家庭訪問トレーニングクラスでは「犬の咬みつき」についてのご相談を受けます。
ご相談の割合としては、トイレの失敗の次かもしくは同じくらい多くあります。
中には、首輪やハーネスを付けようとすると付けられないというご相談もあります。
では、現在どのようにしてつけているのかというと、多くの飼い主さんは「オヤツを与えながら着けている」ということでした。
オヤツを食べている間に、エイッ!とつけてしまうのです。
ハーネスは結構時間のかかるものですが、これもオヤツを食べている間に犬にハーネスをつける技的なものを身につけています。
こちらの技の方に「へー」とビックリすることが多いのですが、関心している場合ではありません。
普段は、首輪やハーネスを装着しようとすると咬みつき行動をしようとする犬が、オヤツなどの食べ物を与えながら首輪やハーネスを装着できるのは何故なのでしょうか。
ここのところをよく考えていくと、犬が何を嫌がっているのかがわかります。
首輪やハーネスの装着で噛みついたり暴れたりする犬は、散歩の後の脚を拭く行動でも同じような行動をします。
ということは、首輪やハーネスが嫌だということではないのです。
首輪やハーネスの装着にしろ、犬の足を拭く行動にしろ、犬を短い時間とはいえ、一定時間固定する必要があります。
食べ物を食べている間は一旦犬がその場に同じ姿勢でとどまることができますので、そのタイミングをみて首輪やハーネスを着けているのです。
犬の体を人の手で固定させることに対して抵抗を示す理由には、いくつかの要因が考えられます。
判断するためには犬の他の日常的な行動もあわせて観察する必要がありますが、根っこのところはひとつになっていて、やはり飼い主と犬の関係性に問題ありということになります。
犬がまだ家庭に来たばかり、もしくは犬が来て数ヶ月がたちすでに犬の行動が不安定になっている状態の対処法としては、食べ物をつかって一時的に対応することは止むを得ないことです。
犬との関係を変えるために、環境や飼い主の接し方を変えていくのであれば、結果として首輪やハーネスを装着するときに少しガマンすることを教える必要は、絶対にあります。
犬がこうした状況において咬みつき行動を示すことを「怖いから」「嫌だから」「犬だから」という理由をつけて対応しないのは、犬に対してとても失礼なことです。
犬は成長するし、高度な社会的コミュニケーションを持ち、そしてその能力を通して人の暮らしに近付いてきました。
動物の中で自ら人に近付いてきたもののナンバー3に入るほど、犬は特別な動物なのです。
その高度な社会的コミュニケーションは、人との関わりを通して発達していきます。
すぐに咬みつく犬は飼い主との社会的関係が薄く大変孤独に過ごしています。
犬は成長し変化します。変えられるのは飼い主だけなのです。