七山では暖かなで心地よい日差しも福岡では暑く厳しく感じてしまうのは、単に標高の違いだけでもないようです。この時期下から車で上がってこられる生徒さんは「外気温が2度も急に下がるんですよ。」と驚いています。そんな梅雨前のこの時期にどうしてもやっておきたいことがある、それが「日向ぼっこ」です。
●日向ぼっこは、ただ気持ちがいい
犬は日向ぼっこが好き、というよりも、犬は日向ぼっこを必要としています。
この季節に犬が日向ぼっこをしている姿は、とても気持ちが落ち着きます。テラスで、庭で、土の上で、車のそばで、犬舎の前でと外空間でひなたぼっこを楽しんでいる犬たちもいるでしょう。庭のない家やマンションの中では、ベランダで、部屋の窓側のかすかに日のあたるところで少しでも太陽の光をあびようと日向ぼっこをしている犬の姿をみるかもしれません。
中には、多少具合が悪いような状態で日向ぼっこをしようとすることもあります。少しグッタリしているような感じのときにも日向ぼっこをしている姿を見ると、少しでも太陽の力で癒されてほしいと思ってしまうのです。
老犬たちも日向ぼっこをしています。人間も年をとるとよく日向ぼっこをするようです。家の外の椅子に座ってジーっと太陽にあたっているおばあちゃんを見かけることがあります。高齢犬たちもよく日向に寝ているのを見かけます。高齢犬は若い犬よりももっと日向ぼっこを求めているのでしょう。
この時期にというのは多少理由があります。3月から日が長くなり始めると動物たちは日を求め始めます。冬の間に冷え切った体を温めるために春に日差しを浴びる日向ぼっこをしています。梅雨が開けると気温が高くになり過ぎてしまいます。こうなると今度は太陽をさけて土に穴を掘ってもぐりこんだりしてしまいますね。
●どんな日向ぼっこをさせたらいいのか
森林に囲まれるような山空間では、梅雨前のこの季節は日向ぼっこには最適の時期です。ところが都市部のコンクリートに囲まれた場所では、地表の気温が高くなりすぎて思うようにひなたぼっこができません。それでも犬は太陽に当たろうとしますので、少しだけ空間を工夫してあげてください。
たとえば、庭で飼っている犬や庭への出入りが比較的自由な犬たちのために、庭には一定の日陰ができるようにシェードを配置しておきます。犬が自分で日陰と日向を行ったりきたりできるようにしあげます。つなぎ飼いの場合には、その距離を測ってください。太陽は時間に応じて移動しますので途中でシェードの長さや向きを変えてあげる必要がありますが、この程度のことはやってあげたいものです。
ひなたぼっこのときには暑さを調整するために風の力も必要です。しかし、マンションや室内に閉じ込められた状態で日中を送っている犬の場合は、ガラス越しの日向ぼっこになってしまいます。それでも日向ぼっこをさせる価値があるのかと質問されたこともありますが、犬が実際にガラス戸の内側に寝ているのですから、ガラス越しであってもその機会はあった方がいいのです。もし人がそばにいるなら網戸にしてあげてください。マンションの方は、日中ゆっくりとできる公園や広場やお気に入りの場所にいってじっとしているという方法もあります。お友達が良いお庭を盛っていたら、ランチでも作ってあげてお庭だけでも貸してもらいましょう。もちろん、お友達の犬には配慮することと、できれば犬を飼っていないご家庭を捜すのがベストです。
日中はずっと留守番しているし留守番練習の途中なのでケイジから出すことができないという犬たちはちょっと時間が必要ですね。そして、ガラス戸をあけて外が見えてしまうと落ち着かなくなってしまうのでカーテンを開けることができないという犬もいるでしょう。それなら、塀の高さを調整して外の人からは中が見えないようにしっかりと目隠しをしましょう。カーテンは日差しを通すレースでも以外と目隠し効果があります。留守番練習途中の犬たちは、飼い主さんが毎日しっかりとがんばれば、ケイジから出して安心して留守番をさせることもできるようになります。早い犬だと数ヶ月でできるようになりますが、何もしなければいつまでたってもケイジ犬のままです。犬の生活は飼い主次第なので、犬が安心して日向ぼっこを楽しめるように、犬のためにがんばってあげてください。
●科学的な日向ぼっこ
日向ぼっこは実は医療現場でも使われていました。この太陽の光を利用した太陽療法は「ヘリオセラピー」という名前で知られています。スイスの意志であるオーギュスト・ロリエ(1874年~1954年)が、患者に対して用いた治療法で、古い資料ながら文献も残されています。科学的なことも知りたいと思う方はぜひ読んでみてください。人間では、日向ぼっこに最適な気温は18度くらいで25度を超えると避けた方がいいとあります。ただしこの実験の被験者は白人なので、わたしたち黄色人種では少し違いがあります。
文献によると食事にふくまれるビタミンやミネラルは太陽光線に対する皮膚の感受性を左右することがあるということで、オーギュスト・ロリエ医師も食事の指導を行っていたそうです。同医師が推奨した食材は未精製で未加工の食材だということです。ビタミンやミネラルが破壊されていない食材ということですね。そして脂肪には注意するようにとありますが、犬はより肉食中心なのでこのあたりも多少違いがあります。
犬は科学的に理解はしていなくても日向ぼっこをよくします。純血種の繁殖が進みすぎて大切な情報が遺伝的に伝わっていないこともありますが、犬が日向ぼっこをしているときにはそっとしておいてあげましょう。