始めました。
飼い主さんは「この年齢まで屋外に出さなかったとしたらと今考えるとぞっとします。」と言われいました。
私が子犬の屋外活動を開始する時期についてなかなか譲らなかった理由がわかってくださったようです。
いつも子犬を見るたびに「この犬がこうしてこの環境の中で社会化を形成するのか」と考えるときに、やはり同じようにぞっとしてしまい尽くす手はないのかと悩むことしばしばだからです。
子犬のワクチン接種のこと
子犬のワクチン接種は狂犬病予防ワクチンのことではなく、感染性の高い犬の病気の複数をワクチンとした混合ワクチンのことです。数の少ないものだと3種から多いものだと9種まであります。(数はもっと増えているかもしれません。)
この中で子犬期に感染しやすい病気はジステンパーやパルボウイルスでしょう。
病気を正しく恐れることはとても大切なことなのですが、私たちも今感染症と戦っている最中なので言えると思いますが、正しく恐れることとただ恐れることには大きな違いがあります。
他のワクチン接種と同様に、子犬にワクチン接種をしても感染する可能性はゼロにはなりません。
ストレスにより免疫力が低下すれば子犬は病気にかかりやすくなります。
ではストレスにさらさなければいいのでしょうか?
だとしたらガラスの入れ物の中にいれて子犬を飼育しなければいけませんね。
むしろ、ストレスにたいする耐久力を持たせることで子犬の免疫力を上げることができます。
ワクチン接種をして子犬を室内に閉じ込めて子犬を守ってしまっても、子犬の脳は発達を阻害され、子犬期に発達の機会を失った機能性の低い脳をもつ犬になってしまいます。
今子犬が目の前にいるなら
子犬についての質問を上げます。子犬は日光に当たっているでしょうか?
子犬は風にふれているでしょうか?
子犬は土の上を歩いているでしょうか?
子犬は草の匂いを嗅いでいるでしょうか?
子犬は虫と遊んでいるでしょうか?
子犬は空から雨が降ってくることを知っているでしょうか?
子犬は刻刻と天気が変わっていくことを知っているでしょうか?
どれも子犬の社会化に必要な素材です。
「犬の社会化ってなに?」
もう一度考えて下さい。