前回のブログで、自然環境と都心空間の作られ方の違いについてお話しました。
刺激の多いと思われる都心の生活空間の方が、限られた環境の変化の少ない空間であることに触れました。
これは動物学者の小原秀雄先生の言われている「人は自分を自分で飼っている自己家畜化」だという状態なのです。
小原先生の対談の言葉を一部抜粋させていただくと、このように言われています。
「人間はある意味で家畜に似ていると思いませんか。自分で自分を飼っている。囲いをつくってほかの動物から遠ざけ、社会システムで生産された食料を食べている。自己家畜化というやつです。これがあまりにも進んでいくとどうなるか・・・。」
つまり、都心生活では動物園の檻の中に入っているのと同じような環境なのだということになります。
このテーマでいつも思い出すのがアメリカの動物行動学者のセミナーを受講したときに聴いた話です。
話のテーマは、動物園で繁殖されたオオカミと、自然環境で生まれたオオカミを動物園に連れて来た場合、動物園の中ではどちらが社会性の発達がなされるのかというものでした。
この質問を今までになんども生徒さんたちにしてきましたが、皆さん答えは同じです。
多くの人が、動物園で人工的に繁殖されたオオカミの方が、社会性が発達するはずだと自信を持って答えます。
小さいころから人が管理する環境の中に育ち、人が面倒を見るオオカミの子ですから、社会性の発達を表面的に見るならこの結論に達するでしょう。
しかしこれは逆だという話をセミナーで聴くことができました。
つまり、自然環境で生まれたあと動物園に連れて来たオオカミの方が、社会化が促進しストレス行動が少ないというものでした。
もちろん移動の時期にオオカミの一定の年齢は影響をすると思います。
幼少期に自然環境で生まれ育ち、若年層か青年層で動物園に移動してきたということになります。
みなさんの予想を裏切る答えの仕組みはどこにあるのでしょうか。
それは、社会化というのが脳をどのように発達させていくのかという仕組みにあるのです。
科学がこれだけ進んでいる時代ですから、脳の発達がどのようになされていくのかという研究は進んでいますし、一般の方でも気軽に読める本がたくさんあります。
特に子供さんの脳の発達に関する書籍は読みやすく参考になるものも多いのです。
人と犬は違うのではないかということを考慮するならば、人は大脳皮質の発達について重点を置かれることがあるが、犬は人よりも大脳皮質の割合面積が小さいために大脳辺縁系と呼ばれる原始的な脳の発達に重点が置かれるということです。
人でも原始脳と呼ばれる知覚と反応の発達がベースとしてはとても重要なはずだと思うのですが、本によってはそう述べられていないものもあり残念です。
人の発達について、冒頭に紹介した小原先生は、小さいころから虫や動物や自然環境に直接的に触れて冒険したり実験したりすることで、相手と自分の関係がわかりあえる“共存共栄”という本能的な力が身に付くととかれているほどです。
幼少期に自然環境に触れる、臭ったり動いたり口に入れたりする自然な行動をしながらテリトリーを広げて活けるようになると、脳の発達が促され自然なテリトリー形成につながっていきます。
そのテリトリーをもってこそ社会性の発達というのが進んでいくということです。