最近は便利なものですぐにネットで検索ができるので、生徒さんたちが情報過剰になっていると感じます。
その過剰な情報の中には、明らかに違っているもしくは見方があまりにも人によりすぎていて吐き気がしそうなものまで入っています。
人にとびつくのは人のことが大好きだから。
人の口をなめるのは人のことが大好きだから。
犬が何をやっても人が好きだといってしまうことで飼い主側も納得してしまうという負の渦の中に巻き込まれていないでしょうか?
逆に極端に、犬が手をなめているのは強迫性神経障害であるとか、犬が他の犬の吠えるのは発達障害であるなどあまりにも簡単に障害という印鑑を押して恐怖を抱いてしまうこともまた正しい状況を把握することから遠ざかってしまいます。
犬のことを正しく理解しようなどとは、異なる種の動物であれば困難であることは当たり前のことなのです。
でも時間をかける余裕がないし、早く知って解決したい終わりにしたいという気持ちがものの見方をゆがめてしまうこともあります。
いつもお話ししているとおり、犬のことを知るにあたってハウツー本は必要ありません。
動物の仕組みを理解したり考えるヒントをくれたり、ああそういう見方もあるんだなと考えさせられる本に興味があります。
限られた時間の中で本を読むのですから、セレクトして読まなければもったいないという気持ちもあり、いつも本を手にとるときにはどきどきします。
ガッカリすることもありますが、このブログでご紹介する本は時間を割いて読んでよかったと思えた本ばかりです。
そこで今回はこの本「かくれた次元」をご紹介します。
「かくれた次元」という本の題名からすると、精神世界的な本と誤解されるかもしれませんが、これはかなり行動観察に基づいた科学的な本です。
書籍名の「かくれた次元」の意味を考えると、本書の冒頭にあるように「体験は文化によってかたどられているのだから、そこにはかくされた次元という文化が存在するのだという」という仮説を証明するために実際の事象を用いて説明が進められます。
事象として取り上げられているのが動物間の距離に関するテーマです。
動物たちが種により場によりまた実際の距離感によって混み合いをどのように回避しようとするのかなどがわかりやすく記されています。
動物が他者に近づける臨界距離、逃げる必要を感じる逃走距離といった言葉も、この本の中で初めてエドワードTホールが取り上げたのではないでしょうか。ここはあくまで推測であって事実とは間違いもあるかもしれませんのでご了承ください。
この他者との距離感を、住む場所の違いによる文化として捉えているのがわかりやすいところで、特に日本人に関する記述が他の国の人とは違うことが詳細に述べられているため、文化の違いが知覚文化距離(プロクセミックス proxemics)の違いに影響をしていることを自らの経験も通して理解することができます。
そこから、犬と人という異なる文化を持つ動物が異なる知覚文化距離を持つ事はあまりにも明らかだという理解に発展し、犬との距離感や空間について考える素材をもらえるという訳です。
どの本にも答えはありません。結局は自分で考えなければならないのだということです。
こうした自分に考えるヒントをくれる本に自分がドキドキしてしまうのです。
考えることが楽しく、発見することが楽しく、それが犬のこととなればなおさらのことなのです。
もちろん、机上の空想には終わりません。
考える過程を通して、ああだから犬たちは距離を近付け過ぎるとストレスを感じるのだという理解につながり、犬の適切なフィードバックを受けられるようになり、現実的な関係性に発展していくのです。
良い本との出会いは、良い師や友人に出会った気持ちになるものです。
暑い夏の日のお昼寝タイムの前にでもどうぞ。
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