家庭訪問クラスで様々なご家庭の環境における犬の行動を見る機会を得ています。
家庭訪問スタイルのトレーニングクラスを通して、様々な環境と犬の行動を観察できる機会を得ることは、犬のしつけやトレーニングを行う際に最も大事なことです。
犬のしつけやトレーニングは、犬の行動の原因がどこから起きているのかということを考える必要があるからです。
こうした作業を毎日やっているわけですから、犬の行動の何がナチュラルで何が不自然であるのか、またその不自然な犬の行動がどのような環境によって影響を受けているのかを知ることができるようになりました。
この犬の不自然な行動の中に、不自由さを強いられている犬の行動もたくさん含まれています。
「犬の不自由な行動」とは、犬が不安定な状態で行動をしているという状態です。
たとえば、床を歩く際に通常の歩行ではなく、4つ脚の動きを不規則にしながら背中を曲げながら歩いている犬。
床にオスワリをする際に、数歩下がって体をねじらせるようにして座る犬。
上記のふたつの不自由な行動は、つるつるを滑るフローリングの床の上で犬が不自由さを強いられて行動をしている状態です。
室内にカーペットなどの滑らない場所があると、その上に乗ったときの犬の行動がフローリングの上で行動するときの犬の行動を明らかに違っているので、それが床面の影響によって起きていることがわかります。
オスワリやフセをしようとしても滑る床面では不安定になるため、壁際やなにかの家具のそばで座ったり伏せたりしている犬たちもいます。
壁際での行動は滑る床面以外にも原因が考えられますが、床面が理由になっていることもあります。
飼い主さんについて歩く、飼い主さんにとびつきながら歩くことが日常化している犬たちは、飼い主さんを見上げたりとびつきながら移動をくり返すために、こちらもとても不自然な歩行=移動をしています。
飛びあがるうさぎのように移動する犬たちを見ていると、普通に歩くということが全く身に付いていないのだと感じます。
行動というのは恐ろしいもので、日常的に習慣化してしまうとそれはひとつの癖になってしまうからです。
人でいうところの姿勢と同じようなもので、歩く際にも自分の癖が出てしまうものです。
犬の不自由な行動は、不安定なリードの持ち方でも起きることがあります。
国内で犬の散歩を見ていると、非常に多くの人が片手を前に突き出して歩いています。
この姿勢でリードを持たれている犬は、行動に不自由さを感じ、リードから逃れようとますます引っ張りが強くなっていきます。
不自由な行動は、数頭の犬たちが生活するいわゆる多頭飼育環境でも起こりがちです。
特定の犬がテリトリーを主張しつづけ他の犬との関係性が成熟していなければ、犬の行動はとても不自然なものになっていきます。
こうして、飼い主の思わぬところで犬が行動の不自由さを与えられているということに、飼い主当人はあまり気づかないものです。
毎日同じ犬の行動を見ているわけですし、それが普通で正常だと思っているため疑う余地はないからです。
不自由さを言葉にして伝えることができない犬たちのために、客観的に誰か犬の専門家に行動評価をお願いするというのは環境改善のためにとても良い試みだと思えます。
以外と気づかれていない犬の不自由な行動を身近な犬で見つけたら、やんわりと少しずつ知る機会を得ていただけるような、そんな飼い主さんの学びの環境がSNSを通して広がるのも良いですね。
私はなかなか不器用でそこまでのツールを作成するに至りませんが、器用な方はぜひトライしていただきたいものです。