日々のトレーニングクラスを受講する飼い主さん宅でほとんどといって起きる不思議現象があります。
トレーニングクラス時の犬の行動が、日常とは明らかに違うらしいのです。
こうした犬の変化を、生徒さんたちが「先生モード」と呼ぶようになってしまいました。
“モード”とはなるほどなという感じです。
入力モードの切り替えのように、環境に応じて変化する犬の様子を上手く表現されました。
とはいえ、関心している場合ではありません。
この「先生モード」ですが、具体的にはいろんな行動の変化で起きています。
たとえば、トレーニングクラスの際にこんなことが起きるのです。
普段クレートに入れると吠える犬が、クレートの中で吠えない。
いつもは食事前にワンワン吠える犬が吠えなくなる。
来客があるととびついて甘噛みをする犬が、オスワリする。
ハウスといってもクレートに入らない犬が入る。
など、先生モードの行動も犬によって様々です。
この「先生モード」行動ですが、何故犬の行動が変わってしまうのだろうかと不思議に思われることもあるようです。
確かに犬の行動には変化が見られますが、犬そのものが変わったわけではありません。
先生モードへの切り替えはとても早く、普段モードへの切り替えも早く行われているようです。
レッスン後に「ありがとうございました」といってドアをパタンと閉めると、部屋の中を走り出す犬の足音を聞くこともありました。
「私=先生」という環境の因子が、犬の行動に与えている影響度の強さを感じるのですが、自分は犬に直接トレーニングを行ったりはしません。
それでも犬たちは、何かが違うことを察知して行動を変化させているようです。
環境に応じて行動を変化させるのは動物の行動の基本ですから、忠実にそれを行っているといえます。
では、環境がどのような方向に変化していったのかというと、私が犬の飼い主を管理する人として位置づけられているということでしょう。
直接的に犬のトレーニングを行いませんが、インストラクターとして必要な作業や説明の指示を飼い主に与えるのが自分の役割です。
実践的にやっていただくために、行動の指導も与えていきます。
たとえば、犬をハウスに入れて下さいとか、もう少し姿勢をまっすぐにしてなどと、飼い主の行動についての指導する様子を犬たちは感じ取っています。
わかりやすくいえば、飼い主の上にたつボスがやってきていろいろと確認をしているという様子です。
社会性が高く環境の変化に敏感に反応する犬という動物が、普段と異なるこうした環境に対して「先生モード」になるのは、ごく自然な反応なのです。
ということは、犬は環境さえ整えばできるということなのです。
この情報は、最初は飼い主にとっては受け入れ難い事実かもしれません。
結局、犬じゃなくて変化すべきは飼い主だと言われていることになるからです。
でも、考え方を変えるとこんなに簡単なことはないのです。
なぜなら、犬を変えることよりも自分を変えることの方が簡単にできることだからです。
自分を変えずに犬を変えようとする飼い主は、苦労ばかりが伴い先が見えてきません。
犬を変えるのではなく、自分を変えるのだと理解した飼い主の犬は、本当にみるみると変化していきます。
「先生モード」になりやすい犬は、成長の可能性を秘めた犬だという良いお知らせなのです。
ならば張り切って、犬との関係改善を進めていきましょう。