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犬の咬傷(咬みつき)事故の危険性を回避するために:犬が咬みつくなどの攻撃性を発する状況とは

昨日のブログ記事に引き続き犬の重篤な咬傷事故を防ぐために考えます。

犬の咬傷(咬みつき)事故の危険性を回避するために:犬の殺傷事故を科学的に考える昨日のブログにも記述したとおり、危険犬種を特定させることだけが犬の重篤な咬傷事故を回避する方法ではありません。しかし、特定の犬種に対する理解を深めることは、この問題の本質を捉えるために必要なことです。

まず、犬の咬みつきという行動を行動学的な側面から説明します。

咬みつきという行動は、犬の攻撃性行動の中に入ります。
咬みつくという行動は、犬の攻撃性を表現する行動のひとつなのです。

攻撃性行動は社会的なすべての動物に見られる行動です。犬にも人にも攻撃性はあります。
秋田犬にもチワワにも雑種犬にも攻撃性はあります。わたしにもあなたにも攻撃性はあるのです。
こういう風に書いてしまうと「私には攻撃性はありません!」と激怒される方もいらっしゃるかもしれませんが、それは攻撃性という言葉の理解の行き違いがあるからです。

攻撃性行動は社会的行動であり、動物が安心して生きていくために必要な機能性の高い行動です。たとえば、部屋の中に入ってきたハエをハエたたきで殺したことがあるのなら、それは攻撃性行動のひとつです。攻撃性行動とはまず自分の身を守るために身につけた安全を確保するためになくてはならない行動なのです。

誰かが刃物をもって襲ってきたときにまず逃げるという手段をとることができれば幸いですが、逃げることができなければ、自分も対応する道具を持って戦うしかありません。もしくは、相手が攻撃に転じる可能性があると判断をすれば、そっちがやるならこっちもやるわよと挑発を受けてたつ姿勢を見せておいた方が衝突を避ける手段にもなります。

攻撃性は動物が内に持っていること自体は正常なことです。
大切なのはそれをどのように使うのかということです。
どのように使うのかということを以下の2点に分けます。

1 どのような時(状況)において使うのか

2 どのような方法(表現)を用いるのか


ひとつずつ分析していきましょう。

1 攻撃性をどのような時(状況)において使うのか
攻撃性を必要とされる状況は、シンプルに考えると次のような状況です。
・自分が攻撃されると判断したとき
・自分のテリトリー(領域)を侵されたと判断したとき

細かく考えていくともっとたくさんありますが、少し単純に想定していきます。
ここでは、わかりやすく「判断」と書きますが、犬の判断は瞬時に行われるもので、考えた結果ということではありません。
まず、状況を整理してみましょう。

自分が攻撃されると判断したときとは、自分が傷つけられるかもしれない状況に至って逃げられなければ防御もしくは攻撃をする必要があります。この状況は、自分が生活の場から離れているときのも発揮されます。
たとえば、ただ道を歩いていたときに前方から傘を振り上げた人を見つければ、自分も何かをもって応戦するしかありません。
犬の場合にも、リードをつけられ逃げられない状態で散歩をしているときに、リードを放された犬が自分の方に突撃してくればそれは自分に対する攻撃として受け取り咬みつくしかないでしょう。
余裕があれば事前に吠えて、自分の領域に近づくなという警告を促せる可能性もありますが、犬が至近距離に入っていれば攻撃態勢になるのに時間が必要なため、攻撃を受けこちらからも攻撃を返す姿勢になる選択をすることになります。

この攻撃を受けるという防衛的攻撃は、逃げることのできないつなぎ犬のテリトリー内でも発生します。どのような長さでつながれていたとしても、つながれていることは逃げることができないという状況下であることを犬は知っています。
そのため、ある程度の長さでつながれている犬でも、自分を犯されると判断した場合には瞬時に攻撃性を発生してしまいます。
犬に対して相手が攻撃的な行動を先に示せば、その状況の説明はわかりやすいものです。犬に対して人が棒を振り上げる、何かを投げ付ける、蹴る、手を上げるなどの行動は、犬からは攻撃的行動と受け取られる行動です。他にも他の犬が飛びついてくる、体当たりしてくる、体重を自分に乗せようとする行動は同じように攻撃的行動として受け取ります。

状況の説明が理解しにくいのは、犬に対して攻撃性行動をしていない人に対して攻撃をしてくることです。
自分が攻撃をしていないのに相手が攻撃をしてくるとすれば、病気でなければ自分が相手のテリトリー(領域)を侵した場合でしょう。人の場合には心理的領域というのがあるため複雑ですが、犬の場合には物理的領域としてみることができ、状況把握はあまり難しくありません。

人から見て理解しがたい犬の攻撃が起こるのは、ふたつめの「自分のテリトリー(領域)を侵されたと判断したとき」です。
この問題は犬の咬みつき行動の原因なる可能性が非常に高いのですが、テリトリーに関する人の理解はなかなかすすみません。それは犬という動物のテリトリーのルールが存在していることを人が理解しにくいというだけではなく、人が犬を飼うという関係性の中で人の方が曖昧に処理してしまっている部分があるからです。

また極端な例を出すなら、野生動物にもテリトリーがありその領域を侵されたと判断され逃げる選択ができない場合には野生動物も攻撃性行動を行うでしょう。動物園の動物には幾重にもなる柵や溝によって見学者との距離がとれるように安全整備をしています。
ところが人が飼う犬は、飼い主の家や庭などの領域の中に入って生活をしています。その人と犬の間には領域争いなどないのだという価値観の方もいるでしょう。だとしたらこれだけ多くの犬たちが毎日吠えているという事実も存在しないのではないでしょうか。

そもそも犬が飼い主に領域を侵されると感じられるような関係を持ってしまったことは、犬の飼育者としては不十分です。お互いの領域を守りながら、共有のルールを適応できる場、犬を尊重すべきこと、お互いの領域が重なることを受け入れる関係性、そして逆にお互いの領域を侵さないという配慮。
これらの領域に関する犬と飼い主のルールは、犬と暮らす上で絶対に守ってほしいことなのです。

それは犬の方が咬みついてもたいした傷をおさせる危険性のない小型犬であっても、人と犬がより良い関係性を目指すのであれば、ぜひ実現してほしいことです。

明日は、犬の攻撃性行動について「どのような方法(表現)を用いるのか」に続きます。

dav