犬を自分の家族の一員だととらえ、愛情をもって可愛がってくださる方が本当に増えていると感じます。
ただ、その愛情の中には犬の擬人化によって起きる行き違いが生じていることも忘れてはなりません。
行き違いのひとつに、犬に専用の部屋を与えるということがあります。
子供部屋を子供に提供するような感覚で、犬もしくは犬たち専用の部屋を与えるという考え方に発展してしまうようです。
実は犬にとって犬専用の部屋を与えられそこで過ごすことは、落ち着けない生活環境になってしまうのです。
誤解を恐れずに率直に言うと、犬専用の部屋を与えるということは犬を人を分けて生活するということになります。
つまり、犬舎のようなものが室内に設置されていると考えるといいでしょう。
犬は犬だけのスペースで暮らし、人が犬を抱っこしたいときだけその部屋から出すといった風景になると、ペットショップの限られたスペースで犬だけで過ごしているのに、人が接するときには抱っこしたりリードをつけて出しているのと同じことになります。
最近ではペットショップも動物福祉の観点やディスプレイの効果を考えてでしょうが、畳数畳のスペースに犬を展示されていることがあります。
まさに、犬部屋に犬だけが入っている風景で、一般家庭の犬部屋のようだなと思うのです。
では、なぜ犬専用の部屋が犬にとって不利益なのでしょうか。
それは、空間を共有しないということは、同じ「家族=群れ」ではないということを意味しているからです。
別居といったらいいでしょうか。
時々あって、人の都合で接するけれど、あとは別居生活です。
さらに、ペットショップや集合犬舎よりも犬専用の部屋の方が乱れていることが多いのです。
そもそも犬ができるだけ自由に過ごせるようにということで与えられている犬専用の部屋です。
できるだけ自由にというのは裏を返せば、トイレの失敗してもいいのよ、家具をかじってもそんなに気にしないからね、ソファは犬のものだからご自由に汚してくださいなと、毛が多少落ちても大丈夫など、生活の気疲れを減らす人側の思惑の上になりたっています。
ということは、犬の生活環境の管理が不安定になってしまうということです。
その点、集合犬舎などでは衛生第一、安全第一と叩き込まれて犬の管理を行っています。
収容数が非常に多いので、きちんと管理していないと大変な状況になるからです。
若いころに勤めていた盲導犬育成施設は多いときでは60頭を越える程の犬が収容されていました。
管理を厳しくするのは、犬たちが安全かつ安心して生活していくための犬舎の管理規則なのです。
その点、家庭内での犬専用の部屋は、とても不安定な状態になっています。
犬を愛するという気持ちでやっていることが、実は犬を窮地に追いやることになっているかもしれません。
犬と家族でいたいなら、まず空間を共有して人が生活をするスペースの中で共に暮らせるようなしつけをやっていきましょう。