グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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冒険家の本を読んで「犬の育て方は愛情だけではうまくいかない」こと

本を読む一年の今年の一冊「極夜行前・角幡唯介著書・文芸春秋出版」を読み終えました。

著書の角幡唯介氏は探検家として大変有名な方です。

この本はカナダの北極圏の果ての果て、私には到底想像もできないような過酷な土地を探検する「極夜行」の前についてつづった本です。

冒険家に対するあこがれとこの本の一部が「犬を育てる」という内容であったことから読んでみました。

極地に向かうための準備、できるだけ機会を使わずに人としての能力に挑戦するアナログは手法には驚きと感嘆しかなく、わからない内容も多くて想像もできないほどでした。

読書の目的となった「犬育て」ですが、極地を移動するための手段として現地のイヌイットからそり犬から繁殖された若い犬を一頭買い求め、自分との関係を作りながらそりを引くことを教えてつつ極地を移動する予行練習に挑むという内容でした。

予行練習といっても命かけの極地の移動です。

犬はまだ未熟で人に服従もしない、食べ物を見つけるために手伝うわけでもない…。

そりを引くことすら拒否をする、自分の思い通りにならない犬に対してどのようにしたら犬が自分のいうことを聞くようにできるのか混乱する著者の姿がそこにありました。

自分がよくできたと思うときにはほめるのだけど、できていないというときには叱る。

このままでは死ぬのではないかと思うときには、自分の感情を思いっきり込めて叱って犬の方に理解を求める方法。

犬がいなければここでは生きていけない、移動は続けられない。

でも犬がどのようにすれば自分のいうことを聞くかどうかわからない。

犬に対する愛情だけは伝わってくるのですが、残念ながら愛情だけでは犬は役立つ犬にはならないのです。

ただかわいがり餌をあげて、あとは自由に過ごしていいよという昭和以前の放浪犬と同じように接しても、使役犬としては十分ではないということです。

その後、この犬はイヌイットの元に戻りそり犬のグループに入れられて、そり犬としての成長を果たしたことも書かれていました。

愛情では育たなかった犬、素地はあったようでそり犬というグループの中で犬から学んで身に着けた使役の性質、間に合ってよかったです。

大切にしたこの犬を連れて実際の極夜にのぞまれるこの本の続きもまたいつか読みたいと思いました。

犬育てはあくまで「愛情ベース」犬に対する思いや愛の強さが伝わってくるものです。

ほめたり叱ったりと、感動する方は感動するかもしれません。

またほめたり叱ったりして犬に対する愛情を表現できることは人としての喜びであると思います。

現実的に今の日本で犬を育てるためには、このスタイルは通用しないのです。

犬は一定の管理の元で飼うことが義務付けられているこの日本での犬育て。

犬に人を理解するように求めることの前に、まずはこちら人の方が犬に対する理解を学ぶことの方が先です。

それが効率が良くお互いにストレスの少ない「犬の育て方」です。

角幡氏の犬に対する接し方を否定するつもりはありません。

何かを極められる方は、他の分野でも気づきが早いからです。

犬は人の間違いをいつか許してくれる可能性が十分にあります。

そうでないとたくさんの間違いをおかす人との暮らしは苦しいばかりです。

一緒に生きるか死ぬかなどと、そんなパートナーはなかなかいないのです。

それこそが人と犬。

犬はファンタジーではないと教えてくれる本でした。