グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬のマーキングの理由:犬は尿と便で縄張りを主張する動物

イヌ科動物は臭いの世界に生きています。
犬が尿や便をする場所は犬のテリトリーと関連しています。
自分の排泄物の臭いをつけることで、自分の縄張り(テリトリー)を主張する習性を持ちます。

犬はイヌから人に飼われる犬となった今でも、この排泄行動によってなわばりを主張したり、自己主張したりする習性が根強く残っています。

ところで「縄張り」とは古くから犬の行動を表す言葉として使われてきました。

縄張りを辞書で調べるとこうあります。
・縄を張って境界を決めること

犬たちの排泄による縄張りの決め方を見ていると、まさに「臭いの縄」をはって境界線を決めているように見えます。80年前くらいまで日本では紐につながれることもなくにふらふらと生活していたときに犬を見ていた人々が「犬が縄張りをつくっている」と感じて表現するようになったのは、まさに的確な表現だといえます。

英語ではテリトリーといい本来は鳥の行動学者が用いた言葉ですが、犬についてもこの表現が行動学的には一番多いようです。日本語に訳すときは縄張りになっていますね。

犬が排泄行動で主張をする行動はマーキングといいます。
犬が他の、どのような形でも臭い付けをする場合はマーキングといいます。
排泄行動をマーキングというと、イメージするのは印をつけるという感じで縄張りをつくるというのでは少し印象が違います。

縄張りという言葉をもっと明確にしてみましょう。
さすがに自分が人として縄張りを主張しているのかといわれると否定したくなります。縄張りという言葉に勢力的な感じがしてしまうからでしょう。人が守っているのは自分の所有物である家と庭の境界線の中であって、散歩で移動する公共の場に縄張りをつくったりはしません。
人にとっての縄張りとは、まだ十分に自分の家になっていない空間で生活をしたり、ビジネス上のオレの島的なものが縄張りとして主張されるというイメージです。


犬は散歩で移動する際に熱心にマーキングによって縄張りをつくっていく犬がいます。
全ての犬ではありません。中には散歩中に全く排泄をしない犬もいるし、公園でしか排泄をしないという犬もいます。

犬にとっては家や庭が生活のテリトリーです。食べたり、寝たり、隠れたりする住処ですから、移動のときにするマーキングは他の目的を持ちます。

最大の目的はメス犬を確保するためのマーキングです。
オスのこの行動は大変強いためマーキングの回数も多いのですが、去勢手術をすると屋外マーキングの回数は激減することが多いのでホルモンによる行動だといえます。

ところが去勢手術をしている犬もメス犬も屋外マーキングをします。
排尿の脚の上げ方になると、高いものは遠くまで臭いを飛ばせるため有利です。
小さな犬も片脚をバレリーナのように上げて排尿を撒き散らす技を披露しているのをみかけることもあり、その意欲には頭が下がります。
メス犬もいまや半分くらいの犬が脚をあげて排尿しています。

なんとか自分の臭いを残そうと屋外マーキングをしている犬たちの目的は何でしょうか。
これは犬が社会的な動物であるということの表現方法でもあります。

移動の際に排泄でマーキングをすれば、自分がそこを通行して一定の縄張りを持っていることを他の犬に知らせることになります。
犬の場合にはテリトリーは重なりやすくなっているので、他の犬の臭いも嗅ぐことになります。


それが自分よりも優位な犬であるのか、もしくは弱い犬であるのかは犬たちにはすぐにわかるようです。たとえ高さで主張したとしても、やはり弱い犬の臭いは弱いようです。実際に嗅げないのでなんともいえませんが、犬たちの排泄の順番や行動を観察すると、排泄物を直接嗅がなくてもお互いの力加減というのはわかっているように思えます。

力というとすぐにケンカするためかと思われますが、そうではありません。

すべての動物は同種での攻撃性が高いのです。
犬は人よりも犬に対して攻撃したり逃げたりして、社会的な緊張が高いのです。

逆に考えるとだからこそ、同種間の攻撃をいかに回避してうまく生きていくかという術を見につける必要もあります。犬と犬の移動中のテリトリーが重なっていれば、緊張も高くなります。
回避するためには相手の情報をまず知っておき、自己主張が強くトラブルになりそうな場合にはその犬のテリトリーを歩きたがらないこともあるかもしれません。
安定したボス的な犬が近所の中にいたら、その存在を認めることでその地域は安定した犬の規律を持つ地域になるかもしれません。

脚を上げてする排尿がすべて自己主張というわけではないのです。社会的に安定した関係をもつ犬でも、同じ場所に排泄をします。
少し違いますがわかりやすい例でいうと、子犬はテリトリーを離れるということがほとんどありませんが、もしそうなった場合にはグループの管理犬の犬の排尿の後にしか排尿をしません。これは群れ全体を守る犬のルールです。
同じ理由での脚上げ排尿をしていることもあります。
同じような排尿なのでわかりにくいですが、前後の行動や管理犬の行動をみているとその違いも少しわかります。

といっても、数頭の犬の上にきちんと立てるような犬はあまりいません。
地域に1頭いたらいい程度でしたがこれは理にかなっています。
実際地域に1頭いたら十分なのでしょうが、今はそれ以上に少なくなっています。

犬の排泄マーキングがとても不安定になっている理由は他にもあります。
犬と犬は自由に行動しておらず、関係をつくることをも相手を認めることも苦手です。
自由行動ができず拘束され続ける生活が、犬のマーキングを異様にしているようにも感じます。

縄張りマーキングを重要視する犬は、生活のスペースである室内や庭の中心部では排泄行動をしません。犬によって個体差があり、中には室内は庭の中央で排泄をする犬もいます。

さらにテリトリーをつくる作業がくずれてきているからでしょうが、まれに屋外マーキングをするのに、室内でもマーキング排泄をする犬もいます。
屋外でも室内でもマーキングをするとなると不安定な行動です。
排泄行動以外の犬の行動をチェックするとその行動の意味もわかってきます。

犬の排泄行動は社会性を表現する方法でもあるため個体差があるのです。
だからこそ、排泄行動を通して犬を知る機会を得ることもできるということなのですが…。

別の理由でもマーキングは複雑化しています。つまり飼い主との関係性がマーキング行動を高める理由になっています。
この場合は縄張りというよりも一点張りです。これについては明日お話します。

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