多くの人は「犬が吠える動物」であると誤解されているようです。
確かに犬は吠える動物ですが、落ち着いて過ごしているときにはほとんど声を出すことはありません。
日常生活がゆるやかに過ぎていけば、一日を通して犬の“声”を聞かない日は珍しくありません。
犬が吠えると強調されてしまうのは、犬の太くて広がる吠える声のせいかもしれません。
都心では、ストレス生活のためにめったに吠えない犬たちが頻繁に声を上げるようになり、犬の吠え声が社会問題になっていることも事実です。
ストレスが上手に解放されている犬や、過剰にストレスを抱えていない犬はめったに吠えないということを前提にして、犬の吠える声についてもう少し深く探っていきます。
犬の吠える声の質ですが、最近になって変化の傾向が著しくなっているように感じるのです。
変化というのは、犬の吠えが耳障りな甲高いものであったり、濁った音になってきているからです。
特に濁った音による犬の吠える声は耳障りで不快に感じられるものです。
先日の犬語セミナーでも動画の中で濁った音を出している犬がいました。
いわゆる「ダミ声」といわれる音ですが、つまり喉が閉まっているのに無理に大きな音を出そうとしてこのように濁った音になるというのがその声の仕組みになります。
濁った上に大きな音ですから、一般的には耳障りに感じられてしまいます。
犬が出す音=吠える音にはそれぞれに意味があります。
意味とは、犬が出す音は犬の状態を表しているということです。
犬よりも音のコミュニケーションを使う人にあてはめて考えてみましょう。
みなさんも、状況や環境に応じて声の質を変化させているはずです。
甘える声、叱る声、買い物のときに使う声など声は使い方によってその質は様々です。
さらに、声には個性がありますので、声をもつ人の性質、安定度、状態を表現する道具にもなっています。
犬も同じように、基本的な犬の性質と現在の状態に応じて出せる声の音程が決まってきます。
その上で、犬の状態や目的に応じてその音の質が決まってきます。
濁って大きな音を出して吠える犬たちの状態といえば、筋肉の緊張が高いけど強く主張しなければいけない状態なのです。
筋肉の緊張が高いという段階で、すでに犬がストレスを上昇させていることがわかります。
濁音や大きな音で注意を引き寄せようとする犬たちのメッセージを受け取る人はいないのでしょうか。
ただ犬が吠えることをうるさいと片付けてしまわないことです。
この犬が根底から必要としている環境は何なのだろうかと考える時間は、犬と豊かに暮らしていくためにはなんとしても作らなければいけない時間だと思えるかどうかでしょう。
都心に響き渡る犬たちの悲痛な奇声を聞くたびに、辛くなってしまいます。
安心して過ごしている犬は穏やかで静かな動物であるということ。
穏やかな犬と過ごしている人は穏やかであるということ。
どちらも真実ではないでしょうか。