犬の吠えは苦情のナンバーワンにあがっています。自宅にいるときには静かにリラックスして過ごしたいと思っているところに、近所や同じマンションの部屋から犬のワンワンという声が聞こえてくるとイライラしてしまします。苦情につながりご近所トラブルにも発展しかねません。
●犬がインターホンに吠えることは問題である理由
室内で犬が吠えることで近隣からも苦情が多く、また飼い主さんも困っているのが「インターホンがなったら犬が吠えること」です。インターホンがなると吠えるだけでなく、部屋の中を走り回ったりジャンプしたりして大騒ぎになることがあります。
問題解決のはなしをする前に、整理しておきたいことがあります。それは、犬が吠えるという事実は犬として通常の行動だということです。そして同時に、過剰に吠えて興奮するという事実は、犬がとても高いストレスを抱えている状態を表しているのです。インターホンに吠えるだけでなく、ドアの方向に向かってダッシュしていく犬、ドアの前でクルクルと回る犬、飼い主のズボンに咬みつく犬、ドアの前でジャンプする犬、ドアにとびつく犬、ドアの前やサークルの中でジャンプする犬、など吠える以外の行動もさまざまですが、どれもとても興奮している状態です。
犬はとても興奮しやすい動物だと誤解されているのでこれらの行動を放置されているのでしょうが、実際には犬はとても静かな動物です。犬が活発に動くことができるということと、犬がいつも興奮しているというのは全く違うことなのです。犬がこんなに興奮することを毎日くり返してしまったら、脳の病気や破損につながることもあります。
●犬がインターホンに吠えるのはなぜか
犬がインターホンに吠えるのはなぜだと思いますか?これはほとんどの方が答えられます。そうです。インターホンという音が、来客が来るということを予測させるからです。この連想はひとつの学習です。学習をしない犬はいつまでもインターホンと来客を結びつけることができませんが、犬の学習能力は高いので、すぐにこのことを学習します。
来客に対する犬の吠えは、警戒吠えです。「だれかくるぞ!!!!」という吠えですね。犬は人と同じようにテリトリーを持ちそれを守る動物です。インターホンシステムも人が自分のテリトリーを守るために開発された道具です。警戒吠えをして誰か来るよ!と犬が単純に吠えることは正常な行為であってこれを叱ることはできません。ところが、テリトリーに人が入ってくると分かっているのに飼い主が犬に対して何の指示もしなければ、犬の生活環境によってはますます犬を興奮させてしまいます。
現実的に、たくさんの犬たちが警戒態勢だけで収まりがつかなくなってしまっているようです。「警戒吠え+威嚇吠え」になったり、「警戒吠え+興奮吠え」になったり、もしくは「警戒吠え+甘えなき」になったりして、犬によってはとても複雑な吠え方をするようになっています。これらの吠えの中に、犬の飼育環境の難しさと犬と飼い主の関係を読み取ることができ、同時にこうした複雑な吠え方や、吠えながら興奮する姿を見るとき、犬は本当に大変なのだなと感じてしまいます。
●小さいころは吠えてなかったのになぜ吠えるようになったの?
犬には年齢によってインターホンには吠えない時期というのがあります。たとえば「うちの犬は生後5ヶ月まで全く吠えなかったのに急に吠えるようになったんです」というのは一般的なことです。犬の正常な成長の過程にあてはまっていて、どこもおかしいところはありませんが、飼い主さんの方は犬が急に性格が変わって吠えるようになったと勘違いされるようです。犬は急に吠えるようになったのではなくて、成長して吠えることができるようになったのです。
警戒吠えという吠えは、テリトリーを守るために出すコミュニケーションです。テリトリーを守る働きをする年齢に達しないとこれらの吠えは出ないのです。小型犬の方が体の成長が早いため早く警戒吠えが出ます。大型犬は体の成長に時間がかるため生後8ヶ月をすぎたくらいから警戒吠えをするようになります。
●中には全くインターホンに吠えない犬もいる
飼い主が特に犬を管理していなくても、インターホンに全く関心のない犬がたまにいます。これらの犬たちはテリトリーを守ることに関心がなく人の出入りにも関心を示しません。同時に自分に利益のない人にもあまり関心を示しません。関心を示さないということは、急に近づくとか愛想を振りまくなどのことがなく距離を保っていることができますので、お互いに危険性もなく犬も興奮することが少ないという利点もあります。別のケースでは、人に対して消極的な場合です。どちらかというと飼い主の後ろにすぐに隠れてしまったり、飼い主といっしょにいることだけが生活の中心になりがちな犬は、他者との関わりに対して消極的になる場合があります。これらの犬についてもインターホンに関心を示さなくなることがあります。
前者の飼い主や人と距離を保つ犬の場合は、テリトリーから離れてしまって別のテリトリーで生活することも苦にならないため、犬のリードを放したりすることについては注意が必要です。後者の飼い主に依存タイプの犬の場合は、飼い主がいないと不安を抱えやすいので管理をしっかりとしてください。これらのインターホンに無反応の犬については、個体の性質(個性)としてこの傾向があることもあるし、生活スタイルや飼い主の性格や飼い主との関係などの環境によって生じることもあります。インターホンに吠えないのはうらやましいと思われるかもしれませんが、吠えないのではなく吠えられない犬もいますので一概にそれがいいとはいえません。飼い主が代わると犬の行動はビックリするほど激変してしまうので、犬と人の関係性というのはつくづく深いものだなと感じるのです。
さて、ここまで読まれて「インターホンに吠えたらどうすればいいの?」と思われた方のために、明日はちょっとだけインターホンダッシュ反応についてのヒントをお伝えしますのでお楽しみに。
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