グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬猫の殺処分ゼロを真剣に考える

福岡市で開催される「動物福祉の視点から、犬猫の殺処分ゼロを考える」セミナーまで、残すところ一週間となりました。日本動物福祉協会の山口千津子先生を講師として迎え、この問題をみんなで真剣に考える機会を得たいという思いから企画したセミナーです。
セミナーは現在満席でキャンセル待ちとして受け付けている状態です。行政、業者、ボランティア、そして一般の方と、多くの方がこの問題を考えたいと思ってくださっているということを知り、心強くなりました。

ここ数日見た犬猫の殺処分問題に関する二つのニュースの一部をここでご紹介します。犬猫に関するマスメディアの報道の内容については疑問を感じることも多く、すべてをうのみにすることはできません。その中で、ひとつでも何かを知ったり調べたいと思うきっかけになるのであれば、そうした情報は有効に活用していくべきだとも思います。この二つのニュースは今までの殺処分の取扱いとは少し異なる内容を発信しているものでした。

ひとつは1月18日にTBSニュースで映像配信された神奈川県の猫の保護活動に関する報道です。題名は<犬・猫「殺処分ゼロ」裏側で…ボランティア団体「対応は限界」>とあります。

ニュースの要旨は以下のとおりです。
神奈川県の動物保護センターで猫の譲渡会が行われている。猫を引き取る方へのインタビューもあり、ここまでは今までの動物を保護することの情報提供のように思われます。ニュースの主題はここからです。

同施設にある殺処分機はしばらく使われていない。なぜなら、神奈川県は犬は3年、猫は2年、殺処分を行っていない。神奈川県知事は、このまま殺処分ゼロを継続するといういわゆる「殺処分ゼロ宣言」を行っている。

その実態について譲渡会を主催するうちのひとつの猫のボランティア団体代表がコメント、「預かりは200匹にのぼりもう限界かな?」という。
預かりには多くの資金がかかり、特に病気の猫の場合には多額の医療費も必要。代表のコメントでは「殺処分がいつ始まるかと…」という不安の言葉が乗せられています。
実際のニュースはこちらです。
TBSニュース「犬・猫の殺処分ゼロの裏側で…」

このニュースの受け取り方は様々です。
事実として言えるのは、殺処分ゼロを宣言する県行政が多数あり、実際に犬猫の殺処分ゼロを実現している中で、犬猫の保護ボランティアに出される頭数が異常な数になっていることです。行政は数字の結果だけを残し、それ以外に必要なことを怠っているのではないかと思われる事態です。そしてその「殺処分ゼロ」という数字の達成だけを歓迎しているのは誰なのでしょうか。

犬と猫を比較すると、動物の習性の違いにより猫の方が多頭飼育にいたりやすいため、殺処分ゼロをかかげる行政がボランティアに譲渡する猫の数を調整しない限り、ボランティア団体の猫の飼育数は増えるばかりです。またその先に、一般の方の猫の多頭飼育が増えているという現実もあります。猫の多頭飼育が問題かどうかは、「動物の福祉」についてひとりひとりが考え、表面に流されない意見を持っていただきたいのです。

ふたつ目は1月19日にヤフーニュースで配信されたサイト発信の記事の中にありました。この記事の一文を抜粋します。

ココから

●「殺処分ゼロ」追い求めるだけでは問題は解決しない

ペットを取り巻く問題として、たびたびクローズアップされてきた殺処分の問題だが、以前と比べその数は大きく減少している。環境省の調査結果では、1974年に約120万匹だった犬猫の殺処分の数は、2015年には、約8万3000匹まで減少している。

これに加えて、2013年に改正動物愛護法が施行され、自治体は、ペットショップなどの「犬猫等販売業者」からの引き取りを拒むことができるようになった。安易に自治体に持ち込むことを防ぎ、殺処分の数を減らす狙いがあった。その結果、「殺処分ゼロ」を達成する自治体も出てきた。

ところが、行政がペット業者からの引き取りを拒むようになった結果、売れ残ったペットを有料で引き取り劣悪な環境で飼育する「引き取り屋」と呼ばれるビジネスが活発化し、問題視されるようになった。

ココまで

「引き取り屋」などという名前がつけられているのが事実かどうかはわかりませんが、終生飼育が原則の犬・猫の飼育の背景で、さまざまな事情で犬猫を飼育することができなくなった飼い主から動物を有料で引き取り、終生飼いますというビジネスが存在していることは事実です。老犬の世話ができなくなり老犬ホームに犬を預けてしまうことも、見方や考え方によっては、「飼えなくなったから業者が引き取って終生飼育する」という、上記と似たような形態になる可能性もあります。

すべての引き取り業者がずさんな飼い方をしているわけではなく、中にはほんの数頭を愛情をこめて最後まで飼ってくださるような家庭的な預かりを実現されているところも存在するのかもしれません。実際には、具体的にそのような理想的な形をビジネスという形では見たことがないので、あくまでそうあってほしいという気持ちでいるところです。家に飼われるということと、施設に収容されるということは、まったく別のものとしてとらえる必要があります。外側は一軒家のようにしていても、室内にはケイジやクレートがならび、その中に収容されるのであれば、それは家庭での飼育とはいえません。

犬と猫では、動物としての習性もことなり、人が飼うようになった歴史も、人が管理するようになった過程もすべてに違いがあります。そのため、この問題をまとめて扱うことは不可能ですが、唯一、動物の福祉という立場にたって考えることは、犬についても猫についてもできることです。犬という動物の立場にたって考える、猫という動物の立場にたってかんがえる。動物福祉という考え方も、それぞれの環境は立場に応じて考えていかなければいきつく道はありません。

飼い主として犬を飼っている方は、犬の立場にたって考えることが必要です。
甘やかしや人側に立ちすぎた可愛がりや愛情の注ぎ方が、犬という動物を犬ではなくものにしてしまうこともあります。犬という動物として成長する機会を奪われることが、動物が生きていく上でどのくらい苦しいことなのかを考えることもできます。
こうしたことも動物福祉という考え方です。動物福祉は数ではありません。雑種の日本の野良犬らしい犬を飼育できる方が少なくなってきました。環境が整わない、接し方がむずかしい、愛玩犬にむかないと理由はさまざまでしょうが、日本の土壌が育てた日本雑種の犬たちはそのうち絶滅危惧種になるでしょう。そして、珍種として動物園に展示されるようになるのではないかと思っています。オオカミの最後の数頭が生き残っていれば、同じ運命をたどったことでしょう。

殺処分ゼロの問題は、数の問題ではありません。殺されるのがかわいそうなら、魂を抜かれたまま生きることはもっとかわいそうなことです。

わたしたちのまわりには、犬猫の問題ばかりでなく、考えなければいけない問題は山のようにあります。それぞれに関心をもって自ら考えることに参加したいと思います。そして、特に自分が得意として、真実をみることができる世界については、そのことについて話す機会も持ち続けたいと思います。

犬猫の殺処分ゼロの問題。犬の動物福祉の問題をいっしょに学び、いっしょに考えましょう。

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