・美人を三度見するオス犬
犬のいろんな行動を毎日繰り返し見ていますが、これってどうなの?と思う感情に働きかける行動は特に鮮明に覚えているものです。
その一つが「美人から視線を外さないオス犬」でした。
このオス犬くんですが、美人が通ると突然反応を示してその方向をジーっと見つめているのです。
見たところその美人の顔の部分に焦点があたっているように見えました。
一度ではなく、なんども同じように美人らしき女性に三度見で反応を示します。
この行動を見たのは私だけでなく、このオス犬くんを知る人であればみんなこれに気づくほどあからさまでした。
このオス犬くんですが家庭犬とは少し違う環境にいました。
私が訓練所に勤めていたときのモデル犬として街頭に伏せていることが多かったのです。
しかも繁殖犬としても優秀だったので、訓練所の犬としては珍しく去勢手術をしていないザ・オス犬でした。
性質も安定していてメス犬によりつくような行動は一切ありませんでした。
むしろメス犬たちの方が発情期になるとそのオス犬くんに近付いてアピールする行動をしていました。
そのアプローチに対してもこのオス犬くん、ほとんど無視していたのです。
・臭いこそ真実、それが犬の世界
そのクールなオス犬くんが街頭の美人に反応していたのです。
普段クールな表情が多かったので、美人にロックオンしたそのオス犬くんの表情は格別わかりやすいものでした。
ロックオンした相手が「美人」だと評価されるのは、その辺にいるだれもが「あの人美人よね」と認める美人だったからです。
どうみても街中でかなり目立ちます。
歩き方もスマートで「私を見て」といアピールも満載な感じで自信のある美人さんたちです。
美人とかイケメンとかいうのは人の間ではある程度好みの問題もあります。
オス犬くんの好みの美人に反応しているかとも思ったのですが、犬は視覚的な情報に惑わされることがありません。
臭いこそ真実。それが犬の世界です。
このオス犬くんが反応する美人さんたち、おそらく相当のフェロモンを出しているに違いありません。
フェロモンとはホルモンの臭いということで、女性ホルモンが満載だったらそれがフェロモンという臭いの成分となってその人の周りを囲むわけです。
そのフェロモンに引き付けられて罠にはまってしまうこともあるのは原始的な昆虫の世界でもよくあることです。
美人さんは自分が美人であることを知っていますので、自然とオスを引き付けるためのフェロモンを出すことができるのですね。
・なぜ犬なのに人の美人にだけ反応するのか
まんまとそのフェロモンにひっかかったオス犬くんですが、ではあの発情期に無視されているメス犬ちゃんたちはどんな位置にたっているのかと不思議です。
フェロモン臭は犬も人もある程度は同じものですが、種が異なれば遺伝子を残すこともできないのであって、引き付けられる意味がないからです。
動物は価値のないことも無意味なこともするのだと笑い飛ばすこともできるけれど、もしかしたらもっと深い意味があるのではないかと思いました。
例えば子犬のころに育ててくれた人や、出産のときに育ててくれた人がすごい美人だったかもしれないと考えることもできます。
性的な関心があるから引き付けられたと考えるだけだと、動物の行動を知る柔軟性に欠けてしまいます。
犬はいろんな臭いを嗅ぎ分けます。
外見だけに惑わされないのが犬の信頼のひとつです。
犬はいつも人の心を見ています。