犬がクンクンと鼻を鳴らすのを聞いたことがあるでしょうか。
犬は年齢や状況に応じて、様々な音の鼻鳴らしを行うことがありますが、その多くは人に向けて行われていることが多いようです。
子犬がクンクンと鼻を鳴らす行為をするのはよく知られています。
子犬の鼻鳴らしは不安を抱えたときに起きる行動ですが、子犬が不安を抱えるといえば母犬もしくはそれに相当する犬が自分の近くに見当たらないときです。
わかりやすくいうと子犬が移動しすぎてしまい母犬を見失ってしまったときといえるでしょう。
今日、街中を運転していると小さいけど自力で歩いている女の子とお母さんが歩道を歩いていました。
お母さんの方は細いわき道に曲がったのに、女の子の方は大通りをまっすぐに歩いてしまいほんの数歩進んだだけでお母さんを見失ってしまいました。
お母さんは角越しに女の子を見守り、自分に気づくのを黙って待っているようでした。
女の子は左右に首を降り、やっとお母さんを見つけるとそちらに歩いていきました。
子犬も母犬と常に離れないようにしているのに、いつの間にか母犬と離れてしまい巣穴に戻ることもできなくなってしまうと、クンクンと鼻を鳴らして母犬を呼びます。
母犬は子犬に気づいて迎えに行き、たいていは子犬の首根っこをくわえてクロネコヤマトの猫の絵のようにして巣穴に子犬を移動させます。
ただ、母犬がこうした行為をするのには一定の制限が設けられています。
母犬が子犬が1ヶ月半を迎えるころには、子犬の鼻鳴らしには反応しなくなっていきます。
そのころの子犬は自力で歩くことができ、自分で母犬のところに戻る年齢になっています。
子犬たちは複数おり活動の範囲も広がっていますので、子犬がそこここで鼻を鳴らし始めたらお母さん犬は大変です。
子犬は自ら自分のいける範囲で動くことを求められています。
好奇心旺盛だけど母犬から離れすぎてしまうような子犬は、群れから置き去りにされて淘汰されてしまいます。
かわいそうだと思うでしょうが、これが犬という動物が犬というグループで生きる原理なのです。
ところが人の方は、自宅に迎えた生後2ヶ月の子犬がくんくんと鼻を鳴らし始めると抱っこしてあやしはじめます。
子犬が不安でさびしがっているのだから、これをなんとかなだめようとするわけです。
この行為から危険な分離不安状態が始まってしまいます。
子犬は母犬から離れているのですから不安で鼻鳴らしをするのは仕方ありません。
ですが最初の鼻鳴らしで抱っこしたり撫でたりすると、子犬が依存の強い情緒不安定な性質を持つ危険性の方が高いのですから、冷静に対応する必要があります。
クンクンと鼻をならしても母犬は戻ってこないことを学ぶと、子犬は鼻を鳴らすのを止めてしまいます。
犬が3才、4才、5才、7才、はたまた10才になっても鼻鳴らしを続けているようでしたら、犬の脳の安定機能が充分に働かない状態になっています。
日本は海外に比較して圧倒的に小型犬が多く、なぜか多くの人が小型犬を抱っこしています。
この異様な光景は、純血種の比較的多い欧米でもなかなか目にすることはありません。
そしてその小型犬のクンクンと鼻をならしている姿は、精神的には成長する機会を大きく失ってきたことを知らせています。
鼻を鳴らす行為をかわいいと思われる方も多いようですが、鼻鳴らしは落ち着かないというメッセージなので決してかわいいものではありません。
鼻鳴らしとの戦いは大変長く続きますが、どんな年齢の犬にも成長のチャンスはあります。
始終鼻をならして人のそばをうろつかなくていいように、どうか成長のチャンスを掴んで育ててあげてください。