犬のしつけやトレーニングで最も多い相談は、排泄の失敗かもしれません。
随分前のことになりますが、アメリカのドッグトレーナーの講演の中で、
犬の保護施設の事情についての話を聞きました。
彼女が情報を得た民間の保護施設での犬の引き取り希望ランキングがありました。
引き取り希望理由の一番にあげられたのが「犬の排泄の失敗」でした。
アメリカといえば日本とは生活環境が異なります。
ニューヨークなどの特殊な都市空間を除くと、
子供が生活するような郊外の住宅は室内も広く庭も広いのです。
日本のように、マンションの一室や庭もほとんどないような家ではありません。
そんな環境の良いところなのに、犬が排泄の失敗をしなければいけないという事実にまず驚きます。
そして、排泄の失敗くらいのことで犬を放棄するということにも驚かれるかもしれません。
ところが、この犬の排泄の失敗ですがとても奥の深いものなのです。
犬の排泄のしつけは、よく猫と比較されます。
多くの猫は室内飼育では特定の場所に排泄をするようになります。
ただし、猫の場合にも不妊手術(オスメス共に)をすることが前提でのしつけです。
不妊手術をしていない猫は、やはり室内マーキングをしてしまうことが多いからです。
性的なマーキングをのぞくと猫は室内を汚したりはしません。
なぜなら動物には本能的に自分の生活空間を汚染しないという習性があるからです。
これは衛生的な側面から来ている本能で、病気の感染を広げないようにするためです。
もちろん犬にも同じように、生活空間を汚染しないという習性があります。
犬が生活空間と認識している場所(空間)では、犬は排泄をしません。
でも、犬の方は猫よりも、室内での排泄の失敗は多く見られています。
それだけに、犬のしつけの相談にトイレトレーニングは少なくありません。
これはなぜなのかを考えていただきたいのです。
この部分が猫と犬の大きな違いであるのと同時に、
犬としての動物の特徴を表現する行動でもあるからです。
そのため、犬の排泄の失敗はそれだけにはとどまりません。
犬で不適切な排泄を行っている犬は、他にも必ず問題を抱えています。
他の行動をみていくといくつもの犬の落ち着かない行動やストレス性行動を見ることができます。
中には、咬みつきや吠えるという攻撃性行動に発展していることもあるのです。
室内では排泄をしないのでトイレのしつけが成功しているように見える犬でも、
散歩中はおもらし状態でしか排泄をできない犬も多く見られます。
そのためか最近はマナーベルトやオムツをつけて散歩をしている犬が増えているのでしょう。
アメリカでトイレの失敗が犬を手放す理由の一番にあがったのは、
不適切な排泄をする犬が他にも行動的問題を抱えていたということで納得できることです。
犬の排泄の失敗はそのうち良くはなりません。
子犬のころにはそのうちに良くなるのではと放置してしまい、
もう生後6ヶ月を過ぎていないでしょうか?
だったら今すぐに、犬のしつけ方や犬のことについて相談をしてください。
犬にも大切な一生という時間があります。
排泄の臭いにまみれて暮らしたくないのは犬の方も同じなのです。
飼い主さんにはどうか、より良い選択をしていただきたいです。