犬にまつわることわざは山ほどありますが、誰でも口にすることわざにこんなものがあります。
「夫婦喧嘩は犬も食わない」
このことわざ、いつも気になっています。
意味としてはとても単純で、要するに夫婦喧嘩というのは、何でも食べる犬すらも見向きもしないほど関わる必要のないものだということのようです。
夫婦喧嘩はそのうちよくなるから仲裁の必要のないことらしいのですが、本当に犬も食わないのか疑問なのです。
なぜなら、トレーニングクラス中に生徒さんから家族間の喧嘩(つまりは夫婦喧嘩)にまつわる犬の行動について説明を受ける機会があるのですが、どうやら犬たちは無関心ではないようです。
夫婦喧嘩のときにしている犬の行動ですが、過去に次のような行動をしていると聞いたことがあります。
夫婦で言い合っていると真ん中に入ってきてワンワンと吠える
夫婦で喧嘩していると庭に出ていって戻って来ない
夫婦で喧嘩しているとクレートに入って出てこない
夫婦で喧嘩していると自分のベッドに伏せて大人しくこちらを見ていた
夫婦でつかみあっていると、部屋の端にいってブルブルと震えていた
ご家族の喧嘩の状態がよくわからないのですが、無関心な犬だけでもなさそうです。
庭に出て行ったり、クレートに入ったりベッドにテリトリーを持つ犬たちは、より安全は場所に回避をしているのでしょう。
ブルブルと震える犬は、逃走もしくは闘争モードが高まっていく状態を示しています。
夫婦の間に立って吠える犬は、旗から見るといかにも喧嘩を制裁したりとめているように思えますが、この状況下で出る吠える行動は興奮行動もしくは闘争行動ですから、制裁というよりも自分も攻撃性を出現させている状態という風に見られます。
全く関与していないように見える犬ですら、顔を背けて無関心を装いながらもハアハアと息遣いをしたり息を殺したりして、状況の変化を感じているようでもあります。
どうやら、夫婦間の喧嘩は犬にとっては食わないどころか、最大の関心時のようです。
ことわざの生まれた生活環境と今では明らかに異なるのが空間の使い方です。
空間の使い方が変わってくると、関係性が変わってきます。
ご夫婦の喧嘩のエネルギーも、一昔前と同じとはいえなくなってきているのでしょう。
ドラマなどで見られる喧嘩するときに「外にでろ」というのは、妥当な方法なのかもしれません。
狭い都会では、外で夫婦喧嘩するとそれはそれでご近所に影響があるということで、なかなか適切な場所も見つかりません。
喧嘩は仲良くなるために必要な攻撃性だと思います。あとは、犬との関係性を高めることがストレスを最小限にとどめる秘策でしょう。