いつの時代も情報過多におぼれてしまいそうですが、インターネットが様々な形で普及した今は、情報の嵐なのか情報の波なのかとにかくすごい量の情報が溢れているようです。インターネット情報との付き合いについて考えてみます。
● インターネット情報は本当に役立つのか
インターネットには「役立つ」と思える情報もあるけど、全くのでたらめと思ういい加減なものもたくさんあります。特に専門の犬の情報になると、本当にビックリするようなことがたくさん書かれているのです。犬との暮らし方や犬をどのように理解するのかは個人の価値観が大きく反映されます。そのため誰もが同じ情報を共有するわけではありません。しかしその中にも、明らかに「自分の犬はこうだった」という程度の内容のものを、全ての犬がそうであるかのように情報として提供されてしまうことがあります。
こうした個人の情報は、以前なら地域の公園で「うちの犬はねえ、こうなのよー」という程度の聞き流されるべき「うちの犬情報」ですが、それがブログに掲載されてしまうと真実のように語られます。そのブログがコピペで広がり、誰が書いたかもわからないような犬の情報ページに掲載されることで、たくさんの人が同じ情報を共有しているかのように勘違いさせる方向に導いてしまうのです。
たとえばネットにはこんな情報が掲載されたとします。
質問:うちの犬は排便をしたあとに後ろ脚を蹴るような行動をします。なぜこんな行動をするのですか?
答え:それは犬の遺伝子情報に組み込まれた本能なのです。猫が排便のあとに砂をかけてわからなくするように、犬も後ろ脚で砂を便の上にかけてきれいにしようとしているのです。
どうですか?犬の行動学や行動の見方をきちんと学ぶ機会がなければ、返答のとおり犬は土を後ろ脚で蹴って便の上にかけているきれい好きだと信じ込んでしまう人もいるかもしれませんね。もしそうであったとしても誰も責任はとってくれません。誰が書いたかもわからないし、討論をする機会など与えられていません。情報は垂れ流されているだけです。
こんなこともありました。ある方が犬が吠えるのを止めるために、空き缶に石ころが入ったものを犬に投げ付けているトレーニングをしているのを見ました。「これを使うとすぐに泣き止むんです。ネットで調べて、みんなが効果があったというので早速やってみました。」という事でした。では、そのあなたのトレーニングが犬の精神状態に与えた影響についてはどう考えていますか?という質問をします。なんのことだろうとキョトンとされてしまうことが大半です。
インターネットに書いてあることをそのまま鵜呑みにしてしまうのはあまりにも危険です。せっかく知りたくて調べた情報が曖昧であったり、やり方に効果があっても副作用の強いものもあります。
● 情報を都合よく使う時のシグナル、「みんなやってる」は危険な言葉
インターネットの情報に流されている傾向がある言葉とは「みんなやってる」というfれーズです。みんながやっていることは正しい、みんながやっていることは間違っていない、みんながやっていることはわたしもやっていいなど、みんながやっているというフレーズは、いろんな場面で行動を正当化するために使われます。
こんな風に考えることがあるでしょうか。みんな犬と寝ている、みんな犬をソファにあげている、みんな犬を抱っこしている、みんなプードルを飼っているなどなど。本当はみんなではありません。犬をソファにあげない人もいるし、犬と寝ていない人もいるし、犬を抱っこしない人もいるし、雑種犬と暮らす人もいます。こんな風に使われるみんなは、みんなやっているから私もやっていいこと、みんながやっているから正しいことと自分の行為正当化するための「みんなフレーズ」です。
これは大変危険です。なぜかというと個人の考える力を奪ってしまうからです。あなたが犬とそうすることがあなたの犬に対してどのような影響を与えるのかを、先の音の鳴る缶という罰が与える影響と同様に考える必要があるのです。
あなたが今、犬といっしょに寝ることが犬に与える影響について考える必要があるのです。その行動によって犬を分離不安状態にしてしまい、犬が落ち着くことができなくなる可能性があるなら、それは今はしない方がいいのです。
どんなことも、まず考えて選択するということが必然なのはずなのに、考えたくない傾向が強まると人も動物です。とたんに考えることを止めてしまいます。たくさんの情報は考えるためにあるのではなく、考えないようにするために使われていることがあります。
フェイスブックなどになると同じ考えの仲間がするにグループになって集まりやすくなります。その小さなネットの世界では、本当にみんなが同じように同じような写真をとり、みんなが同じオヤツを食べて、みんなが同じ種類の純血種を飼っていることもあるかもしれません。でもそれも小さな世界に自分を閉じ込めることになっていないでしょうか。
みんなと同じ、みんなと一緒で仲良しの世界は、孤独な社会から人を救ってくれる方法のひとつではあります。でもその世界観の中では犬は孤独から救われることはありません。結局はネットの世界なのです。SNSのつながりにも良い出会いはあります。しかしその出会いは目の前にいる家族や生涯に出会うことの限られているわずかな目をみて話せる人に代わるものではないと思います。
● インターネット情報と上手に付き合うための心得えとは
犬との暮らしにインターネット情報を活用されるときには、情報のひとつとして入手したあとは、まず自分の犬にそれが合っているのか、そのことが犬に与える影響とはどのようなことかをよく考える時間を作ってください。
そのためには、まず犬の性質(性格)を知るために犬をよく観察する査察を行い、その行動について考える考察という作業をします。その後、得られた情報が犬に与える状態について推測をして、それを犬との暮らしに導入するのかを決めます。しかし、実際にやってみてまだ早いと思うときには、一旦取り止めにして再び時期がきたらそれを行うといいでしょう。
グッドボーイハートのクラスを受講されているなら、犬に試す前に直接、クラスのときに相談してください。その際に「みんな…」というフレーズがでないように要注意。あなたの犬はみんなの犬と違います。みんながやっているからあなたの犬もそれをする必要はないのです。むしろ、犬とのより良い関係を目指すなら、みんながやっていないような一歩先を進んでください。
人がやっていないことを最初にやったり言ったりするのは勇気が必要です。人がしていないことを自分がまずやるには度胸もいります。それでも自分が今の時点でこうすることが犬に必要だと信じるのなら、やってみる価値はあるでしょう。
人から変わっているといわれるようになるとなんだかホッとします。人と比べられることがなくなったことで自分らしく犬と付き合うことができるのだと、少し解放されたような気分になれます。人と違うことをしたいのではありません。あくまで犬という動物と真剣に向き合ってきたからこそたどり着いた場所です。
このブログに書いてあることも真実かどうかを見極めるのはあなた自身です。正すべくは犬に対する姿勢のみです。情報はいつの時代も間違っていることもあるし正しいこともある、そこはとても不安定なものですし、時代の環境に応じて大きく違うものです。
このブログは現在、週に3回程度の更新に切り替えています。
生徒さん側から「先生、ブログは2日に1回でいいですよ。消化に時間がかかるんです。」と言っていただきました。消化しようとしっかりと読んでいる方がいらっしゃることに勇気づけられ、さらに質を高める文章を自分にできる範囲で書き続けています。