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犬の咬傷(かみつき)事故の危険性を回避するために:唸る、吠えるの行動なく咬みつく行動への対処

「犬の咬傷(かみつき)事故の危険性を回避するために」の続きで4回目です。

昨日のブログ「犬の咬傷(かみつき)事故の危険性を回避するために:犬の攻撃性行動の表現について」では、犬の攻撃性行動の種類について説明しました。攻撃性行動はいろいろな行動の組合せですが、今回は理解を進めるために行動の種類は単純なものにし、いくつかのわかりやすい攻撃性行動に限定して説明していきます。

犬が咬みつき行動に至る前に起こるわかりやすい行動は“唸る”と“吠える”です。
犬の行動や表情を読み取ることが苦手な方でも、唸る声と吠える声の音は独特なので、ほとんどの人はこの警告を受け取ると後ずさりや静止をして攻撃を回避する反応をするでしょう。

ところが、咬みつき行動の前の“唸る”と“吠える”をしない犬がいるのです。

犬にはそれぞれに性質、人でいうところの性格というものがあります。
この性質把握は、キャラクターとしてとらえすぎると、見誤ってしまうこともあります。
しかし、慎重に審査して犬の性質を行動のパターンとして正しく把握できるようになると、犬が咬みつきなどの危険な行動を事前に把握することができやすくなります。

その特徴的な行動パターンの中に、唸ったり吠えたりせずにいきなり咬みつき行動をする犬というのがいるのです。これは特別な犬ではありません。割合まではわかりませんが、よく犬に接する人であれば、おそらく1頭くらいはこの行動パターンをもつ犬に接したことがあるのではないかと思います。

犬に距離をとって接するように心がければ、犬のテリトリー(領域)を侵したときにでる咬みつきは出ません。このことが、犬の行動パターンを見抜けず、間違った対応をして大きな事故につながる危険性を含んでいるのです。

“唸る”と“吠える”をしない犬は、「あまり吠えたり唸ったりしないおとなしい犬」と思われていることがあります。小さな子供達が簡単に手を出して頭を撫でていたり、顔を触ったり、オヤツを与えたりしているのを見かけるとゾッとすることがあります。

咬みつきの危険性がある場合と、本当に大人しい犬をどうすれば見分けられるのかですが、これは実際には専門家でないと難しいことがあります。
攻撃的な性質についてテストをする方法もありますが、ある程度の行動の傾向がわかるという程度で100%咬みつきはないと保証することはできません。

まずは、知らない犬には急激に近づかないということと、自分は犬のことを知っていると思い込まないことです。その上で、一番大切なことは、それぞれの飼い主が自分の飼い犬についてだけは、行動のパターンとその性質についてできるだけ理解する必要があります。

例えば、これらの表現の少ない犬が行う他の行動パターンは、じっと立っていて動かないでいるという特徴があります。犬は逃げる体勢に入るときに後ろに下がったり、飛びのいたり、もしくは相手を遠ざけるために前進したり、前傾になろうとします。しかし攻撃態勢の準備のないこれらの犬たちは、ほとんどまっすぐに脚を伸ばしたまま立ち尽くしています。その場を動かないことが、これらの犬たちのテリトリーの主張でもあります。

犬によってはテリトリーを主張するために動きを伴うことがあります。しかし、これらのわかりにくい犬たちは、立ち尽くしているかもしくはくるりと回る、もしくは8の字を描くように回ります。口元は閉じていて口にも動きがありません。

どちらかというと雑種よりも純血種の大型犬、特に防衛犬として使用されていたような犬たちの中にこれらの行動パターンをもつ犬がいます。純血種は使役の目的や、外見の好みを人の希望にあわせて人為的に繁殖を続けられている犬たちです。これらの人の目的が達成されれば、人に対して咬みつき事故を防止しにくい行動のパターンであっても、これらの犬は人為的繁殖によってつくられてしまいます。管理の行き届いた専門家によって飼育を受けているときには問題のない行動も、犬を飼ったこともない人を含めた一般の方が家庭犬として飼うとき、不安定な環境によって、お互いを傷つける咬みつきの事故にいたるケースもあるのです。

雑種犬も同じように、人のそばで暮らすことによって、繁殖については人のゆるい淘汰を受けてきています。好ましくない行動パターンをもつ犬は、長い時間をかけて人によって淘汰されてききたという歴史があります。例えば、人にいきなり咬みついてしまうような犬は、人里を追われて生きる術を失ってしまいます。人のそばでえさをもらいながら子を産むことができなくなります。唸ったり吠えたりする警告なしに咬みつくという行動は、人にとっては不利益なため、人と暮らす犬たちの性質の中からは自然と淘汰される方向に向かっていったのです。

最近は少し様子が異なるようです。これらの雑種と純血種の交配によって生まれた犬の中には、純血種としての行動パターンを残してしまうこともあります。純血種の繁殖はまだ始まってから100年くらいですが、強められた行動というのは簡単には消えない根強いものなのです。

犬が人に咬みつく事故を防止するために、テリトリーに関する咬みつき事故を回避する方法は三つだけです。

一つ、犬のテリトリー(領域)を侵さないように行動する習慣を身につけてください。

二つ、“唸る”と“吠える”をしない犬には不用意に近づかないでください。

この二つは飼い主以外の人も実践して欲しいことです。

飼い主に対してはもうひとつあります。

飼い主は犬のテリトリー(領域)に最も近づかなければいけない人です。
どんな状況下であっても、飼い主が犬のテリトリーに近づくことをある程度寛容に受け入れ安心できる状態でなければ、犬に対する医療行為にも支障が生じます。最後はやはり犬と人の関係性について知り考える必要があるでしょう。

過去に攻撃的行動をしたことがあり、飼い主自身がその犬に怖くて近づくことがでいないなら、他の人に飼ってもらうこともできません。犬を他人に譲るときには、攻撃性行動について把握できないような状態では不可能です。知識が十分にあり犬への理解が深い方が見つかればそれは本当にラッキーなことですが、逆に今までに何ども犬を飼ったことがあるという方でも、その犬にあった安定した環境を作ることができなければ、犬のストレス値は上がり、犬の攻撃性を引き出してしまいます。これは犬にとって最も苦しいことです。

もし、あなたの犬がまだ若い犬でとびつきや甘噛みのある段階であれば、まだ十分に対応が可能です。犬の安心できる環境と関係をつくっていってください。

一番危険なことは、犬のことをかわいいと思ってはいるから犬を手放すことはできないけど、犬の問題に対応することもせずに、いつかきっと良くなるという問題を先延ばしする姿勢で、犬の気になる行動を放置しておくことです。

どの犬にも人に愛され心から信頼できる関係をつくる機会を提供したいものです。

咬みつきは犬のもつ社会的行動のひとつです。
ただそれを乱暴に使うことなく犬が安心して生きていくことのできる環境を、わたしたちで作っていきましょう。

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