犬は鏡の中に映る自分にどう反応するのか?
どの家庭にも鏡があります。
その鏡に対して犬がどのような反応をするのかを見たことがあるでしょうか?
犬は鏡の中の自分を自分だと知ることができるのか?
鏡の中の対象の認識は、動物の認知力に関連する話題です。
認知力をもっと詳しくいうと「犬がどのような世界を持っているのか」を決めているということです。
実際に今、みなさんの犬の前に少し大きな鏡を出して犬の姿が映るようにしてみると犬の反応はすぐに知ることができます。
反応は二つ
1、鏡に映った自分(犬)の姿に関心がない
2、鏡に映った自分(犬)の姿に関心を持つ
鏡に映った犬の姿に反応する方が認知能力が高いと思うでしょうか?
これは逆なのです。
実は鏡に映った犬の姿に反応しない犬の方が正しく世界を把握しています。
鏡の中に映る自分に反応しない犬
犬に鏡を見せたときの反応には二つがありますが、ひとつめの「鏡に映った自分の姿に関心がない」方の犬は、認知力が普通=正常に機能しています。
犬は人と違って鏡の中の自分の姿を自分だと認識することはできません。
自分の姿が映った鏡をはじめはのぞき込むように見た犬が、その後鏡を無視するようになれば「鏡に関心のない犬」の方に入ります。
鏡の情報には関心がなくなり、同じようなミラー現象のおきる反射するものに対して映る自分の姿にも反応しなくなります。
正常な知覚をもつ犬で他の世界に認知に関しても正常に知覚していくでしょう。
鏡の中に映る自分に反応する犬
次に二つ目の反応を示す犬「鏡に映った自分の姿に関心を持つ」場合です。
犬が鏡の中に反応する行動としてどのような行動かを確認していきます。
そのほとんどは、吠える、じっと見る、後ずさる、ゆっくりと近付くといった行動です。
これらの犬の行動は「警戒行動」と「闘争行動」です。
いずれも鏡に映った犬の姿を自分ではなく他の誰かとしてとらえているために起きる行動です。
つまり2つ目の反応でも犬は鏡の中に映った自分を自分だと認識することはないということになります。
鏡の仕組みを理解できない犬は知能が低いのか?
犬は鏡に映った自分の姿を自分だと知ることはありません。
これは犬の認知能力が低いからではありません。
犬と人の知能を比較するときに、人にできることで犬にできないことがあると「犬は人よりもバカ」だと思う人もいるかもしれません。
種としての知覚機能の違いによるものなので、犬が鏡の世界を認知しなくてもそれは犬が人よりも劣っているということでもないのです。
学者によってはいろいろな判断の基準があると思いますが、私はそう思っています。
鏡という道具は人の必要性に応じて人が作った道具です。
鏡などという道具を人が作って使っていること自体で人は賢いなとは思います。
でも犬の方は鏡という道具の必要性を感じていないのです。
自分が相手にどう映るのかということに対して関心がないからです。
自分と他者とのみかけの違いにも興味がありません。
足の長い犬と短い犬がいたとして、自分はどうしてこんなに足が短いのだろうと考えることもないのです。
それが犬の世界であり、その世界の素晴らしさというものが存在しています。
こんな小さなことですら違うのですから、犬の生活にとって何が楽しいのか、その楽しみが人と同じものであるかどうかなど分かるはずものないのです。
分からないからこそ犬を観察し行動を見て分析して「こうではないか」という仮説を立てることをただひたすらに繰り返しています。
そうして少しでも犬の世界に近付いたときに犬好きの私はうれしいと感じてしまいます。