犬といっしょに暮しているといっても、犬と何をしたらいいのかわからなくなってしまうことはないでしょうか?
もしあるとしたらそれはとても正直な意見ですし、犬とのかかわりやコミュニケーションを真剣に考えている証拠です。
犬とかかわるということが、犬をただなでたり抱っこしたりすることで終わっている場合もあります。
ただ犬が家のソファの上で寝そべっていたり、犬用のベッドで寝ている姿を見て、ただ癒されているだけのこともあるかもしれません。
室内飼いであれ外飼いであれ、現在の犬たちは毎日暇ですることがありません。
室内拘束されているか外で係留されているかのどちらかなのですから、することがないのも当然のことです。
そんな暇な犬たちと狭い空間でもぜひやっていただきたい遊び、それが「ひっぱりっこ遊び」です。
ひっぱりっこ遊びにはかなり誤解のある意見を聞くことがあります。
極端な誤解の例では、ひっぱりっこ遊びは犬が狂暴になるからやってはいけないというものです。
もし犬とひっぱりっこ遊びをするとしても、絶対に負けてはいけないという変わった意見も聞いたことがあります。
実はこのいづれも問題にする必要もないことです。
なぜなら、ひっぱりっこ遊びはものを奪い合う遊びではなく、奪い合って力を競う遊びでもはたまた喧嘩でもありません。
ひっぱりっこ遊びは共同作業のひとつです。
ひっぱりっこ遊びは子犬のころから犬と犬が行う対等性の高い遊びなのです。
この犬とのひっぱりっこ遊びですが、案外ちゃんとできていません。
ひっぱりっこ遊びを見せていただくと、ひっぱりっこではなく犬がおもちゃにぶら下がる状態になっていることがよくあります。
犬は飼い主が持つおもちゃの一部を口でくわえてひっぱるような状態になっているように見えるのですが、飼い主がおもちゃをひっぱるとそれについて歩いたり、おもちゃにぶら下がった布のようになったりします。
そして、犬は途中でひっぱりっこをやめて口にくわえたおもちゃを飼い主の目の前に置いて後ろに走り出し、飼い主におもちゃを投げることを要求しながら、ボールを拾う遊びの方に変えてしまうことがあります。
これは、ひっぱりっこ遊びが不得意な犬の行動のパターンとしてよくあるものですが、こうした犬にこそひっぱりっこができるようになってほしいものです。
レッスンの時にもよくひっぱりっこ遊びを見せていただきます。
ほとんどのケースでひっぱりっこ遊びは成立していません。
今回はお預かりのリンちゃんとお庭でひっぱりっこ遊び練習をしたときの動画をご紹介します。
※写真をクリックすると動画が再生します
リンちゃんとのひっぱりっこ遊びの様子です。
まだ1歳になっていないシュナウザーのリンちゃんとひっぱりっこ遊びの練習をしている様子です。
動画でご覧になるとわかるように、人が後ろにおもちゃを引くとリンちゃんが少しついてきてしまいます。
このまま人のペースでおもちゃを動かしつづけると、リンちゃんはずっとおもちゃに引きずられるようにしてついてきてしまいます。
そこで、リンちゃんがうまくひっぱりっこができるように誘導していきます。
ひっぱりっこ遊びの基本姿勢は、お互いが体重を後ろにかけるようにして引き合う形です。
ひっぱりっこのどちらか一方が体重を乗せすぎると、片方に引きずられてしまいます。
同じ理由で、どちらかがきちんと体重を後ろに乗せていないと、やはり引きずられてしまいます。
お互いに同じ力で後ろに引き合うことでひっぱりっこがなりたっているのです。
では、どのように誘導したらいいのかというと、犬がひっぱりっこの状態を維持できるような「ポジション」をとれるようにおもちゃの位置を誘導していきます。
微妙な引き加減で調整することで、犬はその位置を確認し相手が求めていることを受け取っていきます。
ひっぱりっこ遊びが継続するように体重を維持し続ける必要がありますから、座ったままの状態ではなかなかうまくいきません。
うまく教えていくためには、小さな犬を相手にするときにも体重移動が楽にできるようなポジションをとってみてください。
家庭訪問クラスのときにこのひっぱりっこの説明をしていると、案外男性の飼い主さんの方が飲み込みが早くとても上手に誘導されます。
スポーツ経験などの体を使った経験が、犬との遊びに影響をしているようです。
人とひっぱりっこができるようになると、今度は相手が犬でもひっぱりっこができるようになります。
ひっぱりっこ遊びは、犬の遊びとしては必須で、犬の精神的な成長にも大切な役割を果たします。
犬が何歳になっていても楽しめる作業遊びなので、ひっぱりっこ遊びを楽しんでください。