本当に不思議な光景を見ました。
その夜、お預かりの大型犬ちゃんがサイズのわりになかなか排泄をしてくれないので、庭に長めに係留して排泄するのを待っていました。
人が近くにいると興奮してしまう犬ちゃんの排泄チャンスために、室内に入って窓から様子をうかがっていました。
鼻を鳴らしていた犬ちゃんが山の方をみて「ウー、ワンワン」と吠えています。
ああイノシシたちが庭の境界の向こうにあるささやぶの中を通過する時間だなとライトを照らして警戒しておりました。
吠えていた犬ちゃん、急に向きを変えて前傾姿勢をとっています。
何かの動物が犬ちゃんを横目にみながら歩いています。
ちょうど私と犬ちゃんの間を、犬ちゃんをみながら歩くような状態になりました。
私は室内にいて人の気配に動物は気づいていません。
そしてよく見ると、本当にびっくり、それはキツネではありませんか。
キツネは走り去るわけでもなく、本当にゆっくりと犬をみながら家の横を歩いて坂の方に消えていきました。
ところが、しばらくするとまたテラスのライトが自動点灯しました。
みるとまたそのライトの下にキツネがいます。
さっき歩いたのとは反対方向にいるのです。
さっきのキツネがぐるりと回ってきたのか、それとも新しいキツネが近づいてきたのか、犬ちゃんもじっとみて少しうなっていますが、キツネの方は緊張した感じもなくまた消えていきました。
犬とキツネはどちらもイヌ属イヌ科の動物でとても近い関係です。
あくまでも人間が定義づけた関係なので、彼らにとってはどうでもいいことですが、食べ物や行動のパターンや体の発達や使い方がかなり似ているのです。
警戒心が高くタヌキやアナグマのように簡単に姿を現したりはしません。
七山のこの庭でもキツネをみたのは指で数えるくらいです。
イノシシよりも圧倒的に少ないのです。
キツネの犬に対する堂々とした態度をみて、彼らキツネにとってイヌとはどのような位置にあるのだろうと考えてしまいました。
野生動物と飼育される動物、同じイヌ科の動物。
食べ物を自分たちでとっている動物と、人に与えられる動物。
ゆっくりと行動するキツネと、興奮して騒ぎやすいイヌ。
生きている時間がどのように違うのだろうかと深く深く考えました。
犬も本来ならもっとゆっくりとした穏やかな動物です。
キツネのように美しく優雅な動物なのではないかといつも思っています。
キツネが教えてくれること、ちゃんと受け取っていきたい。
野生動物たちがとても身近にいる七山でお預かり犬ちゃんたちとの年末が始まりました。