同じ欲求を犬も持っていると思うからこそ、犬が動いている、走っている、飛び上がっている姿を見ると「犬が走って喜んでいる」と単純に見てしまうようです。
犬が人に飛びついていくのを見て、楽しそう喜んでいるのは本当に犬が楽しいからだろうか?
もう一度「犬の行動について」考えてみましょう。
●人が活動することの本来の楽しみを考える
人は自分が健康であれば、体を動かして作業や活動や運動をすることを楽しめる動物です。体を動かすことが困難になってくる初老の始まりでさえ、自分のできる範囲で活動をしたいという欲求を持ちます。
先日訪問クラスの際に、犬の状態を説明するにあたりスポーツを例に挙げて話ました。
「何かスポーツをしたことはありますか?」
その生徒さんは学生時代に卓球部にいたということで話が盛り上がりました。
実は私も中学生のときに卓球部に所属しており、毎日卓球をして帰宅するのが日課だったからです。
スポーツを通して活動をすること、スポーツを通して戦うことは、自分をかなり刺激します。
「できないことができるようになる」という身体の変化に加え、試合に臨むという闘争心、仲間と競うという競争心も含めて、心身共に自分がより良い方向へ進化することを感じられるからではないかと考えます。
●スポーツは活動性を高める以上に規則性を学ぶ機会になる
しかし、スポーツという活動はただ活動して興奮するための機会ではありません。
戦って攻撃性を引き出すための活動でもなく、むしろ攻撃性を上手にコントロールする機会を持つこと、体の機能を高めることで余裕をもって行動できるようになることを身に着けることができます。
最も大切なことは、規則性を身に着けることができるというのが一番の自分にとっての利益になります。
規則性といってもいろいろとあります。
競技を行う上で自分の中に課される規則
団体行動の中で自分の中に課される規則
規則を守ることができるから成り立つ攻撃性、それが安心できる活動です。
活動を通してワクワクしていくことができたのは、あくまで安心できる社会的なグループの中に入っていることが前提なのです。
そのため、部活などでいったんこのルールが崩れてしまうと、攻撃性に襲われるような気持ちになり自死に追い込まれることになるのでないでしょうか。
●犬は「社会的な動物」だからこそ、社会的に傷つくこともある
話を犬のことに戻します。犬も人と同じように「社会性の高い」動物です。
みなさんがそう思っているからこそ、自分の犬を他の犬や人と関わらせようとしているのです。
もし自分が飼育している動物が「ニシキヘビ」だったとしたら、同じ蛇同志だからといって突き合わせたり、来客になでてもらいたいなどと思うこともないでしょう。
みなさんと暮らしてる犬は、社会とのかかわりを楽しめる犬だということは間違いないのですが、同時に社会とのかかわりによって傷つき精神的に追い込まれることもある、逆の状態になってしまうこともあるのだという見方も必要なのです。
●ルールのない犬の社会的活動は興奮行動や社会的な対立になる
犬が他の犬は人と社会的な関わりを持とうとする動物だということは間違いないのですが同時に関わることでストレスもかかえてしまうということをまず理解する必要があります。特に犬と犬の場合には、犬の習性をいう遺伝子情報に組み込まれた規則があります。
それはまさに犬の世界に規律ともいえるものです。
この規則にのっとって、犬たちは関わりを持つ、関わりを拒否する、攻撃する、逃走する、闘争するなどの他の犬に対する行動を決めています。
規則があればまだよいのですが、無法地帯の中では混乱を生じるいわゆる「パニック」という状態になってしまうこともあります。
冒頭の、走り回る犬、飛び上がる犬の多くはこの「パニック」状態に陥っていることが非常に多く見られます。
それは、決して人が活動を通して楽しいと感じている状態ではないのです。
ルールのない無法地帯が生む「パニック」を表現する行動、それが犬の走り回り行動や飛び上がり行動につながっていると考えてみてください。
楽しんでいると思った犬が、パニックを起こしているなど真逆に考えることはなかなか難しいことだとは思いますが、冷静にそう考えると他の行動にも辻褄があいます。
たくさんのことをブログでお伝えしたいのですが、なかなか限界があり難しいこともあります。
みなさんの疑問に集中してお答えするには直接対面するクラスを受講していただくことしかその機会がありません。
社会状況からして犬語セミナーの開催は少しあとになりそうです。
犬のことにもっと疑問を持って行動を科学的に分析するチャンスをたくさんの飼い主さんに持っていただくためのプライベートクラスを、できる範囲内では開催しています。
たくさんの本、たくさんのユーチューブの動画、SNSのイイねの写真に惑わされず自分で考える時間をもってください。
犬とのすばらしい時間が、皆さんの人生の中で最高!の時間になることを願っています。