犬という動物の習性やについての理解には基本学習で乗り越えられます。
でも、一頭一頭が行う行動の意味や理由を理解することは簡単ではありません。
なぜなら、犬はすべて性質(性格)が違っている上に、
生活している環境もそれぞれに違いがあるからです。
犬を飼っている飼い主もみな違い、犬にすることもそれぞれです。
育ってきた環境もそれぞれですし、もっといろいろと違います。
どのようなに繁殖されたのか、
どのような場所で生まれたのか、
どのような親犬に育てられたのか、
どのような場で育ったのか、
いつ飼い主の元にやってきたのか、
そして飼い主がどのように育てたのか、
こうした遺伝や経験のいろんなことが犬の現在の行動に影響を与えています。
同じような状況におかれても2頭の犬が同じ行動をするとは限りません。
犬と接しながら犬の行動や状態について知ろうと思うとき、
「この行動は一体どういう意味を持つのだろう、何を表現しているのだろう」と
考えに行き詰ることもあります。
その行動に影響を与えていると思わしき状況をたくさん集めたり、
他の犬の行動を観察したりしてその真意に迫ります。
その行動の意味を理解するのにとても時間がかかってしまうこともあります。
ですがわからないときにこそ、結論を急がないようにします。
不明な行動は「保管ボックス」にいれて、観察を続けることにします。
もしくは「~かもしれない」という推測をたてておいておきます。
犬が別の行動をすることを知ったときに、犬の性質を今以上に理解したときに、
この推測が確信に変わることもあるし、別の結論にいたることもあります。
この保管ボックスにたくさんの「?」が入ることで、
つながりが生まれ、そこから犬の行動を解き明かす鍵がみつかります。
飼い主が犬のことを話すときに「うちの犬は●●が好きなんです。」ということがあります。
よく聞かれる会話です。
「うちの犬は、柵に手をかけるのが好きなんです。」
「うちの犬は、リードを咬むのが好きなんです。」
「うちの犬は、クレートの上に乗るのが好きなんです。」
「うちの犬は、抱っこが好きなんです。」
「うちの犬は、手を咬むのが好きなんです。」
「うちの犬は、タオルをかじるのが好きなんです。」
これらの行動は、本当に犬がその行動を好きなのでしょうか。
犬の行動の意味がよくわからないときにこの「好き」ワードが使われているような気がするのです。
犬がよくやることを「好き」だといってしまえば、もうその先を考える必要もありません。
これはとてももったいないことだと思います。
犬と人は異なる種の動物です。
お互いに知らない部分があることが楽しく、理解しながら近づけることがうれしいのです。
犬と関わる仕事をしている自分でも、まだ知らないことはたくさんあります。
だからこそ、もっと知りたいし理解したいと思う探求心が終わらないのです。
犬が困っているなら協力したいと思います。
犬が何かを必要としているならできる限り提供したいと思います。
そのためにはまず、犬を理解することから始まります。
犬の不思議行動や犬が好きだと思っている行動を、もう一度見直してみましょう。
関係性はいつまでも続きます。
どんなに長くいっしょにいる犬でも、その関係性はずっと変化していきます。
一気に近付かずゆっくりと少しずつ、いつか心から分かり合える日を目指して。