「ふるさと」という歌があります。
若い人でも小学校では習うでしょうからみなさん口ずさむことができるでしょう。
「うさぎおいしかの山…こぶなつりしかの川…」
うさぎを追ったりふなを釣ったりしたことが懐かしい年齢って今の80代以上でもなかなかいないかもしれません。
私たち人間が懐かしいと感じられる風景は決して自分が小さいときに見た風景だけではありません。
山に広がる森林や棚田を一度も見たこともない人でもなんとなく心が落ち着くのはまだどこかにこの風景が自分のDNAの中に入っているからでしょう。
犬の場合にはなつかしい臭いの記憶をたどります。
犬にとってなつかしい臭いとはどのような臭い、なんの臭いだと思いますか?
やっぱり土のかおり、緑のかおり、山の風のにおい、川の音、木々の臭いにおい、
そして山に住む野生動物や昆虫たちの発する臭いではないでしょうか。
小さな人間の部屋で生まれた犬が、一度も土を歩いたことのない犬が、
なつかしいと感じる臭いのする風景に接する機会を大切にしてあげてください。
それはかれらのDNAの中に入っていて、自分が何者であるかを取り戻すことのできる素材なのです。
福岡の都会で家庭訪問のドッグトレーニングをしているのに、七山という自然あふれる場所の学校を手放さずにいるのはこうした理由があります。
自然が好きという単純な理由で、この土地や家を維持するための莫大なエネルギーを投入うすることなどできません。
犬たちの記憶を呼びさますためにできることを最大限にする。
それが日々の都会の犬の生活をぎりぎりで支えていることになると思います。
今年は七山の尾歩山に山椒の実がはじめてなりました。
山の手入れをはじめて12年間。長い道のりでした。