犬は性別によって行動のいくつかが明らかに違います。
中でもはっきりとしているのは、争う相手が基本的には同性であることです。
オスとメスという生き物に分かれていることと、オスとメスの存在によって子孫を増やしていくという仕組みはヒトと同じです。
犬を擬人化することはおすすめしませんが、仕組みが同じ部分については自分たちの種に置き換えて考えても結構似ているところがありますので参考にしていきましょう。
犬のオスはオスと緊張感が高く、多くのオスはメスの非礼な行為や乱暴なコミュニケーションには寛容です。
どうでしょうか。ヒト社会に置き換えても納得できる傾向ではないでしょうか。
そのため、オス犬が散歩中に眼をとばしたり、吠えて緊張したりする傾向があるのが、相手がオス犬のときだけということもよくあることです。
犬の社会的順位については、そもそも交配の権利を争うために行われるという意味もありますが、オスの場合にはもっと深い意味もあります。
オス犬たちはグループで行動し防衛や攻撃を行う体制を整える必要があります。
近隣では、互いのテリトリーを構築したり、もしくは数頭でグループをつくったりと、オス犬ならではの社会関係が進められます。
昭和一桁時代であれば、犬たちは夕方になると係留から解放されて、犬同志が集まるコミュニティを形成していました。
その中では、オス犬の序列が自然とつくりあげられ、ボスを呼ばれる犬もいたことでしょう。
弱い犬は弱い位置におさまり、犬だけで作られたオス同士の序列はある程度安定したものであったのではないかと推測します。
ところが、最近のオス犬たちは少し変わってきました。
リードや室内といった拘束環境から解放されるときがないため、犬だけのコミュニティを持たないこともひとつの理由ですが、ある傾向がオス犬のけん制行動を複雑していると感じています。
それは、家庭に父親という存在が不在のまま育つ社会性についてです。
犬社会であっても、オス犬が一番先にぶつかるのは、同じ群れのオス犬です。
犬からしてみれば、父親と同じ存在にあたります。
強く、恐ろしく、また尊敬する存在でもある父親役を果たす犬の存在は、若いオス犬の横暴な態度を改め、冷静さを引き出し、抑制をつけさせる大切な存在なのです。
ところが、飼い主という人が親役を引き受けるようになって、この父親の役割が不安定になってきました。
飼い主さんの中には女性ひとりで犬を飼われる場合があること。
父親の存在が家庭の中で小さくなってしまっていることなどがその理由です。
家庭の中の父親が犬のしつけに細かく関わって欲しいということではありません。
お世話は母親や子供たちが協力して行うが、家庭の中に父親という要が存在するかどうかが重要なのです。
犬は非常に社会性の高い動物で、飼い主家族の社会的関係についても熟知していると感じることがあります。
家庭内の不和や不安定は、室内飼育の犬に直接的に影響を及ぼしてしまうことを否定できるでしょうか。
家庭に父親の存在がはっきりとしない状態で育ったオス犬は、甘えが強く社会的力に従うという社会性を身につける機会を失ってしまいます。
では、女性ひとりで犬を飼うことは無理なのかというと、そうではありません。
女手一つで見事に子育てをされる母親もいるからです。
ただ、その場合には、女性は時には父親という存在に変わって、威風堂々と接する必要があるということです。
それには、体力も気力も必要です。
オス犬育てが大変な理由はここにあります。
たかが犬育てですが、犬と向き合ってその成長を見守り、動物として必要な発達の機会を提供するとなると莫大は時間と空間と気力が必要なのです。
オス犬がお母さんべったりなら早急に家族会議が必要です。
すべてのオス犬が自信を持ち役割を発揮する場を得られるよう願ってやみません。